王立魔法学園の先生
少し内容を変更しました。
僕は王立魔法学園の入学式で、学園長が立っていた教壇に向かい、歩みを進めていた。沢山の人々の視線に晒され、僕はその中でアレスを見つけた。アレスは新入生の中にいた。一眼で分かるぐらい、そのオーラははっきりとしていた。ダンジョンで共に過ごした事もあり、僕は彼の事をちゃんと覚えていた。最近、第三騎士団に来た事もあったから。
教壇の一番上まで上げると、僕は小さく深呼吸をした。
そして、話し始めた。
何故、わざわざ母校、王立魔法学園に帰って来たのか。いや、あの短い期間では母校とも言えないが。
それは、少し前に戻る事で説明出来る。
魔法玉騒ぎから一日後、僕らがじっとしているとミーシャが大部屋にやって来た。その手には、依頼と思われる手紙を持ちながら。
「新たな依頼が来ました。王立魔法学園の先生役を、騎士団長に頼みたいらしいです」
と、手紙を読み始めた。
騎士団長の言葉に僕ははっと頭を上げた。わざわざ僕を指名するとは、よほど学園は暇なのか。それとも、魔法師もエリートとも言える第三騎士団だから、なのだろうか。あの時は散々無能扱いして、今となってはいい顔をする。
これが大人と言うものだった。僕は学園長の顔を思い出した。思い出すだけど、吐きそうになる。また使える部分だけを貰いたがる顔が見えていた。
が、予定していた土日より早く二人に会えるのなら、それでいい気がした。
「ーー分かった」
と、僕は一気に立ち上がった。
僕が行くとは思っていないようで、他の団員が少々唖然としていた。僕はそれを見ながら、素早く指示を出した。
「セイス。今日は特にやる事がないかもしれない。が、出来れば周辺の魔物狩りを行い、魔剣を扱えるようにしてくれ」
最近は魔物が所々で発生している事もあり、僕は警戒を緩めて欲しくなかった。それにあの魔剣を習得出来れば。きっと今後役に立つ。
「はい、了解です」
と、セイスは頷いた。
僕が出て行こうとすると、レイリーが付いて来るのが感じ取れた。僕はすぐに後ろを振り向いた。
レイリーは申し訳なさそうにこちらを見ていた。
「あの、団長。一応、護衛騎士は体面としても大切です。強いと言うのは理解しています」
と、何とか連れて行って欲しいようだった。
それがレイリーの仕事であったから、僕は頷いた。
「分かった。でも、暇だと思うけど?」
「それでもいいです。ご一緒出来るのなら」
「どうぞ、一緒に」
と、僕が答えるとレイリーが嬉しそうな顔をしていた。
僕がレイリーと一緒に出て行こうとすると、今度は黒い物体が肩に飛び乗って来た。
「ーー黒猫」
最近は受付をミーシャと行なっていたが、今は何か付いて行きたいようだった。最初は一人で行こうとしていたのに、色々変わるものだと理解した。
僕は黒猫の頭を軽く撫でた。
「よし、今度こそ行こう」
そうして、僕はレイリーと黒猫と王立魔法学園に出発した。と、言ってもアレスがすぐに来れるほど、距離は近い。だから、何も荷物はいらないのだった。




