惚れた相手は.......
夜桜雅には幼馴染がいる。
彼の名前は確か○○○○○だったかな。
見た事はないけど、夜桜さんの噂を聞く際には良く聞く名前だ。
「夜桜さんは_____くんとは仲が良いのかい?」
「んー?普通、かな。」
苦笑をされた。
「え、先輩もしかして嫉妬してるんでかぁ?ふふ」
おちょくられる様に言われ赤面したのは恥ずかしい思い出である。
「照れてる先輩、可愛いですよ♪」
余談ではあるのだが、アイスコーヒーのストローに口をつける夜桜さんは何処か魅力的に見えた。
「あ、ほら、噂をすれば私の幼馴染くんが前を歩いていますよ、先輩。」
帰り道、彼女は前を歩く二人組の男子生徒を指差した。一人は普通の青年、そしてもう一人は口元まで髪型が伸びた青年だった。
(何方が夜桜さんの幼馴染なんだろう?)
「ねぇ先輩.......嫉妬してくれたんですよね?なら、一つご褒美をあげます。」
彼女はそんなことを言うと、ある提案をして来た。
「幼馴染の前で私の事を『俺のモノだ!』って見せつければ良いんですよ。例えば私の肩を抱いたりして、ね」
それは確かにそうではあるが....
「仮に夜桜さんの幼馴染が君の事を好きだった場合、僕は彼に失礼な事をしてしまう。」
心の傷は簡単には治らない。だから、あまり彼女の提案には乗り気ではなかった。
「本当に先輩........優しいんだ」ボソ
一瞬目を細めると直ぐに何時もの表情に戻り笑みを浮かべる。
「ふふ、三日月先輩は気にしなくていいんですよ?______には彼女がいるんですから。それでこの前見せつけて来たから今度は私が見せつけたいんです。」
なんだ、そういう事だったのか。
「......まぁ、そういう事なら」
彼女は僕の事を自慢したいんだと勝手に思い込み内心で喜んだのは秘密だ。
「_________合コンに行こうぜ!」
幼馴染くんの様子を見るに彼は夜桜さんの事が好きだったのだろう。彼の友人は慰めるように背中を擦っていた。
(あぁ、僕はなんてことを......)
謝ろう。もう一度彼に会って先程の事を謝罪しよう。
「っ.........合コン?ふざけないでよ。君が私以外の女と遊ぶなんて絶対に許さない。君は私といるべきなんだ。そんな下世話な会合に集まる娼婦は君に相応しくない。相応しいのはこの夜桜雅、ただ一人!あぁ、君はなんで分かってくれないのかなぁ_________」
「夜桜..........さん?」
君は今、何を口にしたんだ?
「________先に帰りますね。『お疲れ様』でした。」
彼女は鋭い眼光で歩き去って行った幼馴染くんの後を追う。




