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王都使長の失態

すみません。いろいろ、忙しくて更新が遅れました。

 護衛から報告を聞いていた国王代理王都使長は顔を上げた。

「何? 第三騎士団には誰もいなかったと言うのか」


 体を縮ませた護衛が答えた。王都使長の言葉は明らかに体に応えているようだった。

「はいっ。もぬけの殻の状態でした…」

 と、最後まで顔色を窺っていた。


 王都使長の顔は見る見る赤くなった。

「なら、他の者に応援を呼ばなかったのか?」

 と、対応が出来ていないのを全て護衛のせいに王都使長はしようとしていた。


 そうすれば、彼自身が悪い事は表面的にでもなくなるからだった。

 護衛はそれを理解しながら、何とか答えた。本当ならその部屋から出たいのだったが、相手は王都使長である。こう言う時でも、敬う必要があるのだった。


「すぐにやられたため、それも出来ませんでした。第一騎士団の方にいる者も追い出されました」


「役立たずがっ」

 と、王都使長が机を思いっ切り叩いた。


 それが護衛から支持されなくなる理由となるとも知らずに。


 王都使長は護衛を睨んだ。

「なら、第一騎士団に事を教えたらいいだろ」

 と、それがあたかも正しいような顔をした。


 が、国防の要を担っている第一騎士団を怒らせたら、そこの宗教施設も守ってくれなくなるかもしれないのだった。それを護衛は理解していた。そして、何故ただの護衛である自分がわざわざ王都使長の手足のように動くのかさえ分からなかった。最初は頼りにされて嬉しかったが。今はただ責任とおつかいに使われているだけで、誇りの欠片もなかった。誇りがただの埃と思えるように、蔑ろにされていた。


 それは護衛にとって一番、許し難い事だった。

 そして、そのためなら教会から追放されたとしても、いいと思い始めていた。ここまで自分を信じない人がいるとは初めて感じた。


 護衛はそこで悟ったのだった。

 このままそこにいても、何も変わらない。全てはただ悪化するだけだった。


「…それは出来ません」


「何だと、口答えするつもりか。所詮、ただの護衛だな」

 と、王都使長は鼻で笑った。


 幾ら権力があったとしても、下に付きたい人がいなければ何も変わらない事を知らずに。


 その言葉は、護衛に最後の決断をさせるために十分だった。ただの護衛と言われても、彼らはその守りたい者を思いながらずっと訓練に励んできた。幾ら死にそうな状況に陥ったとしても、それだけを生きる理由としていた。が、ここまでなら、そんな事をする意味もないのだった。


「私はただの護衛です。それしか、出来ません。ですが、これだけ出来るとも言えるのです」

 と、護衛は最後に反論した。


 幾ら権力が怖いと思いながらも、それだけが護衛の唯一の抵抗だった。


「お前は気が狂ったのか? そんな事を言えば、即処刑だぞ。剣で首を切られた後に死体は広場に晒される」

 と、王都使長はそれを言えば護衛がまた側に付くと思っていた。



 が、護衛は腰の剣を抜くと王都使長の首に突き付けた。

「王都使長様がここまでのお方とは知りませんでした。もう、嫌です。さようなら」

 と、後ろを振り向く事なく部屋から去って行った。


 それを見ながら、王都使長は吐き捨てた。

「この無能が、野垂れ死ぬがいい」




 この護衛がここで足を洗ったのが正しかったかどうかは、時間が教えるのだった。

 そして、王都使長がこれからどうなっていくのかも。

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