細々した後処理の風景
更には銅貨も一万枚以上ある。
銀貨にして百枚余り程度だとは言え、惜しい。
惜しいが、到底持ち切れない。
そこに営業の顔をした小母さん司祭様が口を出す。
「そんなにお金があって大変そうねえ、どう? ここは一つ、三割引きの神殿の割引札でも買わない? 今なら3000枚ポッキリで手に入れられるわよ♪」
「それは、200枚はもう既に払ってるだけですし……でも、3000枚払ってもまだ五千枚以上の銀貨があるのね」
「そうよ、傭兵はこういう機会にお薬を買っておいたり、装備を更新するものだけれど、高率の割引札はステータスにもなるし、ずっと残るし、良いわよ~♪」
もっともな話なので、とりあえず巾着の大きさも考えて、一人に銀貨200枚を分配してから、銀貨3000枚払って30%適用の割引札を作って貰った。
一割引きの札と同じく木札だが、何か違う品質と頑丈さを感じさせる。
「この格の札を作ることは少ないから、嬉しいわ。 きっとあなた達は運が良いのね。これからも宜しくね」
余った銀貨4320枚のうちから、カツト神殿で小治癒薬を九本、解毒薬を五本買った。
ネフワア神殿と同じ価格だったが、三割引きなので、(900+240*5)×7÷10=(90+120)×7=210×7=1470スタッグを支払う。
購入したポーションは、以前に一本だけ買った小治癒薬と合わせて、各人小治癒薬二本解毒薬一本で再分配して、装帯の小物入れに分散して仕舞い込む。
残りの銀貨2850枚は、今はもうこれ以上荷物を増やしたくないので、カツト神殿預かりにしてもらって、手数料(それも三割引き)として銀貨70枚を差し引いた分の預かり証の札を作った。
同じ札に、銅貨の分も含めてもらった。
とりあえず端数は共用に入れてトモコが預かり、あとは一人100枚だけ、当座の用に貰っておいた。
残りの12000枚を、スタッグ銀貨120枚に換算して預かってもらった。
カツト神殿に預かって貰った額面は、合計2900スタッグ。
またトモコが管理する札が増えてしまった。
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さて、そうした後処理に追われているうちに、すっかり日が暮れてしまって夜になってしまったが、最後に小母さん司祭様が
「じゃあ、お祓いしましょうね」
「え、魔物とは戦ってませんが……」
「あんな邪悪な精神に凝り固まった輩の巣窟に足を踏み入れて、浄めが必要ないわけないじゃない」
と呆れ顔を司祭様から向けられ、そういうものかと思い、一緒に神殿を出て再び呪われた家を訪れる。
既に真っ暗だ。
小母さん司祭様にも強面の付き人が随伴している。
彼は司祭様が神殿の聖域を出る時には、明るいうちから既に付き添っていたが、特に喋らずに寡黙に護衛に専念していた。
それと別に、今回の用で駆り出された神殿の若い人が三人、一緒にお祓いを受けに同行した。
結局、地下の『研究室』で一回、逃亡通路に降りた所でもう一回お祓いをする事になって、小母さんも大分疲れたようで、薬を呷って気力とか法力とか何かそういう常人には理解し難いのを回復させていた。
ぼくたちも松明を掲げて彼女たち神殿の人々を送り、それから兵営の広場に一夜の宿を取ったのだった。
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「今日は凄かったなあ」
「いいから先に寝ろよ」
「いやあ、お腹空いちゃってさあ」
「そういや、忙しくって、食うのを忘れていたな……」
一日中駆けずり回って割と腹ペコなのに、夜にお祓いを二度も受けてすっかり疲労がとれていたので、食事の事を忘れていた。
マサが背負い籠から取り出した野犬の燻製肉を、焚火で炙っては、ぼりぼり旨そうに齧るから、ぼくまで欲しくなった。
「おぃちゃん、一本お呉れっ」
「へいっ! って、誰がおぃちゃんだよ……」
「おま」
「なに」
言いながらも、一本呉れたので、早速炙る。
じ、じじ、じゅうぅ……
ふわあ~、と涎が湧く匂いが漂ってくる。
たまらん。
少しくらい早くったってもいいから、すぐに食いたくなって、炙るのもそこそこに齧り付く。
美味しい…… やっぱり、美味しい……
食べるのに夢中になって、見張りをするのを忘れていたが、接近者は居らず、いても気配や足音で何となくわかるので、ここのように比較的安全な場所だと、かなり気を抜いても問題ないのだった。
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星空の明るい夜のまま、翌日未明。
目が醒めた。
松明を手に用を足して、ついでに水場へ足を延ばして洗面して、手拭できれいに拭き取り、焚火の傍に戻る。
見張りのトヨと頷きあって、見張り交代。
またぼくの番だ。
松明を受け取ったトヨは用を足しに行って、戻って来るとぼくが寝ていた網寝床へ上がり込む。
22th/Nov/2023 第四章を読み返していたら、ネフワア神殿での解毒薬価格を270と記憶していたのが誤りと気づいたので、慌てて修正。やはりその都度ちゃんと確かめないと駄目だぁ……




