第二十五話 勝利の裏に潜む影 Ⅳ
「ほいじゃ、次の一発芸いくで!!次の出番はうちとイヴっちの出番や!」
「頑張ろうね、シャランドラちゃん♪」
「うちとイヴっちの一発芸は物真似や!ただの物真似やないで。もしもこの二人がこんなんやったらっていう、設定物真似や!!」
四番手を務めるのは、司会進行シャランドラと狙撃手イヴ・ベルトーチカの二人であった。シャランドラが話したように、二人の芸は物真似である。帝国軍内で最も明るい二人の小悪魔が、後で絶対怒られるとわかっていながらも、禁断の設定物真似に挑む。
「あれ?なんか二人の恰好、レイナとクリスっぽくないか?」
ステージ上を見ていたリックが、二人がいつの間にか着替えていた衣装に気付く。イヴはクリスの恰好をして、シャランドラはレイナの恰好をしている。イヴとシャランドラの大きさに丁度合う、クリスとレイナの服装を身に纏う二人は、気合十分な様子であった。
「今日のために二人で衣装作ったの。ねっ、シャランドラちゃん♪」
「練習もばっちりやし、会場も大うけ必至やで!」
「準備はいいよね?それじゃあいっくよー♪♪」
会場の観客全員、二人の設定物真似が気になって仕方がない。レイナとクリスのコスプレまで用意した二人の気合の入れ方と、犬猿の仲でお馴染みなレイナとクリスを題材にするという勇敢さに、観客一同非常に興味が湧いているのである。
「「設定物真似いっきまーす♪♪もしも、レイナとクリスが喧嘩しながらもイチャイチャする恋人同士だったら!!」」
「「!?」」
衝撃の設定物真似のタイトルに、題材となっている二名が、丁度持っていた酒瓶をほぼ同時に地面に落とした。開いた口が塞がらなくなり、立ち尽くすレイナとクリス。しかし、イヴとシャランドラによる物真似は、そんな二人を無視して進行していく。
一旦深呼吸して気持ちを落ち着けたイヴとシャランドラ。そして次の瞬間、二人の身に纏う空気が変わる。この日のために練習した二人の役作りは、雰囲気まで似せようとしているのだ。
「おい槍女」
「なんや・・・・じゃなくて・・・・・・、なんだ、破廉恥剣士?」
「お前、僕が・・・・・・じゃなくて・・・・、俺が後で食おうと思ってたケーキ食ったろ?盗み食いすんじゃねぇ」
「城下の娘に貰っていたあのケーキの事か?食べて何が悪い」
「ああん!?後で食うの楽しみにしてたんだぞ。どうしてくれんだよ?」
「・・・・・・・あんなもの、楽しみにするな」
「あんなものってなんだ。てめぇ、なんでそんな不機嫌なんだよ!?」
「・・・・・・だって、あんな娘からの貰いものなど口にさせたくなかったから・・・・・」
「お前・・・・・、もしかして妬いてんのか?」
「ばっ、馬鹿を言うな!べっ、別に私は・・・・・・」
「可愛いじゃねぇか。そういう悪い子は・・・・・」
「こっ、こら!抱き付くな!」
「無断で俺のケーキを食った罰だ。お仕置きしてやる、唇出しな」
「やめろ!こんなところでキスなんて・・・・恥ずかしい・・・・・・」
「おいおい、この前寝た時はベッドで喘ぎまくってたじゃねぇか?今更なに恥ずかしがってんだよ」
「そんな事言われたって・・・・・」
雰囲気、言動、性格。どれもこれもがレイナとクリスのそれであった。クリス役のイヴと、レイナ役のシャランドラも、再現度は恐ろしく高かい。身長と顔と髪型と声が違う以外は、レイナとクリスそっくりに演じている。
二人の徹底的な役作りに感心しつつ、観客の多くは必死に笑いを堪えていた。内容があまりにもあり得ないものであるため、笑わずにはいられないのだ。しかし、笑うのは堪えなければならない。何故ならば、こんな内容の物真似を見せられている当の本人達に、後で殺される危険があるからだ。
