前編
はじまりはある夏の晩。
婚約者である彼デザイオンが学園時代の同級生だという金髪女性アリラと路地裏でいちゃついているところを目撃してしまった。
それから私は彼の浮気の証拠を集め始めた。
夏の終わり頃、デザイオンとアリラはこっそり二人きりの旅行を楽しんだ。
一泊二日の旅。それから帰ってきた日、デザイオンは非常にご機嫌で、何だかとても気味が悪かった。日頃は冷たく接してきていた私に対してもその日だけは少し優しくて。それが余計に不気味さを掻き立てていた。
秋の匂いが漂い出す頃、私の同性の友人から「あの二人、絶対恋人みたいになってるよ」との報告があった。
何でも、友人は、彼らが港町で密着して海を眺めているところを目撃したらしい。手を繋ぐ、どころか、腕を絡め合っていて。ロマンチックな状況で良い雰囲気になっていたこともあったのかもしれないけれど、非常に距離が近かったらしい。
そんな彼らの姿を友人は撮影魔法で写真にしてきてくれていたのでありがたかった。
その時がいつ来るかは分からないけれど、証拠の一つとして使えそうだ。
本格的に秋になり始めた頃、運命の日は突然訪れる。
友人と街を歩いていたところ、前からデザイオンとアリラが腕を組みながら歩いてきて――それによって本格的にその部分へ触れることとなった。
「デザイオンさんが浮気なさっていることは、前から知っていました」
「違う……勘違いだ、お前は間違っている……」
「証拠は多数あります」
「今日はたまたまアリラと出掛けていただけだ……それも、仕事に関係する用事で、だ。なのに……浮気などと言うのか」
デザイオンはすぐには浮気を認めなかった。
「そーよ! アタシたち、なーんにも悪いことしてないんだからっ。ちょっと出掛けてただけで浮気だなんだと騒ぎ出すなんて! おかしいわ! アンタ、モテない女でしょ? だからそんなこと言うんでしょ? 美男美女なアタシたちがお似合いだから嫉妬してるだけじゃないの!」
アリラもやたらと攻撃的で反省している様子はなかった。
「分かりました、では、これまで集めてきた証拠を出します」
もはや遠慮は要らない。
なぜなら彼らは少しも反省していないから。
悪いことをして、謝りもせず、逆にこちらが悪いかのような言葉を発してくる――そんな人たちに対して気を遣う必要なんてありはしない。
「写真、音声、記録、色々ありますよ」
一部を見せてやれば。
「なっ……なぜこんなものを」
デザイオンは動揺し青ざめていたが。
「なーによ、こんなの、どうせまともな証拠じゃないでしょ!」
対照的にアリラは余裕の表情。
「これまでだって仲良くしてた異性はいたわよ。けど揉め事になんてならなかったし。一瞬はいちゃもんつけられたって、なんだかんだでなかったことになったもの。アンタ騒ぎ過ぎ! ちっさいことで怒ってるとちーっさい人間だって思われるけどいいの? どこまでもダッサい女ね!」
彼女は平気で毒を吐き続ける。
「デザイオンさんとの婚約は破棄とします」
「なっ……ま、待て! それはおかしい! 勝手過ぎる!」
「婚約者のいる身でたびたび異性といちゃついている方が勝手過ぎると思いますけど」
「ぐ……」
「婚約者がいるにもかかわらず他の女性といちゃつくなんて。しかも何度も。……そんなの身勝手の極みですよね」
「だ、だが、待ってくれ。婚約が破棄となればそちらだって困るだろう。お前だって恥ずかしい思いをすることになるはずだ」




