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頭を悩ませる人

「何でなのだ?」

 と、その男は机に項垂れた。


 幾ら頑張ってもそれが出来る様子さえない。黒い球の形をした、魔導具。ーー魔法玉と言われるもの。どこで作られたのか、男が知る事はなかった。ただ、魔力で作られているとは分かっていたが、それの真似をする事は出来なかった。これまで何度も、魔法玉を無駄にしていた。力を掛け過ぎると、その魔法玉が勝手に砕け散った。

 そんな魔導具など、これまでなかった。


 後少しで分かりそうなのに、何を出来ないのだった。


 男は非常に焦っていた。この依頼は上から何よりも急いでするよう指示されていた。だから、分かっていた。が、分かっていたとしてもすぐに解明出来る訳ではなかった。


「あ…どうしろと言うのだ。そんなの分かる訳ないだろ、こんなもの」

 と、男は頭を両手で掻いた。


 血が出そうになってもいいほど、もう男はストレスで押されていた。そもそも何で、自分がそんな事をしないといけないのか、さえ分からない。


 最初は面白い魔導具だと思っていたのに、実際は全然違っていた。何とも危ない爆弾を持って来れた気分だった。余りも濃厚な魔力が中に込められている。それは下手をしたら、爆発してもおかしくないものだった。が、爆発すると思っても、ただ砕け散る。これは、その壊れ方さえ最初から中に組み込まれていた。


 ここまで行える魔導具を作る人は誰なのか。男はそこだけが非常に気になった。それさえ分かれば、他の事は何でもいいと思えるほど。が、実際は何も出来ないで終わるパターンだった。




「どうだ、分かったか?」

 と、扉が開いた先にはロンレッド伯爵ディールク・ソングルボズが立っていた。


 体には、貴族の象徴とも言える高価な宝石が散らばっていた。


 男はいきなり立ち上がって、頭を下げた。

「いや、まだ何も分かりません。ただ力を込め過ぎると、壊れるとだけ判明しました。そして、中に爆発してもおかしくないほど、濃い魔力が込められています」

 と、まさか伯爵様が現れるとは予想していなかった。


 精々、上司辺りが来ると予想していた。


「そうか、分かった。ーーなるほどな、奴もやる」

 と、ディールクがその目を細めた。


 男は自分が睨まれたように感じた。背中から冷や汗が垂れたのを感じた。


 ディールクはその雰囲気から理解したようで笑顔を作った。

「何も気にするな、こちらの事だ。これからも頑張ってくれ」

 と、去って行った。



 男は去ったのを確認してから、顔を上げた。


 ロンレッド伯爵ディールク・ソングルボズは、男に言えば殺すとそう宣言していたのだった。ただ魔導具の研究がしたかった男は、心から戦慄した。そして、酷く絶望した。こんな事になるはずではなかった。

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