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魔剣と魔法

 僕はアレスに振り向いた。

「アレスは何のためにやって来たの? わざわざ喧嘩を吹っ掛けて来たけど…それだけのために来たの?」


「うーん。でも、そう聞かれたらそうとしか返事が出来ないかな…だけど、レイを殺すつもりはなかったよ。どの道、殺せないと思うし」

 と、アレスは意外とぐさぐさ痛い事を言って来た。


 が、その顔は心の底からケロッとしていて逆にこちらが、引くほどだった。今日のアレスはいつになく、少し可笑しかった。が、頭のネジが外れているようでもなかった。それが実際のアレスである事を僕自身が最初から知っているようだった。


 奥で誰かが流石、第一騎士団長を倒した少年だ。言う事が怖いと呟くのが聞こえた。同意はするが、本人に聞かれたら今度は本気でやられるかもしれないのだった。


「結構痛い事を言うね…ジークに言われて来たの? 土日に会いに行った、かもしれないのに」


「かもでしょ。ジークにも言われたけど、本当は行きたいから行っただけだよ。暴露する事になったけど、レイの方は大丈夫なの? 絶対僕のせいだよね…」


「いや、いいよ。最初から本格的に演技をしていた訳ではないから、どの道…いつかはばれるのだった。何も気にしなくていいよ。でも、そこまで言ってくれるのなら一つ頼みたいかな」


 その言葉にアレスが大きな目でこちらを見て来た。彼は雑用に使われる事に幸福感は特に感じていないはずだった。が、人は時間と共に変わるのだった。僕はそう考えて、自分を勝手に納得させた。半分、無理矢理そうしている気もしたが。


「いいよ。何をしたらいい? 邪魔者を倒すのなら、一番楽だけど?」

 と、笑顔で本当に白の剣を抜こうよしていた。


 アレスはまだ戦闘モードが切れていないようだった。やばいやばいと僕は彼を急いで止めさせた。


「違うっ。そう言う訳ではない。アレスの方が僕より()()()()()魔法が使えるから、彼らにあれを教えて欲しい。剣もあるから」

 と、僕は直接は言わなかった。


 が、アレスは納得したように頷いた。

「いいよ」


 僕がアレスとジークに教えたのは剣を使う魔力の練り方と、ダンジョンでの実戦魔法だった。なので、剣と言えば彼はどちらの事かよく分かってくれた。

 結構面倒な仕事だと思うが、アレスは笑顔で引き受けてくれた。本当に僕を心から理解してくれる、友達にアレスはなっていた。ちゃんと、ジークの事も入れる。忘れた訳ではなかった。少し印象が薄れ出してはいたけど、本人には到底言えない。それに、言わない。どのような爆弾を落とされるかが分からないから。


 僕はアレスが剣に魔力を乗せる方法を教えるのを、見ながら少し息を整えていた。決して緊張していた訳ではないが、流石に真正面から不意打ちで攻撃されるのは、少し久しぶりだった。僕は背伸びをしながら、体の調子を整えた。眠くならないのは、こう言う事を慣れているからだった。


 アレスの代わりに教える事も出来るけど、ジークを教えた事から考えるとアレスの方が最適だった。ジークも呼べたが、ジークはジークで僕の正体が一番ばれそうだった。そして、少し気難しい性格を理解出来る人は少ないと思った。今回のアレスが行った事は、予想していなかったけど、誰も未来は分からないものである、と僕はもう考えない事にした。考えると恥ずかしくなりそうだったから。




 少しすると団員は多少、魔力の乗せ方を習得したようだった。流石、第三騎士団に所属するだけ覚えるのは早かった。アレスやジークらとどちらが早いかは、分からないけど。どちらであれ、習得出来た事が何よりも重要だった。

 僕は集まった彼らに近付くと、自分は剣を持たなかった。そのまま中央に立ち、少しだけ団長らしくした。


「今から魔法で面白いゲームをする。その名も、魔剣と魔法。僕以外は、その魔力を乗せた剣、魔剣とも呼ぼうか…その魔剣で戦う。そして、僕は魔法を放つ。これはその魔剣の使い方を学ぶためのゲーム。これから魔物と戦う上では、大切な事だから」


「レイの魔法とは、あのブラック・ライオキャットを倒していたのか? あれが何かは分からないが…」

 と、セイスが呟いた。


「そう。それがレイの力。不思議で新たな世界を知る事が出来るから、面白いよ」

 と、アレスが答えた。


 本当にここまで答えれるのは、少々異常とも言えた。が、仲が良くなっている様子だとよく分かった。


「そうか…なら、楽しみだ。これなら、自分にも出来る事があるかもしれない」

 と、セイスは本当に嬉しそうにしていた。


 これまで上級魔法を一回した放てずにいたセイスからすれば、大きな成果となるだろう。僕はこの技術を伝える事は、悪くないと思った。力は正しく使えば、誰にも役に立つ。だが、ここで気を付ける必要がある。強過ぎる力は、人を飲み込んでしまうのだった。

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