他の面々の反応
第三騎士団の建物に帰ると、受付嬢のミーシャが急いで立ち上がり敬礼した。
「おはようございます、騎士団長」
と、顔を確認するより先にバッジに目が行ったようだった。
流石、優秀な第三騎士団の受付嬢だが、そのように反応されたら、こちらが少し困る。
「あぁ…ただいま。ミーシャ…」
と、僕は戸惑いながら返事をした。
ミーシャがはっと顔を上げた。
「レイ? え? が、第三騎士団長で宮廷魔法師なの、ですか?」
僕とセイス副団長が力なく頷いた。すると、それが事実だとよく理解したようだった。
「そ、そうですか…これまで申し訳ありません。騎士団長。ずっと少年兵だとばかり、思っていました」
と、ミーシャが頭を下げた。
何か今日は頭を下げられる回数が多いのだった。騎士団長と宮廷魔法師の立場はここまで強烈なのだった。
「いや、いいよ。僕の方が隠していただけだから、誰も悪くない。それに普段通りにしてくれる方が落ち着くかな、出来ればだけど…」
「はいっ。了解しました。全てお任せを」
と、ミーシャが綺麗な敬礼のまま、笑顔を作った。
僕はこのような笑顔が好きだった。だから、恐れられて誰にも話されないのは嫌だった。それなら、その仕事を蹴る方が良かった。まだ出来る事は多々あったからだった。
奥の方から声がした。
「だ、団長。第三騎士団長っ。お待ちしていました。まさか、少年兵として入っていたなど、考えにも及びませんでした。護衛棋士として、申し訳ないです…」
と、そこに僕の護衛騎士である、レイリー・エンダーソンが立っていた。
その目から涙が今にも出そうだった。突然の事を僕はなおさら、ギョッとした。
レイリーは気が可笑しくなったのか、腰から剣を抜いて剣先を自分の喉に突き付けようとした。このままでは死ぬべきです。護衛騎士失格です、と言いながら。
僕は護衛騎士さえ問題がある人だとは思わなかった。いきなり魔力を体に纏わせて、飛び出すとその剣先を手で押さえた。
「止めろっ」
当然手にも魔力を纏わせていたので、怪我はしなかった。
「騎士団長。ウィズアード騎士団長。そのように体を痛める必要はありません」
と、自分の事をレイリーは気にしないようだった。
「僕より先に死ぬ事は許さないよ、レイリー。それが護衛騎士としての仕事だ。後は何をしてもいい。だが、出来ればただのレイの方が慣れている」
「はっ。このレイリー・エンダーソン。了解しました」
と、レイリーが跪いた。
「いや、そこまでしなくていい」
と、僕は慌てて止めた。