「ほら、目逸らさずにこっち向けよ。キスできねぇだろうが」
「クリス・・・・私は・・・・・・」
「レイナ、俺はお前の事が-------」
「「ちょっと待てええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!」」
ただの物真似だとわかっていても、とうとう我慢できずに叫んでしまったレイナとクリス。イヴとシャランドラが役に入り過ぎて、本当にキスしてしまいそうだったのを、二人の叫びがギリギリ止める。
「俺がこの脳筋槍女に惚れるわけねぇだろ!!この馬鹿にキスするくらいなら死んだほうがましだ!!」
「私がこんな破廉恥な男を好きになるわけがない!!イヴ!シャランドラ!今日という今日は許さん!!」
大激怒しているレイナとクリスが、ステージ上のイヴとシャランドラに狙いを定め、一瞬で二人のもとに移動する、神速の武術を得意とする二人の速さが炸裂すれば、ステージの二人を逃がさないようにするのは造作もない。
一瞬でステージ上に移動して、イヴとシャランドラの左右に展開し、二人を逃がさないよう挟み撃ちにしたレイナとクリス。こういう時この二人は、打ち合わせなしで自然に息の合った連携を取れるのだ。
「やっぱり怒られちゃったね・・・・・。どうしよっか?」
「えっ!?逃げる段取りイヴっちの担当やったやんか!なんも考えてへんの!?」
「そのー・・・・・・、考えてはいたんだけどね・・・・、二人が本気出しちゃったから・・・・・」
「ああ・・・・・、一瞬で挟み撃ちにされてもうたからな・・・・」
目に怒りの炎が燃え上がっているレイナとクリスに、謝罪の言葉は最早通用しないだろう。イヴとシャランドラの失敗は、悪ノリが過ぎたという事だ・・・・・。
「覚悟はできたようだな?」
「槍女、お前は発明馬鹿をやれ。俺は女装男子をやる。てめぇら、今日は生きて帰れると思うなよ!」
「「ひっ、ひいいいいいいいいいいいいいーーーーーっ!!!」」
この後、問題児二人はレイナとクリスに捕まり、尻叩き百回の刑に処された。
とても恥ずかしく、やたらと痛い尻叩きに悲鳴を上げた二人の姿の方が、会場の観客に大うけであった。怒られるの前提で勇気ある物真似を本気で演じたにもかかわらず、尻叩きの方が会場に受けてしまったのだから、お仕置きを受けた二人にとっては皮肉な話である。
「あいたたたっ・・・・・・、まだお尻がヒリヒリするで・・・・・。さて、気を取り直して次言ってみよか!五番手はめっさ意外な女兵士の出番やで!!」
お仕置きが済み、司会進行に戻ったシャランドラが、次の一発芸へと進んでいく。五番手としてステージに上がったのは、帝国軍女性兵士セリーヌ・アングハルトであった。
「あのー・・・・、私は何をすれば?」
「何すればいいかやって?セリっちはそこに立っといてくれりゃええんや。そんじゃあ・・・・、そこの飲んだくれたおっさん!ちょっとこっち来てくれんか」
「ああ?俺を呼んだか?」
アングハルトの背中を押してステージ中央に立たせ、観客の中から出来上がり状態のヘルベルトを見つけ出し、彼をステージに呼び寄せたシャランドラ。何をするのかまったく知らされていない二人は、何もわからないままステージに呼ばれ、ステージ中央で立ち尽くす。
「これで準備は万端やな。これから見せるんはな、うちみたいな可愛い女の子が一人で旅に出た時に役に立つ技や。一発芸大会のこの場を借りてみんなに披露するで」
「おい、聞き間違いか?こいつ今、自分の事可愛いとかぬかしやがったぞ」
「おっさん黙っとき!発明眼鏡女子の可愛さはおっさんに理解できんのや、ぼけ!!」
