表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/133

剥奪

 第三騎士団で書類作業をしていた僕は国王に呼ばれたので、行く事にした。最近は呼ばれる事はなかったが、前はあったのでそのまま呼び出しに応じた。


 見覚えのある大きな扉を開けると、そこには国王もあの女性もいなかった。ただ宗教関係者と思われる男性が、純白な服に身を纏っていた。僕はその展開を予想していなかったので、扉の前で立ち止まっていた。


 すると、その男性が僕を見て、静かに言った。

「何も恐れる事はない、レインフォード・ウィズアード」

 と、彼は僕の名前を知っていた。


 僕ははっと顔を上げた。

「あ、すみませんでした。ですが、どなたでしょうか?」


 男性は綺麗な笑みを浮かべた。

「王都使長です」


 ーー王都使長。僕はそれがこの王国が信仰する宗教の偉い人だと知った。

 が、何故ここにいるのだろうか。


「僕、いや、私に御用でしょうか?」


「そうだ…」

 と、その王都使長は僕を直視した。

「宮廷魔法師レインフォード・ウィズアード第三騎士団長。王国代理として、お前の双方の役職を、剥奪する」


 僕は耳を疑った。そんな事を言われるとは思っていなかった。

「え…」


「お前のような者を異端者扱いするのは、気が引ける。なので、それだけで終わらせる事とした。これは、決定事項だ」


 僕は一度頷いてから、バッジと宮廷魔法師の杖を机に置いた。

「ーーこれまでありがとうございました」



 王都使長が少し間を空けてから、反応した。

「ん? それだけなのか…お前はこれからただの平民となるのだぞ。それについて何も思わないのか?」


 僕は笑みを浮かべた。

「最初から平民ですので、この肩が軽くなるのなら歓迎です。面倒な事を代わりに誰かがしてくれるのなら」


 折角の屋敷を失うのには気が引けたが、大した事ではなかった。


 僕が去ろうとすると、声を掛けられた。

「待て、まだ終わった訳ではない。お前の屋敷も没収する」


「どうぞ。特に何もないかもしれませんが」



「ーーお、お前に一年間の従軍を命令する」

 と、王都使長は軽く笑みを浮かべた。


 僕はそれ以上の笑顔を作った。

「本当ですか? 嬉しいです。ザリファーを見て、少年兵になってみたかったのです」

 と、僕は駆け足で部屋を去った。





「何故、あいつは困った顔をしないのだ。それを求めて行ったのに、彼は一切の未練が見えない。何故だ。何故だ、おかしい」

 と、王都使長は爪を噛む顔をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