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呪歌使い戦記番外編 最終話

 プイスの願いは、僕と二人あの戦場を生き延びること。

 そのために飛行術を教えてくれと来た。それが何某かの意味を成すのだろうか。

 だがプイスの知的好奇心を満たしてやるのが師の務めだろう。

 しかしあの子は無謀を犯す可能性がある。今日だって、教えたばかりで高度を上げ、落下した。

 教え方を考えなければいけない。戦場に立つ前に死なれては敵わない。


 宿場街で、木から飛び降りる無謀を犯した。

 どうすれば、どう言えばあの馬鹿はわかってくれるのだ。カーティスの店で散々にぶちまけたが、響いている様子はなかった。

 もう死にたくない。プイスが死ぬ様ももう見たくない。戦場ですら、もう行きたくない。兵に引きずり出されようが行きたくない。

 どうしてこうなったのだろう。私、いや、僕があの呪歌を使ったから。悪魔に助けてと縋ったからか。


 あれ以来。プイスは空を飛ばなくなった。

 何を考えているのだろう。私の……僕の言葉が響いたのだろうか。それとも。

 どちらでも良い。戦場に立つまでに無事でいてくれたなら、もうそれで。


 いよいよ明日、王都へ向けて発つ。

 プイスはついてくるのだろうか。散々怒鳴りつけて、怖い思いをさせたのだ。ついてくるとは……いや、あれならついてくるだろう。

 今のあの子なら、きっと大丈夫。


 王都について数日が経った。

 プイスはアスチルベと名乗る小間使いと仲良くしているようだ。

 そう言えばあの子に友達がいるところを見たことがない。同年代の子と遊ぶ姿を見たことがない。

 やっと、あの子の子供らしい場面を見れた気がする。


 明日、いよいよ戦場に向けて発つことになった。

 プイスの調子は思わしくない。今になって、戦場で兄さんを殺したことを気に病んでいるようだ。

 本人は戦場に立つつもりであるし、それに向けて食事量も増やす努力は見られる。

 あとは体が行軍に耐えられるかどうか、だろう。


 明日、決戦。

 とうとうここまで来た。死ぬ覚悟は出来ている。

 神よ、どうか我が子だけでもお守りください。


 戦場を越えた。

 生きている。僕も、プイスも生きている。

 左腕は怪我で動かない。それでも、生きている。

 やっと、僕達の願いが叶ったのだ。


 どこ。先生、兄さん、プイス。どこ。

 僕を独りにしないで。


 今日、やっと先生の墓参りに行けた。

 弟子が出来た報告も、やっと出来た。

 先生は何と言ってくれるかな。遅いと怒られるかな。よくやったと褒めてくれるかな。


 やっと家に帰ってこられた。僕とプイスが住む、草原の家。

 この日を何度夢見たことか。夢ではない、夢ではないのだ。

 やっと僕達の願いが叶った。これからも、プイスとこの家で。


〇〇年、冬

 プイスが十八歳の誕生時を迎えた。それと同時に、旅に出ることを決意したと聞いた。

 プイスなら、あの戦場を越えて成長したあの子なら何処にいても大丈夫だろう。

 大きくなった我が子、その成長が誇らしくも少し寂しく思う。


〇〇年、春

 今日、プイスが独り立ちした。

 あの子がこの家に来て十二年、共に過ごした時間はもはやわからない。

 あの子はどのような魔法使いになるだろう。どのような弟子を取るだろう。

 愛しい我が子、愛しい我が弟子。君の歩む道に幸いあれ。君の人生に神の祝福あれ!

ここまで読んでくださりありがとうございます。

これにて「蜂蜜色の瞳」呪歌使い戦記番外編も完結でございます。

ここまで紡いできたプイスとルイスの師弟愛の物語がどう届いたか、感想をいただけると続編執筆の励みになりますのでよろしくお願いします!

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