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11話 特訓と昇格

 次の日から本格的な特訓が始まった。ちなみにミイの服装は赤いジャージの姿だ。先生をイメージしているらしい。(どっかで見たような……)


 1日目は広大な草原での魔法の基礎教育と、効率的な薬草採取。

 2日目はダンジョンに潜り、剣術と魔法の実践訓練、ついでに貴重な素材集め。

 3日目は完全休養にあて、ギルドへ大量のポーションや魔石を納品する。


 このサイクルを何度も繰り返し、気がつけばダンジョンを10層まで到達していた。剣術、体術は他の探索者の戦い方を参考にして落とし込む。魔法はミイに基本から教えて貰い、火、雷、氷の主要な三原則の属性魔法をスムーズに使える様になった。


 今日はいよいよ実戦形式の「魔法剣」の特訓である。場所は周囲に誰もいない、見晴らしの良いだだっ広い草原だった。


「トーヤさん、先日の戦闘で行った魔法剣の起動ですが、わざわざ一度目の前に魔法陣を大きく展開し、そこに剣を差し込むやり方では動作に時間がかかりすぎてしまいます。それでは、一瞬の隙が命取りになる実戦では到底通用しません」


 今日ほミイはいつになく真剣な教師の顔だ。


「なので、これからは剣を右手にしっかりと持ったまま、左手の手のひらに直接魔法陣を展開し、そこに剣身を添えることで、一瞬で魔力を纏わせる訓練をしましょう」


「わかった、やってみる」


 まずは左手のひらに赤い火の魔法陣を瞬時に展開する。その中心へ向けて、右手に握った剣の白刃をスッと添え、魔力を注ぎ込んだ。 


「【業炎】(ごうえん)!」


 ――ボワッ!! 凄まじい勢いで燃え盛る炎が、一瞬にして剣の刀身全体を激しく包み込む。


「魔法剣、業火(ごうか)!」


 そのまま、踏み込み巨大な岩を斬りつける。岩が真っ二つに裂け、切り口から噴き出した高熱の炎が瞬く間に岩全体を激しく包み込んで黒煙を上げていく。


「よし、どうだいミイ?」


「上出来です。忘れないうちに氷と雷もやってみましょう」


「【氷刃(ひょうじん)】――魔法剣、氷河(ひょうが)」


「【天雷(てんらい)】――魔法剣、雷(いかずち)」


「では、繰り返し行いましょう。体に染み込ませ、短時間で発動出来る様にしましょう」


 口調はおっとりして可憐な笑顔だが、特訓はハードだ。


「わ、わかった」


 何百回と繰り返した……


「はぁ、はぁ」


「休憩しましょう(こんな短期間でここまで出来るなんて……)。はい、お水です。どうぞ」


 箱ぞうから水筒を出し水を注いでくれる。(ちなみにハコぞうは家から出る時は背中に背負って移動する。誰もいない所で自分で歩いて貰う)


「ありがとう」


「ここまで出来れば合格です。経験を積めば直ぐにでもA級クラスになれますよ」


「本当!実感がわかないけど。ミイがそういうなら自信が持てるよ」


「今日はもう十分に頑張りましたし、日も傾いてきましたから引き上げましょうか。しっかりとした休養も大事な訓練の一つですからね」


 ハコぞうを背負おとした時、また丘の上の廃城が見えた。


「どうしました?」


「あの丘の上の廃城、大きくて立派な城なのに廃墟になって何かあったのかなと思って」


「………そうですね………」ミイは突然言葉を詰まらせ、スッと視線を足元へと落として悲しげに俯いてしまった。


 ミイは間違いなくあの城の秘密や過去について何かを知っている。だが、彼女のあまりにも寂しそうな、切なげな表情を見てしまうと、これ以上踏み込んで詮索するのはやめておこうと俺はそっと口をつぐんだ。


「よし、帰ろう! 帰って美味しいご飯食べよう」


「……はい」


 屋敷に着くと玄関に手紙が置いあった。


「なんだ?、ギルドのメリッサさんからだ。なになに、ギルドに至急お越しください?」


 ミイが困惑して「至急って!まさか、一太郎とハコぞうがバレたのでしょうか?」


「それはまずい!。直ぐにギルドに行こう」


 ハコぞうを工房に置き、屋敷に鍵を閉め、急いでギルドに向かった。


 ◇


 息を切らしながらギルドの扉を開けると、受付のカウンターにいたメリッサさんがすぐにこちらに気づいてパッと手を振ってくれた。


「クロフトさん、お待ちしてました。こちらにどうぞ」


「こんにちは、メリッサさん、手紙で至急と書かれてましたけどなんかトラブルでも有りました?」


 メリッサさんは満面の笑みを浮かべているが、こたらは不安で一杯だ。心臓がバクバクしている。


「ふふっ、そんなに硬くならなくても大丈夫ですよ! おめでとうございます、クロフトさん! あなたのこれまでの数々の功績が認められて、なんと一気に『D級』への昇格が決まりました! なんと異例の『2段階の飛び級』ですよ!」


「えっ、昇格?」


「はい、昇格ですよ。驚いた顔してどうかしましたか?」メリッサさんは不思議そうに首を傾げながら、カウンター越しにじっとこちらを覗き込んできた。


「い、いや、何でもないです! 驚きすぎて頭が真っ白になっただけで……ありがとうございます!(よかったぁ……! 一太郎たちの秘密がバレたわけじゃなくて、本当に心臓が止まるかと思った……!)」


「それじゃあ、古いカードを回収しますので、代わりに新しいギルドカードを差し替えます。こちらの申請書にサインをお願いしますね」


「わかりました。でも、飛び級は皆さん当たり前ですか?」


「まさか、そんなわけないじゃないですか! クロフトさんが短期間で作り上げた『高級ポーション』の流通が、ギルドの医療部門にどれだけ大きな貢献をしたか……その功績が評価されたみたいですよ。はい、こちらが新しいクロフトさんのギルドカードです」


「ありがとうございます」


 D級の赤い色のギルドカードを貰った。


「そうそう、クロフトさんはクランの創設者ですので、クランも自動的にD級になりました」


「そうなんですね。ありがとうございます」


 ギルドから出るとミイが待っていてくれた。不安そうな顔をしている。


「ミイ、昇格だって、D級になったよ」


「えっ、良かったです!おめでとうございます」

ミイの顔がパァッと満面の笑みで明るくなり、思わず嬉しそうに飛び跳ねる。


「はは、一太郎たちの秘密じゃなくて本当に安心したよ……!」


「今日はお祝いですね」


「そうだね。レストランでお祝いだ!」


読んでいただきありがとうございました!


 次回投稿 11/8 7時 予定


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