表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/87

呪歌使い戦記番外編第一話

 以下、とある男の手記より抜粋。

 年号部分は黒いインクで塗りつぶされており、判別不能である。


〇〇年、春

 今日、とうとう僕にも弟子が出来た。

 あの港町にいた男の子、名前は先生からいただいてプイス。先生のように、鯨の国の古い英雄のように、賢い子に育ってほしい。

 どうか彼の歩む道に、幸多からんことを。


〇〇年、夏

 プイスの覚えの良さには目を見張るものがある。一度しか説明していない薬の処方が全て頭に入っている。僕なんて未だに処方のメモがないと薬を作ることが出来ないのに。

 師として恥ずかしい限り、僕も精進しないと。


〇〇年、冬

 今日はプイスの誕生日。我が家に来て二回目の誕生日だ。

 九歳になったプイスは乳鉢で薬草を砕くのに夢中になっている。黙々と作業をするのが好きらしい。

 日々の仕事で彼が好みそうなものはないだろうか。


〇〇年、春

 プイスが我が家に来て五年。ずいぶんと背が伸びた。

 台所のかまどを使うための踏み台はもういらないだろう。この子は僕の背丈を越えるくらい大きく育ってくれるだろうか。


〇〇年、秋

 先生の書架にあった研究書の全てが明らかになった。

 鯨の国の古い言葉で記された呪歌、何やら願いを叶える力を持つらしいが、今のところ叶えたい願いはない。

 思いつく願いと言えば、プイスの未来が明るいものであるように。ただそれだけだ。


〇〇年、晩秋

 獅子王からの使者が来た。竜の国との戦争が始まったらしい。

 戦争など、この家がある草原はいたって平和なのに。戦場ではたくさんの兵が犠牲になっていると聞く。いつの間に。

 共に使者の話を聞いたプイスは戸惑っている。仮に戦場に出ることになったとして、プイスは連れていけない。どうしたものか。


〇〇年、冬

 王城への召集の手紙が来た。プイスは戦場について来たがっている。彼はまだ十六歳、戦場に立つには若すぎる。

 それでも決意は固い。この頑固さは誰に似たと言うのだろう。


 戦場を越えた。

 プイスは帰ってこられなかった。

 何が誉れ高き戦士だ。弟子一人守れない僕が、誉れ高いなど。


〇〇年、春。

 胸の内の穴を埋める方法が見つかったかもしれない。

 あの呪歌なら、僕の願いが叶うかもしれない。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

よければ評価や感想いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