剥奪
第三騎士団で書類作業をしていた僕は国王に呼ばれたので、行く事にした。最近は呼ばれる事はなかったが、前はあったのでそのまま呼び出しに応じた。
見覚えのある大きな扉を開けると、そこには国王もあの女性もいなかった。ただ宗教関係者と思われる男性が、純白な服に身を纏っていた。僕はその展開を予想していなかったので、扉の前で立ち止まっていた。
すると、その男性が僕を見て、静かに言った。
「何も恐れる事はない、レインフォード・ウィズアード」
と、彼は僕の名前を知っていた。
僕ははっと顔を上げた。
「あ、すみませんでした。ですが、どなたでしょうか?」
男性は綺麗な笑みを浮かべた。
「王都使長です」
ーー王都使長。僕はそれがこの王国が信仰する宗教の偉い人だと知った。
が、何故ここにいるのだろうか。
「僕、いや、私に御用でしょうか?」
「そうだ…」
と、その王都使長は僕を直視した。
「宮廷魔法師レインフォード・ウィズアード第三騎士団長。王国代理として、お前の双方の役職を、剥奪する」
僕は耳を疑った。そんな事を言われるとは思っていなかった。
「え…」
「お前のような者を異端者扱いするのは、気が引ける。なので、それだけで終わらせる事とした。これは、決定事項だ」
僕は一度頷いてから、バッジと宮廷魔法師の杖を机に置いた。
「ーーこれまでありがとうございました」
王都使長が少し間を空けてから、反応した。
「ん? それだけなのか…お前はこれからただの平民となるのだぞ。それについて何も思わないのか?」
僕は笑みを浮かべた。
「最初から平民ですので、この肩が軽くなるのなら歓迎です。面倒な事を代わりに誰かがしてくれるのなら」
折角の屋敷を失うのには気が引けたが、大した事ではなかった。
僕が去ろうとすると、声を掛けられた。
「待て、まだ終わった訳ではない。お前の屋敷も没収する」
「どうぞ。特に何もないかもしれませんが」
「ーーお、お前に一年間の従軍を命令する」
と、王都使長は軽く笑みを浮かべた。
僕はそれ以上の笑顔を作った。
「本当ですか? 嬉しいです。ザリファーを見て、少年兵になってみたかったのです」
と、僕は駆け足で部屋を去った。
「何故、あいつは困った顔をしないのだ。それを求めて行ったのに、彼は一切の未練が見えない。何故だ。何故だ、おかしい」
と、王都使長は爪を噛む顔をした。




