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「もうどうにでもなってくれ…」

48話目です。もう少ししたら夜が明ける予定…

 マップ上の光点が青くなった…それはつまり蜂たちが味方に付いた事を意味する。交渉成功だ。


 「よし…!」


 これで最悪の事態は回避出来た。後は、目の前の大熊を撃滅するのみ。






 「ギギギ…!」


 抱えた腕から女王が飛び立つ。残像を残しながら動くその二対の翅が起こす風が、その場を彼女の放つ威圧感と共に満たした。


 「GRRRrrrr…」


大熊も歯をむき出しながら威嚇している。舐められたとでも思ったのだろうか。


 一瞬の沈黙。危うい均衡。それらを破り戦端を開いたのは…


 「GHOOAAAaaaaa!!」


 大熊(てき)であった。


 「GHOOAAAAAaaa!」


 巨木の如き剛腕で前方を薙ぎ払いながら大熊がベディとの距離を詰める。だが、そう簡単に接近を許すようなベディではない。


 「えい」「GYAOOO?!」


 大熊の脚には赤くささくれ立った糸が絡みついていた。先程の睨み合いの最中、こっそり張り巡らせていた血の糸で脚を引っ掛けたのである。

 そして、不安定な二本足の状態で支えを失えば。


 ドスウゥゥン!!


 大熊はその場で1回転し、腹を晒した状態でダウンした。そこに、働き蜂の腹から射出された無数の針が飛来する。…が、大熊はこれを地面を殴り付けた反動で真横に転がる事で強引に回避。その勢いのまま立ち上がり、怒りの咆哮(バインドボイス)を放とうとするが、そこにベディとナオミが襲いかかる。狙いは脚だ。


 「フッ!」「やあ!」


 大熊は後ろに飛ぶ事でこれを回避しようとする…が、不意に押し潰される様に蹲った。ベディが≪プレッシャー≫を発動したのだ。しかしそれでもなお、大熊は彼らを憤怒に溢れた目で見据え、大上段から腕を振り下ろす!


 「最もそういう訳にはいかないんですが!」


 そう言うなり、二人はお互いを思い切り突き飛ばした。


 剛腕が空を切る。大熊は攻撃の失敗を悟った。そしてすぐさま2撃目を繰り出そうとした…その時!


 ドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 空いた射線に、大熊の視界を覆い尽くす程の針の雨が降り注いだ。










 その後は、特に面白みの無い戦闘が最後まで続いた。…だって本当に単純だったんだもの、あの熊君。適当にチマチマ攻撃して怒らせたら蜂たちの針攻撃が飛んでくるからそれでダウンさせて、復帰するまでひたすらペチペチ…これを延々繰り返すだけだったから、今までと比べると拍子抜けする程アッサリ倒せた。


 「で、当座の危機は去った訳だけど…これ、どうしたものかねぇ…」


 そう言いながら僕は自分の背中を覗き込む。なんでかって?


 「ギ、ギ…♡」


 僕の背中に六本の脚でガッチリしがみついて離れようとしない女王陛下がいるからだよ!どうなってんのホントに…戦闘が終わったらずーっとこの通り。どうやら完全に懐かれたようだ。しかも…


 「シャアア!シュア!シュゥ!(意訳︰■▲◇@&$*!!!!)」


 ウチのお姫さまは大層お冠である。それこそ、お気に入りの右腕から肩まで上がって来て文句を言う位には。…ホンットに、どうしようかこれ。ナオミさ〜ん…へールプミ〜。


 「ギギ…」「え、くれるんです、か?あ、ありがとうございます…え、嘘、これまさか≪万力の蜜≫?!あわわ…」


 彼女は彼女で、他の働き蜂達からお土産を貰っているようだった。…あの分だとこっちの状況に気づいてないな。現状戦力のみで対処せよ、てことね…


 「あのー…お二人共その辺に…ね」「「………亅亅


 あれ、なんか急に大人しくなったな二人とも。…そして気のせいかな、凄まじく背筋がゾワゾワするんだけど…


 「…ギギッ」


 女王が何かを―正確には大顎か何かを鳴らしているのだろうが―レイに向けて言った。その瞬間。


 『プッツン』


 ……聞こえた。今確かに聞こえた。確実に何かが『キレた』音がした。そう、具体的には『堪忍袋の緒』とか…


 「シャア"ア"!!」「ギギィ?!」


 …喧嘩が始まった。否、始まってしまった。それも取っ組み合い。と言うか君たち、マトモに取っ組み合えるんだ…え、ちょっと待って、レイさんいつそんな新技覚えたの。一部分だけ硬化させてからの刺突なんて知らないんですが。いつからウチの娘は体の側面から触手を生やすようになったんでしょうか。飼い主(ぼく)そんなこと教えてないよ?!女王も女王で本気で()ってない?!気のせいかさっきの森のクマさん戦よりも!


 「ギギ」「あ~もう…え、何?」


 ここ数十分でずいぶん聞き覚えのある音になった『声』のした方へ顔を向けると、そこには戦いを生き延びた働き蜂たちの姿があった。…なんと言うか、申し訳なさそうな表情をしている。


 「キ、ギギギ」「「「「「ギギ、ギギ」」」」」


 その中でも特に大きな2匹がこちらに向けて触角を下げると、それに倣うかのように他の働き蜂たちも触角を下げた。…ここで、彼女たちが僕たちに御礼を言ってくれた、と思うのは…きっと気のせいではないのだろう。


 「ありがとう。…でも、そこまで気にする必要は無いですからね」


 そう彼女たちに告げた途端…


 ====================

  Hidden Quest Clear!!!

  ヒドゥンクエスト:「EX:七転蜂倒(しちてんはっとう)」クリア!

   タスク

    ボスを倒す:✓

    女王を倒す:―/1

    敵を殲滅する:―/37

    女王を助ける:✓

   報酬

    経験値:1800

    アイテム「万力の蜜」×5

    アイテム「如水の蜜」×5

    アイテム「不撓の蜜」×5

    イベントアイテム「超高濃度劇毒のレシピ」

    イベントアイテム「ドス黒いかけら」

 ======================

 《レベルが27に上がりました。スキルポイントを5得ました》

 《槍術アーツ:『コラプサーヴォーテクス』を習得しました》

 《槍術アーツ︰『コラプション・イラプション』を習得しました》

 ⦅プレイヤーが島の異変を一つ解決しました⦆

 ⦅メインイベントクエストが発生しました⦆


 クエストクリア共に流れたアナウンス。前半2つは僕に関係するもの、もう一つはワールドアナウンスだ。

 レベルアップによる変化は…特になし、ね。そう思いつつスキルポイントを耐久に放り込む。《操血》に必要なものでね。で、同時に習得したアーツが、なになに、『コラプサーヴォーテクス』に、『コラプション・イラプション』?コラプサーって…確か『ブラックホール』の別名じゃないの。イラプションも英語で『噴火』だよね。名前からして不穏過ぎでは?と言うか何故今のタイミングで?

 …まあいいや。それで、肝心の効果は………………あー…うん、なるほど。理解した。そういう事ね。結論、これはそうホイホイ使えるものじゃないな。

 

 そこまで確認して、ふと周囲を見る。


 片や、取っ組み合いを続けるお嬢様方。片や、貰った物の価値に呆然としている探検家。さて、彼女たちをどうやって現実に引き戻そうか?

いかがでしたでしょうか。皆様の応援がこの作品の養分となります。よかったらポイント評価、ブックマーク等して頂けると幸いです。

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