五番手の一発芸の内容は、司会進行役であるシャランドラの頭の中にしかない。アングハルトとヘルベルトを組み合わせ、一体どんな芸を見せようとしているのか?観客一同興味津々である。
「ほないくで!・・・・・っとその前に、セリっちの背中に塵付いとるから、おっさん取ったってくれんか?」
「んっ?ああ、糸屑みてぇな塵が付いて-------」
「!!!??」
シャランドラの頼みを聞いて、親切心からアングハルトの背中に付いていた、小さな糸屑を取ってしまったのが運の尽きであった。ヘルベルトは彼女に触れてしまったのである。
忘れていた。リックならばまったく問題ないため、皆すっかり忘れてしまっていたのだ。帝国軍女性兵士セリーヌ・アングハルトの弱点、男性恐怖症を・・・・・・。
「はああああああああああああああああああああああっ!!!」
「うわあああああああああああああああああああああっ!?!?」
ヘルベルトの腕を掴み上げ、一瞬の動きで彼の体勢を崩し、無理矢理地面に叩き付ける。完全に油断していたヘルベルトは受け身を取り損ね、叩き付けられた衝撃によって気絶してしまった。
男に触れられた事によって、重病の男性恐怖症が発症したアングハルトが、自慢の格闘術でヘルベルトを気絶させた。一撃で彼を地面に沈めたアングハルトは、男性恐怖症の影響で暫く冷静さを失っていたが、徐々に落ち着きを取り戻し、自分の足元で気絶しているヘルベルトを見て、一気に顔が青ざめる。
「もっ、申し訳ありません!!私・・・・・何て事を・・・・・・っ!」
「まあまあセリっち、気にする必要なんか全然あらへん。背中に糸屑付けたんはうちや。いや~、まさかこんな上手くいくとは思わんかったで」
全てはシャランドラによる策略であった。アングハルトの背中を押した時に糸屑を付け、ヘルベルトに触れさせる事によって、彼女の男性恐怖症を発症させる。後は、ヘルベルトが彼女に投げ飛ばされたら、計画通りである。
「旅先で悪漢に襲われても、セリっちが今やって見せた技があればどんな男もイチコロやで!!帝国軍の精鋭もほらこの通り、一発でお終いや!どうやみんな、ためになったやろ!?」
「この馬鹿!!アングハルトの男嫌いを一発芸のネタにするな!参謀長命令でお前暫く兵器開発以外の発明禁止だ!」
「げげっ!?堪忍やリック!!遊ぶ発明はうちの数少ない趣味なんやで!」
ヘルベルトを投げ飛ばして気絶させてしまったせいで、大きなショックを受けているアングハルト。顔が青ざめ、動揺の表情を見せ、今にも泣きそうな彼女の姿を見たリックは、やはり大激怒した。まあ、これは完全に彼女が悪いため、同情の余地はない。
アングハルトを心配し、急いでステージに上がったリックは、泣きそうな彼女の頭を撫でて、必死に慰め始めた。こういう時は、彼が慰めてやらなければ解決しない。アングハルトの男性恐怖症は、本当に重症なのである。
「落ち着けアングハルト。ヘルベルトは丈夫なんだから気にするなって。シャランドラは後で滅茶苦茶説教しとく。だから、そんな泣きそうな顔しなくていいんだぞ」
「参謀長・・・・私・・・・・・」
「よーしよし、お前は何も悪くないからなぁ~。ほら、あっちで一緒にご飯食べよう」
やはり、アングハルトに対してリックの慰めは絶大な効果を持っている。青ざめて泣きそうな表情は徐々に消えていき、普段の表情を取り戻していく。さらに、リックと同席できるとわかって、彼女の表情に微笑みが浮かぶ。
帝国内では既に常識的な事だが、リックはアングハルトにベタ甘である。アングハルトをリックの前で弄ろうものなら、彼の雷が落ちるのだ。ただし、そんなリック自身が彼女を弄る事も多々あるため、雷を落とされた者達は理不尽を感じずにはいられない。
