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征伐した悪党どものお宝

この地獄の悪鬼どもが溜め込んでいたお宝はかなりの量があったので、根こそぎ奪い去ろうとするなら荷車が必要だった。

それも一輛では足りず、何輛か必要になる。


今から街の工房へ出かけて一輛だけでも新規に作ってもらうには時間がかかり過ぎる。


だが荷車を借りられるようなあてもない。

前に地主さんと揉めた、兵営の方の水場近くの『駐車場』には沢山の荷車が並んでいたけれど、あのオッサンとは話したくないし。

あのオッサンはただの地主で、車の主は別の人々だろうけれども、それが誰かなんて分からない。

きっと物売りだろうが、彼らは日常的に使っていると思われるから、貸してくれる者を探すのも大変な手間がかかる。


--


なので、考えた結果、思い切ってとりあえず神殿に行き、見知った顔が居ないか探すと、幸運にも一人、以前にネフワア神殿でお世話になった背の低い小母さんの司祭様が居たので、秘密厳守を頼んで事情を話し、応援を要請した。


そうすると、


「それだと私刑に処したことになるから、そのままでは拙いわ」


と言われた。

小母さん司祭様にしたところで、別にぼくたちと特に懇意というわけでもない。

神殿の立場から物を云うので、既に知られてしまったからには、別の方策を考えねばならない。

それには小母さん司祭様も協力してくれて、


「では、こうしましょう。私があなた方に討伐依頼を出したことにします。そしてあなた方が即日討伐したことにします。証拠はここにあるものが総てを語っていますから、事後になりますが、問題ないと言う事にしてしまいます。そこは私がやります」

「ご負担をおかけしてしまい、申し訳ありません」

「深刻な悪が一つ滅ぼせたのですから、事後処理に協力するくらいのことは何でもありません」



こうして、準公的な神殿からの盗賊討伐依頼がぼくたちの、つまり代表者トモコの名を特に指定して出され、それを請けて即日討伐完了したという、事後処理形式で済ませたので、カツトの兵営には小母さん司祭様と同行して一度訪れるだけで済んだ。

その時についでに護衛依頼完了も報告して、報酬の銀貨30枚を受領。


本来ならば、カツトではまだぼくたちの傭兵としての信用が足りないから討伐依頼なんて請けられないのだが、そこは小母さん司祭様が特に指定したと言う事で無理が通った。


だから、討伐依頼の報酬額、今回は銀貨880枚が貰えたのだが、討伐依頼の時には普通は現場で見つけたお宝は特別な品以外は全部請負人が貰ってしまえる。

野垂れ死にの奴の遺品を貰えるのと同じだ。


ただ、今回は唐突に応援を要請した立場。

司祭様が厳粛な表情で約束してくれたので、悪党の『研究成果』などを含む、運搬に適さない大部分の物の処分は神殿に一任することにした。


ぼくたちは、足が付かない宝石や金銀などの財宝の大部分を貰った。

また、現物としては、ごく庶民的な衣類や袋など、嵩張らない布帛類で、これといった特徴のない物だけを、或る程度の量貰い受けた。

売女が来ていた清楚な服みたいに或る程度の特徴があると、万一、他に残党が居た場合に気づかれて、報復の標的となりかねないので。


ちなみに、外からは見えないとは言え、さすがに悪党の使用済みの下着類までは、それほど汚れていなくても、トモエコも手を付けなかった。

だから、汚れの少ない比較的新品の物だけ、ぼくが喜んで戦利品として貰い受けたが、こっそりと、誰にも見られないうちに、まるで盗むように仕舞い込んだ。


彼らが残した一軒家もある。

本当は、悪の巣窟など、家に火を放って焼き尽くしたかったが、神殿に処理を一任した手前、それは止めた。


せめて、呪われた極悪人の身柄くらいは、本当はこちらで確実に処分したかった。

しかしそれも、特殊研究の裏付けやら何やらで、まだ今暫くは喋らせる必要があるとのことで、できなかった。

ただ、人体実験者の末路は、いずれ遠からず自らがその呪われた『研究』の証明の為に用いられるのだと教えられ、その事については神殿の名で確約されたので、溜飲が下がった。


唯一、裏切り者の射手だけは、俺達で好きにして良いと言われたので、縛り上げて袋に入れて人気の絶える場所まで連行した。

悪党仲間の間での最低限の誠実さすら放棄した奴は、かくして手足を拘束されたまま浄めの焔で焼かれて地獄へ送りこまれた。


--


その後兵営に行って調べても、この悪党どもは今まではお尋ね者になってもおらず、どうやら村では何食わぬ顔をして静かな暮らしを満喫していたらしい。

不当利得で悠々自適とは、何とも憎たらしい奴らだ。

まあ、悪事の現場に出喰わして、残らず退治してしまえて、良かったという事にする。


トモコだけは、少し浮かぬ顔をして

「兵営に引き渡さなくて良かったのかしら」

と呟いていたが、


「拷問でも吐いてたように、こういう手合いには意外とお偉いさんの中に友人知人が居るから、あまり他人なんてあてにしない方がいいぜ」

「そうそう、兵士なんて所詮、権力の犬なんだ。上から圧力がかかって放免されたりして報復、なんて機会すら与えないように、やれる時に一挙に徹底的に覆滅してしまうのが最善さ。首魁も神殿が始末すると約束してくれたからね」

「もう死んだから、今更気にしても仕方ないよ。害蟲を殺すのに、一々やり方を気にするかい? 見つけ次第に次々ぷちぷち潰せばそれでいいのさ」


と男三人は口々に説いた。


--


今回の自主的に始めた討伐で得た財宝は、背負い籠の底が抜けそうになるほどの銀貨と銅貨、幾らかの金貨と宝石類。


宝石はよく分からないが、小母さん司祭様のざっと見た所では、それほど高いのは無いし、逆に屑宝石も無く、銀貨二桁から三桁の枚数相当の価値のある、換金しやすい種類ばかりらしかった。

金貨は32枚。

これらはトモコに一括管理してもらう。


銀貨は8320枚。

これは重すぎてトモコ一人ではどうにもならないし、五等分して1664枚ずつでも女子には結構辛そうだ。


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