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異世界のもふもふカフェレストランで、君は私を独占する  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第1話 元幼馴染の聖女さまが、悪役令嬢の私を追いかけて来た

 ――目が覚めると、そこは見知らぬ豪奢な部屋だった。目の前に、四人の圧倒的イケメンが立っている。

 王子様風の男が、冷たい声で言った。


「アマルソフィア。お前のような残酷な女とは結婚出来ない。アリシアをいじめ、殺そうとするなど。お前とは婚約破棄だ。俺はアリシアと結婚する。」


 マルカール王国第一王子、ルーク・バレンシア。

 宰相の息子、ルキウス・エンヴィー。

 騎士団長の息子、ホーク・アンバイン。

 王宮筆頭魔法使いの、アイン・チックス。

 その背後に守られるように、聖女アリシアが茫然と立っていた。


 高倉千尋たかくらちひろはそれを眺めながら、呆然と呟いた。

「るーくん、ルキたん、ほっくん、アイアイ……ここって……<悠久のロマンスを君と2人で>の世界……?」


 しかも、どうやら1部の断罪イベントの真っ最中だった。

 王子たちに庇われるように立つ少女――聖女アリシアにも見覚えがある。

 千尋の言葉に、アリシアがピクリと反応した。


 どうやら千尋は、「1」の悪役令嬢である、アマルソフィアに転生したようだった。何も抗弁できず、しばらく地下牢で拘束されたのち、簡易的な裁判を経て、千尋は国外追放を宣告された。


 追放先は、「2」の舞台であるブリュンヒル王国の国境に程近い修道院。

「まあ、推しは❝2❞のヒーローだし……むしろラッキーかも?」


 魔道大国であり、スチームパンクっぽい世界観の、ブリュンヒル王国と違い、機械の少ない❝1❞の舞台は、移動手段は馬車しかない。


 ガタゴトと、舗装されていない道を、馬車に揺られながら、修道院に着いた瞬間、千尋は思わず目を丸くした。修道院の入り口の前に、なぜか聖女アリシアが笑顔で待っていた。


「すぐにわかったよ。推しより親友でしょ。千尋を一人になんて、絶対にできないもの。」


「まさか……蒼生……?蒼生なの?」

 そこにいたのは、紛れもなく聖女アリシアに転生した、御堂蒼生みどうあおいだった。


 二人は同時に駆け寄り、ぎゅうううううっ!! と全力で抱き合った。

 泣き笑いしながら、何度も名前を呼び合って、離したくない気持ちを全身でぶつけ合う。


「蒼生……また会えると思わなかった。生きててよかった……。」

「一回死んだけどね。」

 冗談めかして言う蒼生に、千尋はさらに強く抱きついた。


 千尋の脳裏に、蒼生が電車が入って来る線路に落ちて行く姿と、それを追いかけて線路に飛び込む自分の姿がフラッシュバックする。


「この世界って、❝1❞の世界線なのかな?」

「この世界が❝1❞でも❝2❞でも、どこだって構わないよ。蒼生がいる場所が、私の居場所なんだから!」


「そうだね。私もそう。」

 蒼生がそう言って、泣き笑いのように笑う。

「ずっと一緒にいられるんだね……。」

「ひとまず、ここで暮らそう。後のことは、ゆっくり考えようよ。」


 修道院の小さな部屋で、互いに抱き合って眠る。

 両親に放っておかれたあの日のように。

 両親が死んだあの夜のように。


 ここが異世界でも、千尋が悪役令嬢でも、蒼生が聖女でも、関係ない。

 二人でいられさえすれば、それがすべてで、幸せなのだから。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 高級レストラン「ガストロノミー・ルシェル」の厨房は、いつも通り熱気に満ちていた。スーシェフの御堂蒼生みどうあおいは、今日もせわしなく味付けの最終チェックをしたりと動き続けていた。


 隣のステーションでは、シェフパティシエの高倉千尋たかくらちひろが、繊細なチョコレート細工に集中しつつ、時々蒼生の方をチラチラと盗み見ては、頑張って働く姿にニコニコしている。


 二人は幼馴染で、隣同士で育ち、姉妹のように生きてきた。蒼生の母親が離婚して実家に戻った時、千尋の父親が妻を亡くして男やもめだった。また、二人の親もまた幼馴染同士だった。


 忙しい両親に代わって、互いが互いの支えだった。普段クールで無表情な蒼生が、千尋の前では明るく無邪気にふるまう為、まるで双子のようだと、お互いの親からは言われた。それくらい、互いが互いの前で、鏡のような存在だった。


「今日は私がご飯作るね♪」

「宿題一緒にやろ?」

「今日はそっちのベッドで一緒に寝たいな。」

「お父さん今日も仕込み忙しいみたい。うちで一緒に寝よ?」


 そんな言葉が、二人の日常だった。そしてついに、というか、シングルマザーとシングルファーザーが互いに支えあってきた結果というか、二人の親が結婚した。

 本当の姉妹になったその日、二人は笑い合った。


「本当の姉妹になれてうれしい。私の方が半年誕生日が早いから、お姉ちゃんだね。」

「これからもずっと一緒にいようね。」


 ――しかし、運命は残酷だった。新婚旅行先で、両親は交通事故で帰らぬ人となった。

 悲しみに暮れる暇などないまま、無感情で喪主をつとめる千尋と蒼生。


「ほんとに二人だけになっちゃったね……。」

 千尋はぽつりと、独り言のようにつぶやく。


「そうね……でも、千尋と姉妹になる目的は果たせたから、別にもう死んでくれても問題なかったけど。」

 蒼生も独り言のようにつぶやく。


「──ん?何?よく聞こえなかった。」

「千尋とほんとの姉妹になれた後だったのが、せめてもの不幸中の幸いだったかなって。」


「そうだね……それはほんとにそう。それだけが救いかな……。」

 千尋は涙を浮かべて微笑みながらそう言った。





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