第一騎士団長との会談
僕は丁度、第三騎士団の訓練場を建物から見下ろしていた。地上では子供達が楽しそうに魔法で遊んでいた。それもまだ魔法が完全には開花していなかった子供達が、今は魔法で遊べるようになっていた。僕が作った魔法玉で習得した、初級魔法で遊び合っていた。黒色の身体強化を選んだ子は、走る速度が早くなった事に驚いていた。が、まだ魔法を知る第一段階であるので、長時間走り続ける事は出来ない。それでも、画期的なものではあるのだった。
僕の隣に立っていた男性が口を開いた。
「何とも素晴らしい魔導具だな、レイ。いや、魔導具でもないかもしれないな…あれは。そうだろう、宮廷魔法師レインフォード・ウィズアード第三騎士団長」
ーー第一騎士団長。
数日前に会ったばかりだったが、僕らが楽しんでいる様子を見てすぐさま駆け付けたようだった。本当に知らない内に、情報網が敷かれてしまっている気がした。特に隠す事はないとしても。
団長が顔をこちらに向けて来た。
「だが、まさかレイが第三騎士団長で宮廷魔法師、とは。ジークがあそこまで驚いていた時の顔の理由が、ようやく分かった。でも、同じ階級とは知らなかったな。いや、俺よりも偉いのじゃないか?」
と、笑みを浮かべていた。
僕も団長と同じで、ある意味。いや、書類上は第三騎士団長として通っているだから、二人の間に差はない。国民が持つイメージ的には最初に設立された、第一騎士団長が他の団長より権力があるように見えるだろう。僕はその大人のややこしい裏の世界である、権力などは気にしなかった。が、団長でありながら宮廷魔法師であると、僕の立場はぐんと偉くなってしまう。
僕のバッジを見た時に団長が頭を下げそうになったので、僕は急いで止めた。そして、敬語で呼ばれるのも慣れないから止めてもらった。
「どうでしょうね…本当に偉いとしても、何の力にもなれない人はただの役立たずです。僕はそのような人にはなりたくないと思います」
「だから、あれを作ったのか?」
と、団長が窓の下をまた目で見ていた。
僕は頭を横に振った。
「あれはただの子供の遊び用です。誰でもいつかは習得出来るものを、少し早めただけに過ぎません」
と、僕にはその技術は至って簡単に思えた。
「そこもレイらしいな。普通の人なら思ってすぐに出来る凄技は出来ない」
「そうですか?」
と、僕は頭を少し横に傾けた。
そして、片手で作った新たな魔法玉を団長に手渡した。彼は嬉しそうに受け取っていた。心はまだ子供のようだった。
「おぉ…これが魔法玉か。軽量で持ち運びもいい。だが、こちらの方面ではまだ使いたくはないのだな」
と、団長は最後残念ような声をしていた。
こちらとは、第一騎士団の方。つまり、軍事。更に広げれば、戦争の方の事だった。
「はい。何故なら、強過ぎる力は破滅しか呼ばないからです。今の人類は、魔物との戦いが忙しい。なら、それ以外の事は考えない方がいい。更に状況が悪化しても、僕は責任が取れないからです。ですが、これで出来る事はあります。それは冒険者に与え、更に生きる力を身に付ける事です」
団長は渋々納得したようで、頷いてくれた。
「そうか、分かった。レイの考えはあっていると思う。それにもう兵士や騎士団員はちゃんとした魔法を教わっている。まだ教わっていない子供達辺りから、魔法を使えれるようにすればそれはやがて、大切な力となる。君との協力を得たい思いもあるから、賛成するよ」
「ありがとうございます」
と、僕は頭を下げた。
「いやいや、これは何でもない……それよりも宮廷魔法師でもある方が、気軽に頭を下げるのはよくないよ」
と、団長は鋭い目を向けて来た。
怖そうではあるが、その目には優しさも混じっていた。
「はい、気を付けます。ですが、これが僕らしい生き方でもあるので、今は難しいです」
「なら、仕方ないな」
と、団長は再度笑みを浮かべた。




