騎士団の団員
受付から奥に入って行くと、団員が集まっている大部屋があった。それは休憩所のようでもあった。僕が入るなり人々が興味深そうに、こちらを見た。騎士団と言う事だが、魔法師の部隊なので大抵の人が杖を腰から下げていた。護衛騎士と思われる人は、高そうな剣を下げていた。
僕の設定は少年兵だったので、丁寧にお辞儀をした。本当に少年兵なら、団員とは大きな差が空いているから。剣も言われない限りは、下げないのが基本だった。
僕が団長として立っていたら、彼らが僕にこれをするのだった。こう考えると凄く不思議な事だった。
流石に確認を一切取らなかった、受付には驚いた。これは後で判明した時に、直す必要がある。このままでは、他国のスパイが潜り込んで来ても誰も気付かないかもしれない。
「少年兵のレイです。これから、よろしくお願いします」
と、僕は聞かれても間違える事がないよう、偽名は名乗らなかった。
幸い、団長の名は宮廷魔法師レインフォード・ウィズアード。どこまでの情報が知らされているか分からないが、すぐにはきっとばれないはずだった。未成年であると言う事は広がるかもしれないが、騎士団にいる子供は多い。少年兵は意外とどこの騎士団にでも、いるようだった。そして、レイと言う名前は案外どこにでもある。それがたとえ、団長と似ていても。
この世界には記録する魔法はない。だから、レインフォードが誰かと知らせる時には、元の僕とは大きく特徴が変わっているかもしれない。それぐらい伝言ゲームは大変なのだった。だから妄想を付け加えて、目付きが悪くて魔物のように少年、と最後になる可能性もある。
「レイか…団長と似た名前なのだな。だけど、まあ有名な名前だ。幸運だな」
と、近くに座っていた青年が声を掛けてくれた。
僕は再度、頭を下げた。それはそうでしょう、とは言わない。
「ありがとうございます」
「こんなに行儀のいい少年兵は、結構珍しいな。まだ時間があるから、適当にしてくれ。自分が言える訳ではないが、歓迎するよ」
「今から団長気取りかよ、アイガン。少年兵なんてどうせ、役立たずだ。騎士団としての仕事など、小銭稼ぎのためだろう」
「そんな訳ないだろ、ゴーシュ。ただ、レイにここで過ごしやすくしたかっただけだ。団長は宮廷魔法師様。副団長は、そこのセイス・ツーセル様だろ?」
最初に僕に声を掛けたのが、アイガンと判明した。アイガンに声を掛けたのが、ゴーシュだった。部屋の向こう側にるのが、副団長のセイス・ツーセルだった。誰もが第三騎士団の制服で統一していたので、ぱっと見は綺麗だった。アイガンは話すのが好きなようで、ゴーシュはちょっかいを掛けるのが好きなようだった。
僕も少年兵としていたが、制服は同じだったのでよかった。最初から渡されていた団長の服が他の団員と違えば、一発でばれていた。
セイスが第二の上司となるので、僕はセイスの側に言った。本を読んでいそうな、物静かな青年だった。僕が話しやすそうな人だった。
「少年兵のレイです」
と、僕は頭を下げた。
セイスの制服には、他の団員とは違うバッジが付けられていた。それが副団長を示すもののようだった。
「副団長のセイス・ツーセルだ。よろしくな、レイ」
と、セイスは綺麗な笑みを浮かべた。
僕も笑顔を見せた。
「はい、お願います」
セイスはついでに、壁の側にいた護衛騎士を指差した。
「彼が護衛騎士のレイリー・エンダーソン。剣と魔法、両方の腕が立つらしい。が、大体は、騎士団長の護衛かもしれない」
セイスに紹介された事に気付いた、レイリーが軽く頭を下げた。彼は僕をじっと見ていた。
第三騎士団は、面白い人が沢山いた。自由な感じを僕は好きだった。
実験的な部隊でもあるので、人員は本当に少なかった。
が、僕は沢山の人を一度には教えれないので、それで逆によかった。
学園では、アレスとジークと行動していたように。




