魔剣と魔法 2
僕は彼らが剣を抜いたのを見て、準備が終わったと理解した。これを他の誰かが見ていると、団長が団員から指示を聞かれていない上に、反逆しようとしているようにしか見えないだろう。だが、僕にはそうは見えなかった。彼らは真剣に僕の事をじっと見つめていた。そこに殺意などの邪心は含まれていない。ただ訓練に励もうとする、その心一つだった。
何で、アレスも参加するのかは疑問が残ったけど。
「…アレスも参加するの?」
と、僕は聞いた。
アレスは剣を大いに振り回しながら、答えた。
「そうだよ、レイ。楽しみは僕も味わいたいから」
「なら、いいよ。では、始めようか」
僕は瞬時に発動したままだった、影猫を消した。訓練場にいた黒い影達が一斉に姿を消した。そして、訓練場に大きな黒鴉を発生させた。ジークの火の鳥を真似たが、これは明らかに危なそうな黒色のオーラを出していた。このエフェクトだけで、魔力を沢山吸うとは本当に邪悪な魔法である。ただ魔力が自分には底がない事に心から、今は喜んだ。
「げっ…見た目からして、怖そうじゃないか」
と、ゴーシュが呟くのが聞こえた。
僕に近付いて来たアレスが、耳打ちした。
「あれって、ジークのを真似ているよね」
「あぁ…そうだ。こう言う時には一番イメージが強そうだったから」
僕は名付けるのなら、火の鳥ではなく、闇の鳥にでもなりそうだった。戦場で相手を恐怖に陥れるには最適な魔法だった。が、それ以外では遊びにしか使えなさそうだった。だから、ジークも決闘の最後に飾るために使っていたのだろう。今はもう対して使っていないけど。何とも燃費が悪くて、恥ずかしい限りの魔法である。
僕は黒鴉の前に立って、彼らに言った。
「皆でその剣でこの魔法を壊してくれ。これはまずは攻撃しないので、早めの内に倒す事をお勧めする」
「「と、言う事は壊れると言う訳だな!?」」
と、アイガンとゴーシュが見事に同じ事を言った。
二人は顔を合わせて、今後は別の事を叫んでいた。
「「何でお前が同じ事を言うのだ?」」
「お前が真似ているのだろうっ」
と、ゴーシュがアイガンに叫んだ。
「いや、お前がだ」
と、アイガンがゴーシュの耳元で叫んでいた。
「はいはい、うるさいよ。死にたくなければ、黙ろうか」
と、僕は二人の間に向かって魔法を放った。
氷の槍は、二人の間を高速で通り過ぎ、近くの壁に嵌った。二人はそれを頭をゆっくり動かして見た。そして、何が起きるかよく理解したようだった。
「「…分かりました。すみません」」
と、二人が一緒に頭を下げた。
「レイは優しくしているのか、相手を怖がらせているのか分からないよ」
と、またアレスが呟いていた。
僕は聞いていない聞いていないと、軽い口笛を吹く真似をした。
どうせ、死んでも本当に死ぬ事はないのだから。
そう考えていると、アレスが鋭く睨むのが見えた。本当に彼はよく分かっている。僕以上に、非常に知っている。




