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第一騎士団長との交渉 2

 僕は近くの席に勝手に腰を下ろすと、第一騎士団長を直視した。団長の方は言われる事を理解しているようだった。僕はわざと知らないふりをしながら、言った。

「第一騎士団長は、第三騎士団の魔導具で何を行いたいのですか?」


 下を見ていた団長は観念したように顔を上げた。そこには苦笑いがあった。

「やっぱり、彼の言う通りだ。特に隠すつもりはなかったのだが、やり方が違ったかもしれない…」


「で、どのような理由で?」


「ただ、魔法玉をやっぱり使用したくなったのだ。だが、君はそれに賛成していなかったので、少しやり方が悪かったようだ」

 と、団長は頭を掻いた。


 僕は心の中で頷いた。この人の事だからこのような理由だと思っていた。なので、特に怒る事もなかった。一人が幾ら取っていいとも言っていなかったので、そこまでやり過ぎでも思わなかった。逆に僕の予想以下の押し寄せ方だったので、そこまで困る事はなかった。ただ、ミーシャは驚いていたようだったけど。


「そうですか…」

 と、僕は頷いた。


「やっぱり、怒っているか…レイ?」

 と、団長が恐る恐る僕を見て来た。


 僕は団長がそこまで腰を低くしていたので、逆に驚いていた。そこまで恐れさせる事をした覚えはなかったが。


「いや、怒っていないです。ただちゃんと教えてくれた事に感謝します。欲しいと言ってくれたのなら、いつでも渡す事が出来ますよ。魔法玉を国防で使う事が悪いとは思いません。ただそれがどれほど役に立つかが分からず、恐れていただけです」


 僕はその強過ぎる力が何を生むか分からないので、どうするべきか悩んでいた。でも、団長の事を見るとしっかり扱える人はいるようだった。


「…ありがとう、レイ。そう言ってくれるとは思っていなかった」

 と、団長は心から嬉しそうだった。


 僕はそこまで反応されるとは思っていなかったが、再度自分の判断に自信を持った。


「大した事ではないです。まずは見本として一つを渡しますね」

 と、僕は即席で一つの魔法玉を作った。


 掌に小さな渦が出来たと思えば、瞬く間に膨れ上がり球の形を作っていた。ピー玉のような輝きと弾力がありそうなものが、出来上がった。知らない人からすれば、何もない所から何かが出来上がったように見える感じだった。

 僕はその出来上がったのを、団長に差し出した。


 終始眺めていた団長は、僕が終わるとはっと顔を上げた。

「あ…いや、ついつい見惚れてしまった。君が作っているとは知らなかったよ。それにそんなに早いとは…」


「そうですか?」

 と、僕は頭を横に傾けた。

「やり方を覚えれば、簡単です」



「うん、それもよく分かっているよ」

 と、最後に団長が何か独り言を言っていた。


 僕はそれを眺めながら、よくなったと分かった。本当はどうなるのか心配だったが、特にそう思う必要もないようだった。




 頭を横に向けると、僕は笑みを浮かべた。

 

 扉の隙間から眺めていた、彼の部下に。


 すると、一斉に人々が去って行くのが足音で聞こえた。

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