「おいシャランドラ、早く次の番にまわせ。言っとくが、アングハルトを使うのは無しだ」
「そんな怒らんといてよ。心配せんでもセリっちの出番はこれで終わりや」
「次の出番は誰だ?」
「次はミュラっちの出番や。まあ、セリっち見たいに悪戯はせぇへんから安心してや」
「いや、ミュセイラなら話は別だ。徹底的に弄っていいぞ」
「何言ってますの参謀長!いい加減私とアングハルトさんとで態度変えるのやめて下さいまし!!」
六番手に控えているのは、似非お嬢様軍師ミュセイラである。彼女もこの一発芸に参戦しており、この日のために彼女なりの見世物を用意したのだ。
「なんだ?次は騒音女の出番かよ」
「ミュラちゃんって特技とかあるのかなあ?」
ミュセイラと言えば、帝国軍の新しい軍師であり、軍師エミリオを師と仰いで日々の軍務に励む、真面目で頑固で声の五月蠅い女子である。誰にでも渾名を付けるクリスからは、よく騒音女と呼ばれているだけあり、怒った時の声量の大きさは一二を争う。
そんなミュセイラに特技があるのかと問われると、誰も答えられない。普段から軍務や軍事の勉強に精を出し、それ以外の事をしている彼女の姿は、誰も見た事がないのだ。特技と趣味は勉強なのではないかと思われるくらい、彼女は勉強の虫なのである。
そんなミュセイラが、今日この場で一発芸に参加するというのだ。どんな特技か趣味かはわからないが、会場の興味は十分惹いている。
「オレ、そう言えばあいつの趣味も特技も知らないぞ」
「おっ、オラもなんだな・・・・・」
「おいエミリオ、騒音女って軍師以外は何ができるんだよ?」
「実は私も知らないんだ。彼女はいつも、一人前の軍師になるために勉強してばかりだからね」
「だよね~。う~ん、ミュラちゃんの特技・・・・・・、レイナちゃんは何か知ってる?」
「・・・・・・・」
観客の多くはミュセイラの一発芸に興味があり、何がくるのか予想し始めている。一発芸の出番を終えた者達もまた、彼女の芸の予想を始めていた。一度会場を後にして変身と仮装を解いたライガとゴリオンや、クリスとイヴも彼女が何をするのか興味がある。ただ、レイナだけは、ミュセイラの一発芸にあまり興味がない様子であり、新しいワインの栓を開けて飲み干していく。
「ようやく私の出番ですわね!遂に、私の溢れる才能と偉大さを皆さんに見せる時が来ましたわ。これを見たら皆さん、二度と私の事を馬鹿にできませんわよ?」
「えらい自信やなミュラっち。一体何を見せてくれるんや?」
「ふっふっふっ、それは--------」
「どうせ、自分の力の素晴らしさを延々と語るとか、愛しのメンフィス先輩の素晴らしさを延々と語るとか、そういうつまらないやつだろ?」
「違いますわ!私の邪魔しないで下さいまし、参謀長!」
会場の多くの者達が、「あり得る・・・・・」と思った。リックの予想は当たっていそうではあるが、本人は全力で否定している。
「ごほんっ!気を取り直して、私の出し物は--------」
「まさか、参謀長への愛の告白ではっ!?」
「絶対あり得ませんわ!!何言ってくれてますのアングハルトさん!」
「なるほど、この一発芸を利用して一気にリック君を攻略するつもりなんだね♪」
「流石ミュラっちや!いい舞台やから愛の告白かますつもりなんやな。帝国軍師はやる事が派手やで!」
「ちょっとお二人共!私がそんな愚かな行為をすると本気で思っていらっしゃいますの!?」
「ミュセイラお前、俺にマジで告る気なのか?悪いけど俺、たぶんお前に告白されても全然嬉しくないぞ」
「違うって言っていますわ!!・・・・・って、私に告白されても全然嬉しくないって一体どういう事ですの!?」
