津波
『あれ…?』
目印の自分の家の赤いポストは倒れて、家は崩壊していた。
ガレキを手でどかしながら、お母さんを探した。
『お母さん!!お母さん!!』
なんで、あのとき喧嘩したんだろう。最後の会話が喧嘩なんて嫌だ。
手はもう血だらけだった。痛いのを堪えてお母さんの名前を必死に呼びながらガレキをどかした。
『お嬢ちゃん!もうすぐ、津波がくる!早く避難所に避難してください!』
周りの大人が荷物をまとめて走り出した。
(津波…)
海が自分たちを飲み込みにくる。
(お母さん…ごめんなさい…)
涙が溢れる。
望美は走って、学校の避難所に避難した。
避難所に着くと、老若男女関係なく場所取りが行われていた。
(ここでいいかな。)
とりあえず、1人分寝れる場所を確保した。
避難所である自分が通っている中学の体育館で、内装はよくわかっている。
(なんでこんなことになったんだろう…)
体育館の隅っこで体育座りをして、顔を埋めた。
『みなさん!!津波が押し寄せて来ました!屋上に避難所してください!!』
学校の先生が大きな声で住人に呼びかけをした。
人達は立ち上がって、走り出した。
(ああ、もう怖い…)
子供は大泣き、望美も泣きそうだった。
望美は、屋上に着いて頭が真っ白になった。
海は静かで、キラキラしてて、青い。そんなものだったはず。だが今視界に映っている海は真逆だった。
津波は、汚い色に濁って、勢いよくこちらに向かってきている。昨日まで静かで綺麗だったのに。
『ママァ…海がこっちに来てるよ?お家は?ねえ、ママ』
となりで小学1年生くらいの女の子がお母さんに難しい問いをしていた。
『今日からね、ここの体育館で暮らすんだよ?お家は少しの間お休みしてるの。』
母親と見られる女性は、悲しそうに笑った。
(小さい子は、なにがなんだかわからないままここに来てるんだよね。大人に嘘をつかれて、その嘘を信じて、必死に今日を生きるんだよね。)
そんなの事を考えると、自分より小さい子のほうが怖い思いをしている。
『あーあ…私の大好きな街が…』
生まれた頃からずっとこの街にいる。都会とは少し離れた静かな街。望美の大好きな街が汚い色に染まっていく。
自然と涙が出て望美の頬を伝った。




