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不在の騎士団長

「それにしても、来ないな…」

 と、数分待っていたザリファーが呟いた。


 僕がここにいるから、彼らが待つ騎士団長は一生やって来ないのだった。


 ザリファーは頭を掻いた後、欠伸を必死に抑えていた。僕はその自由さに少し驚きながらも、聞いた。

「ザリファーはよく寝てない感じ?」


「あぁ。まあな…色々、所属が変わる準備で大変だったのだ。早く、来て欲しいな、騎士団長。俺が寝てしまう前にも」

 と、ザリファーは本当に今にでも寝そうだった。


 このままにしたら、やばいな、と僕は流石に気付いた。だから、荒技を行った。

 収納魔法の中で手紙を取り出して、別の魔法で手紙を書き込んだ。これまでした事のない技だったので、普段通りの文字が書けるかが不安だった。が、出来上がったのを脳内で開いて見ると、案外出来ていた。

 僕はそれを別の封筒に入れて、受付のカウンターに現れるようにした。



 丁度、奥から物音が聞こえた。突然、手紙が現れた事で職員が椅子から転げ落ちたような、音だった。特に監視している訳でもないので、普通にしていればそこまで気にする事でもない、と思った。が、違うようだった。次からは、手紙が現れる前に音でも付けようかなと、考えた。だけど、それをしたと言う事は僕が向こうが見えている事を明らかにしている事でもあった。

 何でもいいか、と僕は更に考えるのを止めた。


「おーい。どうしたのだ? もしかして、おばけでも現れたのか?」

 と、ゴーシュが急いでそちらに向かった。


 口は多少悪いが、心は優しいのだった。


「そんな訳ないだろ…」

 と、アイガンが後ろで呟いていた。



 ゴーシュに支えられてやって来た、受付の職員は手紙を握っていた。

「先程、カウンターに置かれていました。騎士団長からと思われる手紙です。当分は用事で忙しくて来る事が出来ないそうです」


「そうだと思ったよ」

 と、ザリファーは頭の後ろで両手を組みながら、言った。


 僕は不思議に思って、彼に聞いた。

「何でそう思ったの、ザリファー?」


「だって、騎士団長の宮廷魔法師様はまだ学生と言う噂だ。だから、すぐに来れるはずがないかな、って。まぁ。俺からしたらどっちでもいいけど」


 宮廷魔法師の情報は限られていたが、多少は知れ渡っているようだった。


 僕は副団長である、セイスに振り向いた。

「なら、今日は何をするのですか?」


 セイスは考えるような顔をしてから、口を開いた。

「そうだな…出来る事を、ぐらいかな」


 それは何とも、不安になる答えだった。

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