揺れ
コトンっコトンっ
お気に入りの靴を鳴らして、真夏の歩道を進む。
『久しぶりだなぁ』
ショッピングモールの扉が開いた瞬間、涼しい風が望美の体に当たる。
そのまま、雑貨屋に向かった。
可愛い白の小物入れ、黒リボンの髪留め、小さい子が好きそうなカチューシャ。
(ここのお店は女の子の気持ち分かってるな…)
『可愛い…』
通り過ぎようとした、ハンカチのコーナーにあるリボン柄のハンカチが望美の目に止まった。
値段も中学生に優しかった。
『ありがとうございましたー』
お店を出ようとした。
リンリン♪リンリン♪
望美の携帯が鳴った。
『もしもし?望美?』
電話相手はお母さんだった。
『うん…』
『学校の宿題は終わったの?あと、ピアノの譜読み…あーあと、塾から課題出てたんでしょ?結構量あったよね?終わったから出かけてるんでしょ?』
(毎回毎日うるさいなぁ……)
『望美?黙ってないで返事しなさい!』
『あーもううるさいなぁ!!宿題は終わったし、課題はすぐ終わるし、ピアノはもういいから!!もう電話しないで!!』
望美は電話を切った。
周りの視線なんて気にしない。イライラが収まらなかった。
もう、親なんていらない。早く一人暮らししたい。
その時だった
『わぁっ!!』
床が揺れだして、体が投げ出される。
ベビーカーに乗った赤ん坊や幼稚園児も泣き始める。
大人達は慌てている。天井の蛍光灯が勢いよく揺れ出す。
バリンっ!ガシャン!
何かが落ちていろんな人が悲鳴を上げている。
その光景は地獄絵図だった。
崩れるショッピングモールに警報が鳴り響いている。
怖くなってしゃがんで頭を抑える。頭の中は真っ白で心拍数が上がる。
揺れが収まって、当たりを見回した。
そこはもうショッピングモールとは言えない、別世界のようだった。
さっきまで入っていたお店の棚は全て倒れて、天井の蛍光灯は落ちてガラスが飛び散っている。
怖さのあまり気がつかなかったが、天井が剥がれ落ちたり、ガレキが落ちている。
『急いで避難してください!!』
警察官の人が出口まで客を誘導している。
望美は立ち上がって、出口まで走った。
『うそっ………』
外に出ると、思いもよらない景色が望美を待っていた。
崩れる橋。その橋を走っていたのであろう車は海に沈んでいて救急車がうるさく走る。膝から大量の血を流しながら『お母さぁん…死なないでよぉ…お母さぁん』と大泣きながら親を探す子供。血だらけの大人が救急車で運ばれていく。ビルから煙と火が立ち込めていて、家はほとんど崩れている。地面もヒビが入っていて危ない状態だった。
『お母さん…!』
家にはお母さんだけがいる。
走って家に向かった。避難所とは違う方向に走って人を避けながら走った。
(家が崩れてるかも…そしたらお母さんが…!)
さっきは、いろいろ言ってしまったがお母さんは大切な家族。
『余震だ!しゃがんでください!!』
地面が揺れだして、余震がきた。
(怖いよ……どうしよう……)
友達は死んでないかな。お父さんは?妹の七海は?お父さんは会社にいて、七海は友達の家に行くと言っていた。
余震が収まるとまた望美は走り出した。




