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野犬退治依頼その5

ウラアアアッ!

近くの草むらから突然喚声が上がり、襲い掛かって来た。

しまったッ


先頭を行くトヨが襲われるが、すんでのところで身を翻して、転がるように引き返してくる。

この為にトヨの背後に控えていたマサが、すぐに楯を構えて


「オオオッ!」


と叫び声を上げて、敵にぶつかって行きながら、腰のベルトから斧を抜く。

背負い籠を下ろす暇もない。


山賊の奇襲に対して、トモエコは籠を下ろし、楯を構えて、ダガーと投げナイフを抜いて構える。

俺は背負い籠を下ろすと、楯を構えて前方へ突進しながら、棘棒を引き抜く。


マサが敵と激突して、斧を打ち込んでいる。

その背後に駆けつけた俺は、マサを囲ませないように、マサの右側へ並んで敵へ楯を前へ突き出し、マサと同様に斧を振り上げて、敵へ叩き込む。

受け太刀ではなく、あくまでも先に先に押し込むようにする。

背後はトヨに任せたいが、今は奴の援護は当てにできないから、マサも俺も横へ回り込まれないように、戦列を崩さないように、足元にも気をつけて転ばないようにして、敵にドスドス突き立てられる楯が削られるのを感じつつ、激しく反撃を続ける。


「他には居ねえッ! やッちまえッ!」


トヨの声で、囲まれているわけではないと判って、勢いづく。

目の前の敵だけなら!


それでも5,6人居た。

既に俺は一人切り倒しているが、まだ二人を同時に相手している。


だがそこからはトヨが援護射撃してくれたので、敵が一人、また一人と射貫かれて倒れ込む。


「よし、取り敢えず、こんなもんか」

「俺がやっとくよ」

「見張るわ」


俺が拷問して訊き出し、トヨが警戒し、マサが漁り、トモエコが補助する。

速やかに処理して、僅かな金とナイフ類だけ剥ぎ取り、再び移動する。



「そろそろ引き返しましょう」

「ああ、そうだな」


曇天だから分かりづらいが、気がつけば、そろそろ夕暮れだ。

なんとなく空の色がそんな感じだ。


周囲を警戒しつつ、街道へ引き返す。


追尾を警戒しつつ、小川へ引き揚げる。


無事に戻って来ると、いつものように交代で水浴して、夕食。


--


翌日、晴れたが、まだ雲は多い。


退治依頼を請けてからもう十九日目だ。

期限まではもう、今日を入れて、あと三日しかない。

野犬退治依頼、昨日までの成果は66匹。

残りあと34匹。


「さ、行くか」

「おう」

「がんばろう!」


短い朝食を終えると、今日も仕事開始。


まずは街道を優先的に。


ずっと断崖の方へ速足で歩いて、街道近辺を探すと、三匹ほどの、群からはぐれた野犬が居た。

そこで、ぼくだけが籠を下ろして先行すると、一人だけとみて襲い掛かって来た。

よーし、よしよし。

よーし!


ヘッドギアの中でニヤついて、三匹がほぼ同時に跳びかかって来るのを、待ってましたとばかりに両手の石斧で反撃して、一気に二匹仕留める。

もう一匹、腕にまだしっかり噛み付いてる奴に最後の一撃を加えて、三匹退治完了。


仲間もゆっくり近づいて来る。


「これはいいねっ」

「ああ、上手く行ったな」

「トヨはとにかく見張ってね」

「任しとけよ」


これで69匹、あと31匹。

まだまだこれからだ。



足早に断崖まで行ってしまい、小鬼と山賊は撃退したが、野犬とは行き会わなかった。


それから次は、街道の西方の荒野へ踏み込んで、昨日の続きを再開する。


するとやっと、野犬の大きな群れを発見。

視線が合うと、すぐに襲い掛かって来た。


「来たぞっ!」

「おう、気張れよ!」

「任せろッ!」


結構大きな群れなので、マサと俺は楯を女子に貸してやり、女子は後方で楯を四方に立てて籠を守る。

その隣にトヨが立って、弓矢を構えている。


石斧二刀流のマサと俺が、いつものようにマサの左後方に俺が立ち、血走った眼で涎を垂らして跳びかかって来る嵐のような野犬の群れを風車のように斧を振り回して迎撃する。



犬の数が多いので、鎧の隙間を噛み裂かれる前にとにかく殺す。

マサの援護もできない。


「うおおおっ」


マサのおめく声が聞こえて来る。

マサの後ろにいるこちらの脚に噛み付くのが片足だけでも三匹も居るのを、片腕を二匹に噛み付かれた状態で斧を振り回して、次々に切り捨て、打ち割って、屠る。

全力で斧を振り回すのに、革手袋が非常に役立って、しっかり握れている。


半ダースも殺した辺りで、右手の斧の頭がすっぽ抜けたが、すぐに石鎚を引き抜いて、革の環に手首を通しもせず、革手袋のグリップを信じて振り回し、撲りつけて殺してゆく。

前腕に噛み付いてる奴を殺して腕を軽くするとすぐに、股の内側へ噛みついてる奴を真っ先に殺す。


20ほども殺したかと思う頃、やっとお代わりが居なくなり、マサはまだ集られてるが問題はないとみて、まだ足に噛み付いてる奴を殺しながら振り返れば、トヨは棘棒と楯で犬を撲り殺していて、楯を踏んづけたり握ったりして構え、ダガーを手にしているトモエコの周囲にも十匹ほどの野犬が息絶えていた。


残りの犬を片づけ、後衛の仲間が瀕死の犬の息の根を止めて行くのを見つつ、息を調えて、殺した犬の数を数える。


36匹。


ええと……トモに訊いて確かめよう。


「残り何匹だったっけ?」

「31匹」

「じゃあ、達成だな」

「何匹?」

「36」

「やったあ……」


取り敢えず、依頼は達成できた。


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