アレスとの戦い
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アレスは真正面からでは、僕と勝負にならないと理解したようで隙を突くように何とか背後に回ろうとしていた。僕はそれを感じながら、わざと背後を一瞬だけ開けた。すると、彼はそれをいい事に何とも綺麗な攻撃を放った。が、当然それはダンジョンで得た何でも切れると言える、白の剣。友達にさえ一切容赦しない様子は、本当に怖い。これがただの模擬戦で、敵対していない事に僕は心から感謝した。
アレスが放った剣での攻撃は、僕に実は当たっていたのだった。が、痛みも何も感じる前に自動的に傷が消えるのだった。無意識に漂う僕の魔力が、全ての攻撃を無効にしていた。なので、本来ならただ立っているだけで勝敗は着くのだった。が、僕自身がそれは嫌だった。真剣で戦ってくる相手には、同じように戦うのが基本である。
「チッ」
と、アレスが舌打ちをした。
それをするとは思わなかったが、ジークといる事で性格が悪くなったようだった。が、当のジークもそこまではしないのだった。相当、勝てない事にストレスを感じているようだった。それか何かに焦っているようだった。時間が経つごとに、アレスは疲労して勝利から離れるから、とも言えた。
白の剣は僕の体に当たった後、跳ね返るようにアレスの手を一瞬跳ねられた。アレスは大きな隙を作った事で負けた事を悟った顔をしていた。が、僕から何も放たれない事にこちらを見た。
「何で最後まで戦わないの? 僕との勝負は出来ないと言うの、レイ?」
と、その目は何とも真剣だった。
僕は剣を収納魔法に直して、アレスに答えた。
「アレスは先程、僕に攻撃を放った。それが実戦なら僕が死んでいた。だから、この勝負はアレスの勝ちになったと言う事」
そう言うとアレスは嬉しそうな顔をしていた。ここまで真剣に戦う事になるとは思ってもいなかったが、彼の顔を見てそれでいいのだろう、と僕は頷いた。アレスは今度はもう戦う必要がないと知ったようで、白の剣を腰から吊るした。サイズはダンジョンで見つけた時のように、掌サイズまで戻っていた。
「どう、レイ? 以前よりかは上達していた? ジークと共に頑張って戦ったのだよ」
と、初めてのドヤ顔をして来た。
それは黒猫と同じようとも言えるものだった。
僕は頷いた。本当なら黒猫を触る時のように、頭を撫でたくなった。が、同じ年の子に流石にそれは引けた。
「うん、成長したね。だけど、真剣でいきなり戦いを挑むのは止めようかな…僕はいいとしても周りの人が怪我をしたらどうするのだ」
と、僕はアレスに周りを見るように言った。
視界を広げたアレスは、目を大きくさせた。
「ーー猫だ。可愛い…これもレイが作ったものだよね」
と、笑顔で見て来た。
「うん。それも一つだが、僕はそれを言いたい訳ではなかったのだよ。他にも人がいるだろう?」
アレスは更に視野を上に広げた。そして、第三騎士団の団員がいる事を知った。本当に戦いになれば、何も見えてないのがアレスなのだった。僕はそれを思い知った。
「あっ…済みません。王立魔法学園のアレス・フェッツです。レイの元同級生です。先程はお騒がせしました」
と、戦い後のハイテンションでアレスはいつものあがり症を、克服する事が出来ていた。
「第一騎士団を倒した人?」
と、ザリファーが何とも好奇心旺盛な目で見ていた。
「あー。そうですね。あれはたまたまですけど」
と、アレスは硬い笑顔で答えた。
「元同級生と言う事はレイが、元々は王立魔法学園の学生と言う事かな?」
と、いい事に気付いたセイスが呟いた。
「そうです。最近、早期卒業してしまいましたけど…」
と、アレスが僕を見ながら返事をした。
「と、言う事はレイが団長と言う事か!?」
と、最後にゴーシュが大きく叫んだ。
僕は恥ずかしそうな顔をしながら、頷いた。
「一応そうです……改めまして、よろしくお願いします。レイこと、レインフォード・ウィズアードです。宮廷魔法師として、第三騎士団を率いる事になりました」
と、お辞儀をした。
僕が頭を上げると、彼らはまだ驚きを隠せない様子だった。
近くでアレスが呟くのが聞こえた。
「こう言う事になるから、隠すのはよくないのだよ…」
僕もそれには心から同意した。
後は彼らがどう思ってくれているか、だった。