先ほどから邪魔が入りっぱなしで、まったく自分の出し物を披露できないミュセイラ。帝国軍内で彼女が「弄られ組」の一人であるばっかりに、こうなってしまうのだ。
ちなみに、他の弄られ組の面子と言えば、レイナやアングハルトである。
「もう!皆さんのおかげで全然披露できないじゃありませんの!!」
「だって、お前弄る方が会場受けがいいし」
「ふざけないで下さいな!次、私の邪魔した方は、今後の戦いで終始最前線送りに致しますわ。もちろん、友軍も補給もなしですわよ?」
「「「!?」」」
軍師権限を振りかざし、これ以上邪魔が入らないよう釘を刺した彼女は、観客を見渡して、全員が静かになるのを待つ。脅したおかげで観客は静まり返り、それに満足した彼女は、満を持して口を開いた。
「やっと披露できますわね。皆さん!これから私の才能と偉大さを思い知って昇天するがいいですわ。日頃から私を馬鹿にしている方々を見返して差し上げましてよ!」
「うるせぇぞ騒音女。その騒音直してから出直してこい」
「だ・か・ら!!私の邪魔しないで下さいな!あと、私はうるさくなんてないですわ!!」
流石、先の戦争で友軍も補給もなく敵軍団内で孤立無援となった部隊の隊長は、彼女の脅しなどにまったく屈しない。
「皆さんいっつも私の事うるさいって言いますけれど、ライガの方がよっぽど騒音でしてよ!だから私は決してうるさくなんか---------」
「嘘だッ!!!」
ミュセイラの言葉を遮る、強烈なインパクトを持つ台詞が放たれる。この声の主はいつの間にかステージに上がっており、右手に酒瓶を持ちながら、体を左右に揺らめかせていた。
ステージ上に現れた、完全に酔っぱらってしまった少女。声の主は、なんとレイナであった。
「知ってるよ・・・・、レイナはその言葉が嘘だって知ってる・・・・・」
「えっ!?れっ、レイナさん!?」
「ひっく・・・・・・、ミュセイラ、どうしてそんな嘘つくのかな、かな?」
某症候群に発症したかのような言動と様子に、会場の全員が衝撃を受ける。とにかく今の彼女は、この場でどんな惨劇を起こしてもおかしくない。
「わっ、私は別に・・・・・嘘なんて・・・・」
「嘘だよッ!!!」
「ひいっ!?」
「ライガもうるさい。でもミュセイラはもっとうるさい。わかった?」
「そっ、そんな・・・・・」
「わかった?」
「うっ、うう・・・・・・」
狂気と化したレイナの前に、恐ろしくなって震えが止まらず、今にも泣きだしてしまいそうなミュセイラ。観客はただ見ている事しかできず、ミュセイラに同情していた。
彼女は運がなかったのだ。レイナが飲み過ぎて豹変するなど、誰も知らなかった事である。羽目を外して飲み過ぎてしまった彼女がいたのが、そもそも運の尽きであったのだ。完全にキャラ崩壊を起こしているレイナを止めるには、やはり彼女に頼むしかないだろう。
「悪いリリカ、ちょっとレイナを世話してやってくれないか」
「仕方ないね。私の部屋で少し酔いを醒まさせるよ」
こういう時の出番は、やはり宰相リリカの出番である。帝国の姉御的存在である彼女には、誰も逆らえないからだ。
その後、レイナを連れ出すべくステージに上がったリリカが、彼女に優しく話しかけてステージ上から連れていき、ミュセイラはその場でへたり込んで泣いてしまった。狂気と化したレイナの恐ろしさのせいで、また素が出てしまったのである。
幼児退行したミュセイラを皆で慰めるという事態となり、彼女は出し物を披露するどころではなくなった。レイナ参戦というまさかのハプニングによって、ミュセイラによる一発芸は中止となったのである。
結局、ミュセイラが何を披露するつもりであったのかはわからず仕舞いとなってしまい、彼女の出番は何もせずまま終わった。