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村での生活 その9

 その日の真夜中。全員が寝たことを確認すると家の外に出て男の家に向かった。前世と違いこの世界には電気が存在しないので月明かりだけを頼りだ。

 暫く歩くと昼間に一度訪れた建物が見えてきた。パッと見たかぎり明かりはついていないので多分寝ているだろう。念の為、魔力を視えるようにして中にいる人が動いていないか確認する。

 横たわっている人を見つけた。一定のリズムで胸のあたりが上下しているということは眠ってから結構な時間が経っているのだろう。これなら忍び込んでも問題はない。

 俺はドアの前に来ると静かにドアを引いて開けた。


 「失礼します……」


 小声で呟きながら家の中に入る。中は片付けられていないようでいろいろな物が散乱している。かろうじて足の踏み場は何とかあったので散らばっているものを踏まないように慎重に家の奥に行く。


 「意外に広いな……さて、何かあの少年がいた痕跡でもあれば良いんだが」


 常夜灯程どの明かりを魔法で作り出し、廊下を歩きながら左右にいくつかあるドアを開いては中を確認する。だが、そういったものは何も見つからず、ただただ片付けのされていない部屋を何個も見ることになった。

 こうなるとグライジンが言っていたことが間違っているのか?まあ、あの人もいい歳だし物忘れや勘違いもあるだろうし。

 最後の部屋に入るとやはり汚く、何度も似たような部屋を見ていたせいでそもそも中に入る気も失せていた。だが、入って何か証拠的なものがあるかもしれないから一応確認する。


 「やっぱりここにも何もないか……」


 そう思いながら何か設計図のようなものが描かれた紙が散乱しているテーブルの上を漁る。何もない。棚の上や引き出しの中も探す。いくつかの引き出しには書類のような物が入っていたので全部に目を通したが今の俺には関係のないものばかりだった。

 一応、全ての部屋を隈なく見てきたつもりだが今のところ俺が欲しているものは何も見つかってない。

 やはりどこにもないのかと思いながら最後の棚の引き出しを開けると大量の書類が敷き積まれていた。

 また全てに目を通すのか……と思いながら一度書類を引き出しから全て引っ張り出す。

 改めて全てを見ると今まで以上の紙の量だ。今日の夜だけじゃ全部は見れそうにない。またここに来るか?いや、何度もここに忍び込むのは危険か。となるとこの紙を持っていくしかないな。

 ただ、それだと別の問題が出てくる。この書類が全部無くなった時に男が気づくかもしれないということだ。いや別に気づかれても問題は何もないか。俺が疑われることは絶対にないしな。よしそうしよう。

 ひとまずここで4分の1くらいに目を通したが有益な情報はなかった。

 そろそろ家に戻ろうと思い、確認したものは元の棚に戻して俺は近くにあった窓を開けると見きれなかった書類を両手で抱えて持ち上げそこから外へ出ていく。

 窓を閉めると俺は自分の部屋に転移する。

 紙の束をベッドの下の奥の方へ隠す。さらに万が一ベッドの下を覗かれてもいいように紙の束に『透明化(インビジブル)』を使い、目視できないようにする。


 「これで大丈夫だろう」


 俺はそのままベッドに潜り、眠りについた。


 それから数日間の夜中、全員が眠ったことを確認すると少しづつ持ってきた紙に目を通していた。

 だが何も見つかることなく最後の十数枚になってしまった。

 俺は半分諦めながら紙に目を通していくと半分くらいのところの紙にようやくそれらしきものを見つけた。


 「これは……奴隷商との契約書か」


 よく読んでみると紙にはイクスの子供を高額で買い取るというものだった。金額にしても一般人なら一生遊んで暮らせるぐらいの金額だろう。しかしこの家にそんな大金があるとも思えないし、この村は外界との接触がほとんどないから金なんて持ってても仕方ないと思うけど。

 だが今はそんなことを考える必要はない。この契約書は俺が勝手に預からさせてもらおう。髪を四つ折りにするとひとまずズボンのポケットにしまう。

 残りのどうでもいい紙はまだ暫くは夜が続くので今のうちに戻しにいくことにした。


 「それじゃあ、『転移』」


 魔法陣を展開して詠唱し、転移する。転移先はあの男の家のこの間出て行った窓の前だ。

 紙の束を一度地面に置いて窓を開けると紙の束を抱えて中に忍び込む。

 中に入るとこの前来た時よりも更に散らかっていた。棚の引き出しは開きっぱなしになってるし。床に落ちてる紙の量も増えていた。

 もしかしなくてもこの契約書を探している感じかな。まあいいや、この必要のない紙だけ置いていこう。

 両手に抱えた紙を開けっ放しの引き出しの中に静かに戻して俺は部屋を後にする。

 家の外に出た後に興味本位で魔力で家の中を探ってみると男が1人引き出しの中身をひっくり返して何かを探しているのが視えた。そのあと頭を強く掻きむしっていた。


 「怖っ」


 独り言を呟いて俺は転移して自分の部屋にもどった。



 目的を果たし自分の部屋に戻ってきた俺はベッドに仰向けに倒れ、ポケットから契約書を取り出す。


 「これどうしよう……?」


 俺は改めて手元にあるこの紙を眺めた。

 そもそもなんであの少年が闇オークションにいたのか知りたかっただけなんだが色々と探っているうちにこんなものまで手に入れてしまった。

 ゴースファータに渡してみるか、それともあの男を揺すってみるか。それとも他の手を探すか。まあ、ひとまず明日あの男の家に行ってみて顔色を伺ってみるか。

 紙を折ってポケットに仕舞い、そのまま眠りについた。

今回で39話目投稿になります。作者の霊璽です。

色々あってだいぶ更新が遅くなりました。

自分でも次どういう展開にするのか曖昧な状態になってるのでどうなることやら…

それに新しく小説を始めたのでこっちの更新がかなり遅くなりますね。

読者の皆様には迷惑をおかけします。

長くなしましたが更新する気はあるのです!

それではまた次回の話で……

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