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異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第24話 マルカール王国情報部本部②

 しかし今、初めて本物の恐怖が、胃の奥から這い上がってきた。

 ――犯人はアマルソフィアだと思っていた。アマルソフィアが、聖女を拉致した。嫉妬に狂った元婚約者が、聖女を国外追放の際伴ったと。


 だからこそ、第一王子殿下は「アマルソフィアを捕らえ、聖女を連れ戻せ」と命じたのだ。


 だが現実は、真逆だった。聖女アリシア自身が、自らの意志でアマルソフィアを守り、近づく者すべてを「雷の牢獄」で永遠に拷問すると言い放った。


 情報部長は、喉の奥で掠れた笑い声を漏らした。

 笑うしかなかった。

「……は、はは……聖女が……自ら、アマルソフィアの番犬になったというのか……?しかも、その番犬が、我々の仲間を玩具のように壊して……帰してきた……?」


 部下の一人が、震える声で言った。

「部長……これは……殿下に、どう報告すれば……。」

 情報部長はゆっくりと深く椅子に座りなおした。


 指で額を押さえ、目を閉じる。瞼の裏に、アリシアの笑顔が浮かんだ。あの柔らかい、慈愛に満ちた聖女の笑顔。

 しかし今、彼が見たのは、その笑顔の奥底に潜む、底知れぬ闇だった。


 いつからそんなにもアマルソフィアを愛していたのだろうか。彼女にいじめられたと殿下に訴えて、アマルソフィアを叱責させていたのは、単にアマルソフィアの気を引く為だったのだろうか。


 アマルソフィアが聖女アリシアを操っていただけのほうが、どれだけマシかわからなかった。


 情報部長の部下たちがそうなように、操られた人間は、あんなにはっきりと話すことが不可能だ。

 あれは間違いなく、聖女アリシア自身の意思なのだ。


「……殿下には、こう伝えろ。『聖女アリシアは、アマルソフィアと共謀している可能性が極めて高い。……いや、共謀などという生易しいものではない。聖女は、自らアマルソフィアの盾となり、牙となった。我々が近づけば、容赦なく殺すつもりだ。』と。」


 部屋に、重い沈黙が落ちた。 誰もが、同じことを考えていた。

 ――これまで、聖女は被害者だと信じていた。

 ――これまで、アマルソフィアこそが全ての元凶だと信じていた。


 だが真実は、もっと残酷で、もっと狂っていた。聖女アリシアは「世界そのもの」を二人だけのものにしようとしており、すでにその為の力を手に入れていた。情報部長は震える手で報告書をまとめながら、心の中で静かに呟いた。


「……殿下……これは、もう私情の問題ではおさまらない。これは……国家の危機だ。」

 地下の冷たい空気の中で、二人の操り人形は、まるで満足げに楽し気に、ゆっくりと首を傾げては、ぐるぐると頭をまわしていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「聖女アリシアが……自ら、アマルソフィアを守っている……?」

 宰相の息子であるルキウスが、資料を握りしめたまま呟いた。


「しかも……その守り方が、異常すぎる。聖女ともあろうものが、拷問まがいのことをして、我が国の兵士を苦しめるなどありえない……。」

 騎士団の息子、ホークが驚愕し、口元を手で覆う。


「まさか、アリシアさまは、魔族に操られているのか……!?」

 王宮筆頭魔法使い、アインがそう叫んだ。

「──いや。」


 第一王子ルークが、拳を強く握りしめた。

「アマルソフィアが聖女アリシアを操っているんだ。あいつは元々魔物を操る力を持っていた。聖女の力を奪い、利用しているに違いない!」


 宰相が静かに眼鏡を押し上げた。

「殿下。現実を見てください。情報部隊がこの状態で帰還したということは、聖女アリシア本人が意思を持って行動している可能性が極めて高い。操られた人間が更に他人を操ることは不可能です。」


 その言葉にすぐに言い返せる人間はいなかった。部屋に重い沈黙が落ちた。

「しかも、彼女はすでに賢者という強力な職に就いている。聖女の回復力と賢者の攻撃力を併せ持てば……我々が近づくことは、文字通り自殺行為です。」


 やがて、騎士団長の息子であるホークが、低く唸った。

「……ならば、やり方は一つだ。聖女を強引にでも奪還する。あるいは……アマルソフィアを始末すれば、聖女は元に戻るかもしれない。」


「お前は私の言葉を聞いていたのか?聖女アリシアは自らの意思を持って……。」

 宰相の言葉を遮るように、王宮筆頭魔法使いのアインが、杖をドンッと強く床に突いた。


「アマルソフィアを殺せば、聖女の洗脳が解ける可能性はある。……殿下、決断を。」

 ルーク王子は歯を食いしばった。


 アリシアの笑顔が脳裏に浮かぶ。自分が守らなければならなかったはずの聖女が、今はアマルソフィアの側に立っている。


「……わかった。より強力な部隊を編成しろ。魔法使いを中心に、聖女の雷を防げる者を選抜する。そして……。」


 ルークの声が、低く冷たくなった。

「アマルソフィアを殺せ。聖女アリシアがこの手に戻るまで、手段は問わない。」


 情報部長が困惑して、ちらりと宰相に目線を向ける。だが宰相はあきれたように頭を振った。情報部長は静かに頷いた。

「承知しました。暗殺部隊を……即時、ブリュンヒル王国国境へ向かわせます。」






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