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騎士団長室

 僕が騎士団長室に入ると、そこは王立魔法学園で使っていた自分の寮と同じようだった。ただ新しい家具が置かれ、余り生活感はない。第三騎士団は以前から作る計画があったようで、この建物も作られてからさほど時間が立っていなかった。ここの部屋も改修するかどうか、聞かれたけど誰もまだ使っていないのならそのままでいいと思った。無駄な所にお金を掛けたりするのは、必要ないと思った。

 屋敷が十分、豪華過ぎるからこれぐらい質素な方がよかった。いや、今の状況でも僕からすれば、十分贅沢に感じ取れた。


 置かれている机や椅子からして、一流のものであった。ただそれを全面的に出さないように、してくれていた。他がどうかは分からないけど、僕にはそれでよかった。


 指定されている大きな椅子に腰を下ろしてから、僕は部屋の反対側を見た。先程から不動の状態で立ち続けている人がいた。それも一人だけ剣を腰から吊るし、騎士の格好をしている。ーー護衛騎士のレイリー。


「レイリー。いつまで立っているつもりなのだ? そんな所にいたら、こっちが落ち着かない」

 と、僕は騎士団長室にいる事もあり、勝手に口調が硬くなっていた。


 これは雰囲気が出ていると言うべきだった。が、レイリーは何も気にしていないようだった。あたかもそれが本来あるべき姿である、と言うほどだった。


「いや、お構いなく。ご指示があれば、いつでもどうぞ。どこにでも、付いて行きます。たとえ、それが戦場だろうと」


 いやいや、何最初から戦場に行く事を前提としている。僕はそんなに戦い好きではない。ただ守りたい人がいるなら、戦うだけである。そして、何故そこまで付いて行こうとする。僕がこの役職から降りたら何者でもなくなるのに。

 これは明らかに宮廷魔法師である、第三騎士団長の僕への忠誠だった。ただのレイへの思いではない、とそれはよく感じ取れた。


「それは分かるけど、困るから。わざわざ隣に座って、と命令するのも嫌だ」

 と、僕はレイリーに近くのソファーを指差した。


 それはソファーと言うより、ただ僕の机の前に応接室のようにソファーと机が並んでいるだけだった。


 レイリーは困った顔をした後に頷いてくれた。

「分かりました。ですが、この部屋から出たりはしません」

 と、すぐに近くのソファーに腰掛けた。


「はいはい、それは分かっています。僕が何かをするのを見てもいいよ。何も面白くないと思うけど…」


「いや、それは違います。私は奇跡とも言える場面を目の当たりに出来ると言う事です。それは選ばれた者しか見る事が出来ません」

 と、何か熱く語り出した。


 僕は笑いそうなのを抑えて、極めて冷静に返答した。

「そんなに凄くないよ。誰でも出来る。それに、これから何回も見ると思うから、奇跡とも言えなくなると思うよ」


「ですが、それでもいいです」

 と、レイリーは即答した。


 ぶつぶつ、これから何でも奇跡を見る事が出来るのだ、と言いながら。


 案外、レイリーは気さくな人だった。一見、怖そうに見えていたけど。

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