第一騎士団長との交渉
第112話「王立魔法学園の先生」の冒頭を編集しました。
僕が第三騎士団の建物に帰ると、受付嬢のミーシャが不安そうな顔をして来た。僕は彼女が何かを言うより先に、近付いて聞いて見た。
「どうしたの、ミーシャ?」
一度下を向いたミーシャが顔を上げた。
「レイ、実は第一騎士団の方が魔法玉を沢山取りに来るの。駄目と言われていないからいいけど、明らかに大量に得たい様子だった」
なるほど、と僕は思った。やっぱり、国防に一番関わる第一騎士団長はまだ諦める事は出来ないのだろう。だから、団員に取りに行かせていた。ただ、その姿が目立ったと言う事だった。
なら、どうしようか、と僕は頭を悩ませた。何も取るのが悪い訳ではない。ただ本当に必要としている人も使えるようにして欲しいと思った。だから、そこまでするなら僕が直接渡そうと思っていた。
大きなオーラを背後に感じると思ったら、レイリーが怒り顔だった。彼は僕が作った魔導具を、無断で大量に持ち去る人の事を許せないようだった。それは今にも爪を噛んで、ぶつぶつ文句を言いそうだった。が、流石の護衛騎士だけあってそれを抑えていた。ただ、危うい状況なのは見て分かった。
周りを見てみると、誰もが唖然としていた。
「ん?」
と、視線を感じたレイリーはふと、顔を上げた。
そして、沢山の人から見られている事を知った。自分がどのような態度でいたかも。そのため、恥ずかしそうに顔を下げていた。が、僕らはそれに笑う事はなかった。ただ暖かく見守っていた。少し硬そうな護衛騎士も、本当に仲間入りをいつの間にか果たせていたのだった。
僕はそれを見ながら、少しその場を去る事にした。今は早く第一騎士団の事に手を打つ必要があるようだった。
レイリーが後ろから後を追おうとしていたが、僕はそこにいてとお願いをした。第一騎士団ぐらいなら、一人で行けるのだった。
そして、僕はまた第一騎士団に足を運んだ。徒歩一分も掛からないほどの近距離にある。今回は、誰かに案内される事なく、自力で行った。やっぱり建物内は第三騎士団とさほど、違いはなかった。でも、あの騎士団長の雰囲気を出している飾りや置物があった。こう言う所に個性が出るのだった。その点第三騎士団はまだまだだった。
「どうかしましたか?」
と、受付の男性が僕に声を掛けた。
が、すぐに様子がおかしくなった。
「こ、これは第三騎士団長。申し訳ないです…団長とお会いしますか?」
と、僕のバッジを見たようだった。
僕は軽く頷いた。
すると、素早くその男性は騎士団長室まで案内してくれた。そこも見覚えのある場所だった。
僕がノックもせずに入ると、団長が動きを止めた。そして、すぐに僕と目を合わせた。
「レイ…」




