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小川からの撤収準備

「ヤベー、誰も見張りしてなかッた」

「悪い、クタクタですっかり忘れてた」

「襲われなかったから良いわよ。それよりこれからの事ね」

「おう、そうだな」


見張りも置かずに一休みした後、この小川辺の作業場から撤収にかかる。

先ずは運搬用の担架に、荷物をいろいろ載せて整理しなければならない。


マサは肉の壺満載の担架だ。

彼のやる気が引き出せるから、それが一番良い。


担架に載せて来た今回の戦利品、山賊の幹部の装備品や頭目の手にしていた武器を、小川の縁に置いておいた戦利品 ──魔女の一党を討伐した時の、主に盗賊の装備と魔女の家の特徴のない布帛類── の担架の方へ移して一纏めにした。

ぼくが左腕に抱えてきた戦利品もそこへ加えて一緒にする。

マサの担架に載せきれない大蜥蜴の燻製肉の壺も少し載せているし、かなり重い。

この担架はぼくが曳く。


今日ここまでぼくが曳いて荒野を逃げて来た担架には、小川に晒しておいた数十匹分の犬の生皮と、人のも混じってる骨素材を入れた袋を載せて、トモエコが曳いて行くことにする。


でもちょっと、担架三台満載状態は、筏で一度に森戸に運ぶには多すぎる。


「これ、全部を筏に一度に載せるのは、さすがに無理だと思う」

「う~ん、何回も海を往復するの?」

「しかたないんじゃない? だって、捨てて行くのはもったいないだろ? それにこの辺りの農家の人達にも印象悪いだろうし」

「あ、かなり長くここに居たし、もう一度挨拶に行った方がい~よね」

「お、そうだな」

「じゃあ、大蜥蜴の燻製肉の壺を一つ進呈するか」


そういうわけで、皆でまた農家さんに挨拶に行って、夕陽の中に五人で突っ立ち、


「ほお、退治の仕事を終えたのか、ご苦労様。有難い」

「お蔭様で、無事に終える事が出来ました。ずっと川辺にお邪魔してしまいましたが、お世話になりましたお礼に、こんなものですが宜しかったら……」

「おう、また燻製かい?」

「はい、これは大蜥蜴のです」

「ほお、これはこれは、いや、どうも有難う、何もしないのに貰っちゃってなんだか悪いね」

「いえいえ、お蔭様で落ち着いて作業出来ましたので、もしもまた退治の仕事を請けることがあったら、またお世話になるかもしれませんが、その時にはどうかよろしくお願い致します」

「ああ何、何時でも来てくれて構わないさ、荒野の奴らを退治してもらえるだけでも有難いよ」

「これから片づけて撤収しますが、ちょっと荷物が予想外に多くなってしまったので、何回かに分けて運び出す心算です。荷物を動かすので少し騒がしくなるかもしれませんので、予めお断りしておきます」


こうして周囲の人々に贈ったり自分たちで食べて減ってゆく肉はともかく、戦利品と素材については、集める事の出来た素材は思ったより少ないが、戦利品が予想を遥かに上回って山積みになったので嬉しい悲鳴といったところ。


「肉とか骨とかは、狩りに行けば何度でも採れるし、最悪盗られてもいい」

「うん、まず戦利品だな」


とりあえず、素材と肉の二つの担架は小川に置きっぱなしにして、先ずは戦利品の担架一つだけで森戸へ行こう。

そしてまた戻って来て、残り二つを持っていこう。

肉はマサも籠に積んでるけど、もう少し最初に持っていっても良いかもしれない。


「でも、その後、今度はサカヌキ村へ帰るのだけれども……」

「ん? 何?」

「サカヌキ村に持ち帰るのと、森戸の仮拠点に置いて置くのと、あるだろ?」

「あァ、まあ、とりあえず森戸へ無事に運んでから考えようゼ」

「そうだな、うん、わかった」


まあしかし、今回は戦利品が多いし、防具に加工する素材は森戸で処理しておいて、仮拠点か何処かへ収めておいて、それからジンメ渓谷へ帰れば良いだろう。


帰りは戦利品の中から武具以外の布帛類を中心に持ち帰れば良い。

但し弓一丁は持ち帰って練習することになってる。


「あ」

「うん?」

「トヨ、矢はあと何本残ってる?」

「三本だけ残しておいたぞ」

「そうか……」

「どうかした?」

「いや、確かめただけだ」

「はァん?」


何かあった場合、トヨの援護射撃はあてにできない状態と把握。



さて、魔女の家からの主な戦利品の、布帛類。

これも、別に全部サカヌキ村に持ち帰る必要などない。

あとで「しまった、あれを持ってくればよかった」などと思わずに済む程度で良い。


こちらの街や村でも買い物などでまともな服を着たいし、とは言え留守中の衣類の保存は蟲とか黴とか敵が色々いるんだよな……ヤッさんとこに甘えるか……要相談だ。


頼みごとをするんだから何か手土産が要るが、上質なリネンのシーツを贈り物にすればいいな。

一枚はヤッさんとこ。

一枚は色々お世話になってる小部落のお爺さんでいいか。


「と考えたんだが、それでいいか?」

「ええ、それで良いわね。トオルにも何か贈る?」

「あの人にもお世話になってるよなあ……良い服着てたけど、古くなってたし、リネンのシーツ贈るか」

「シーツは服の代わりにはならないよ~」

「でも、あの格の布地はそうそう売ってないよ……」

「それこそ、メガネの小母さんの言ってた●●の店くらいかも?」

「ああ、でもどうなんだろうなァ? あンまり高いものを贈るってのはよォ」

「そうよね、それより、少し良い生地の大き目の布とかも戦利品に入ってるし、そのくらいでいいかしらね」

「その辺は任せるよ」


既に、戦利品から肌着とかシャツとかズボンとか、一着ずつくらいはめいめいが欲しいものを取って各自の背負い籠に仕舞ってある。




拙作をお読み頂き、まことに有難うございます。


作業BGM: Tangerine Dream "Long Island Sunset"

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