回帰せし夕日色の世界
下界の様子を映し出した白い世界。
ロノウェは悶え苦しみながら何かを天に向かって叫んでいた。そんな親友をヴラドは殴り飛ばす。
「ロノウェ、いい加減に目を覚ませッ! お前はそんな忌々しい存在に負けるような奴か!? 好きだったんだろ、ヨムカを! だったら……だったら帰ってこい!」
白目を剥き泡を吐くロノウェに馬乗りし、両の肩を激しく揺さぶる。口の端からヒュウヒュウという音が漏れるだけで、ロノウェ本人が言葉を話すことは無い。それでも諦めないヴラドは、平手をその頬に打ち付ける。
「消えちまったんだぞ、ヨムカがッ!! お前は、お前はそれでいいのか? 失うのか、大切な奴を二度も!」
「あ、あ……アァ、よ……む、か……さん」
「そうだ! ヨムカだ。お前の希望だったんだろ!? その希望を手放そうとするんじゃねぇよ! お前は何のために世界を変えたかったんだ? ヨムカや赤色を持つ奴らが過ごしやすい世界にしたかったからだろう? その努力を無駄にするのか?」
声を張ってロノウェの自我に訴えかける。ヴラドもこれ以上、大切な人を失いたくはないという必死な努力だった。フリシアとクラッドは宿場町で待たせてある。彼らにヨムカを連れ戻すと約束したが、ヨムカはもういない。ならば、ロノウェでも連れ帰ってやる。という最後の意地だ。
「フィルナ……ヨムカ、さん。私は……私は、なんてことをッ!」
「ロノウェ、立てるか?」
そっと涙を流したロノウェの瞳――狂人的な色を滲ませてはいない。普段の優しい彼の顔に戻っていた。
自分の過ちで目の前にいる親友の父親を手にかけた。数千数万では足りない命を自分の抱いた憎しみと憎悪の炎で焼き尽くした。その事実がロノウェの感情を押しつぶそうと伸し掛かっている。
「大丈夫だ、生きていけ。俺たちと、な。近くの宿場町にフリシアとクラッドを残してある。先に行って、アイツ等に顔をみせてやれ」
「ヴラド……あなたは」
「俺は迷子のヨムカを探してくる。あいつの居場所は俺たちなんだからな。腹すかせて帰ってくるアイツのためにも、何か美味いものを作って待っててくれ、な?」
そう言って、無理やりロノウェを立たせる。
酷い顔だった――先程まで怒りと憎悪に塗れた何者かの意思は見られないが、疲れ切ったロノウェに一言。
「山で暮らすからな。毎日を悠々自適に過ごすんだ。木の実拾って猪狩って、そりゃもう時間の流れも忘れるくらい楽しい時間が待ってるんだ。人里から離れた場所なら、ヨムカも苦悩することもねぇだろ」
「ですが、私は……ヨムカさんや、皆さんに……」
「んなもん知るかよ。俺は神様じゃねぇ、どうするかは自分で考えろよ。んじゃあ、こう言ってやる。隊長命令だ、お前は俺たちと一緒に山で過ごせ。そして、身を粉にして飯の確保だ。これで、いいか?」
「……ふふ、本当にヴラド、あなたって人は。わかりました、自分の負った過ちの償い方はこれから探っていきます」
この光景を何処とも知れない場所から眺めていたヨムカはホッとした。ロノウェに宿った悪魔の意思はもうない。これから前へ進んでいこうとするヴラドとロノウェにヨムカはその映像からそっと視線を逸らした。
「蛍、私は別にやり直さなくてもいいかなって思うんだよね。だって、みんなが築いた人生だから、私が手を加えちゃいけないよ」
「あ、ごめん。もう無理だよ。世界の改変が始まってる」
淡々とした様子の少年がコクリと頷く。
「――え?」
ヨムカの意識は遠く引き伸ばされ、近似記憶からどんどんと抜け落ちていった。
こんばんは、上月です(*'▽')
最終話です、ハイ。
えぇっと……回帰しちゃいました?(;´∀`)
つまり――回帰後の話もあるんです!! えぇ、書いてます。ですが、まだ数話しか書けてません。
ハイファンタジーとローファンタジーで『魔術』の在り方を分けていたのですが、今後はローファンタジーでの『魔術』で統一していきます。
正直、ちょっと書きづらいですね。ハイファンタジーでは魔法のように扱っていましたが、今後は世界真理を探究するための理論科学?として書いていくのでちょっと大変ですね。
ですが、必ず書ききって見せますので、是非ともその時は一読してやってくださいませ!!