夜襲
46話目です。書きたいのに中々書けない。思考のスピードで執筆出来たらどんなに楽か…
「ずいぶんとまあ…荒れてますね」「ええ。一体何年放置されていたやら。下手すると数十じゃきかないかも」
数十分後。追跡者を撒いた僕たちは、そこから更に森の奥深くへと分け入った場所にある集落跡らしき遺構を訪れていた。
「見た所…そこそこの広さがあるみたいですね。劣化や風化が激しいけど、昔はきっと栄えてたのかも…ナオミさんはどう考えてますか?」「そう、ですね…」
僕が話を振ると、ナオミさんは家の土台だったと思しき遺構に手を触れて、思案を巡らせる様に語り始めた。
「建物の土台の大きさと柱の配置から考えて、ここにあったのは恐らく住宅。それも技術レベルを考えると精々2階建て。それが多少の差はあれどざっと20…近くにも不自然に開けた場所があったことを考えて、ここで農耕生活をしていたのは間違いないので…」
そう呟きながら、彼女はさらに集落跡のある一点を指差しこう告げた。
「ここ、柱の跡が横長になっているでしょう。ここに厩か牛舎があったんでしょうね。作物の運搬用や畑を耕すために馬や牛がいた、と私は考えてます」
なるほどね…ん?だとすると…
「どうして土台しか残ってないんだ?」「シュ?(意訳:どういうことですかご主人様?)」
その場所には柱を支えるための石の土台や、畑の跡地らしき開けた場所等は残っていた。でもそれ以外…例えば、家の柱か廃屋といった、『そこで人々が暮らしていた痕跡』がもっと残っていて然るべきなんだけど、ここにはそういった物が殆ど残されていない。数千年前の物とは到底思えないし…
「墓すらないのは…妙だなぁ」「そうなんです!そこがどうにも腑に落ちなくて…」
流石に亡くなった方達を葬る場所すら無いのは、村の形と言うか、コミュニティとしては歪すぎだけど…う~ん、何だかな。あ、そうそう。
「そういえばさっき言ってたテキストって言うのは?」「…忘れてました…こっちです…」
あらら。
遺構からほんの少し歩いた藪の中。そこには、明らかに人の手で造られたモノリスが鎮座していた。モノリスには、びっしりと何かの文字と絵が刻まれている。でも、
「よ、読めない…」
一体どんな言語体系に則っているのかサッパリ分からない。もしかしてこれが以前ご老体が言っていた超古代文明の物だろうか。でも仮にそうだとすると古すぎるしねぇ。きっとそれよりは後の時代のものだろうな。
「そういえば、ナオミさんはこれ読めるんです?」「はい。《翻訳》スキル持ってるので…」
えーと、確か一定確率で読んだことのない文献を読めるようになるんでしたっけ?こういう時には重宝しそうですよね。
「リアルで欲しいかって言われるとそうでもないんですよね…偶々目に入っただけの古文書とかも読めちゃうし…なんかこう…ワクワク感っていうか…」
あー…なんとなく分かるような…ネタばらしされるような感じかな?
「そんな感じです…あ、さっき残りが全部解読出来たのでスクショ送りますね。いやー、流石に《招福》持ちが近くにいると違いますね。前来た時はスキル判定に嫌われて…さすが《周りの幸運を引き上げる》レアスキルで…あ、ハイ、これも全てあなたのお陰です。ですので威嚇は勘弁してくださいお願いします」
…僕は何も見ていない。例えナオミさんが脂汗をかきながらウチのレイ嬢に土下座していたとしても、何も見ていないのだ。
「シュィィー…(意訳:素直でよろしい。その調子でご主人様の為にも励みなさい)」
(ま、後でお説教かな)…彼女たちに奇妙な上下関係が生まれているのを強引に無視して、僕は彼女から送られたスクリーンショットをインベントリから出したベーコンを肴に読み始めた。どれどれ…
『ここはドゥウエの村 →港まで一時間半』…道路標識じゃないですかやだー。あれかな?一里塚とかマイルストーンの類だったのかなこのモノリス。まあ確かに目立つし、ポケ○ンの街の入り口近くにある案内標識か掲示板みたいに使われてたんだろうね。村の説明書きや広告も書かれてるし…きっと所々にある絵はピクトグラムの類なのだろう。
でも、平穏なのはここまでだった。
「…ん?」
ふと、モノリスの端に何かあるのが目に入る。その文章はまるで書き…刻み殴られたかのように文字が荒れていた。まるで走り書きのメモみたいだ。
「ちょっとナオミさん、訳し忘れ」「え"っ?!嘘、何処?!ああ、こ、こんなところに…」「シュウウ…(意訳:どうなるか、わかって、いますね?)」
ハイストップ、冷静になろうか。僕が彼女を射貫くような視線で睨みつけるレイを抱え上げて頭を撫でると、彼女はたちどころに大人しくなった。
「ごめんなさいね、なんか最近気が立ってるみたいで」「い、いえ…」
新しいスキルも、ここまで影響出るとちょっと考えものかな…と言うのも、レイは修行中にあるスキルを獲得していた。その名も《蛇睨み》。簡単に言えば、レベルの低い相手の動きを止めるスキルなんだけど、どうも副次効果として対象を威圧する効果があるみたいなんだよね。いや、威圧効果のあるスキルの派生形と考えた方が自然か?まあ今はどうでもいいか…
《ここをいつか訪れるであろう未来の者達へ》
後から付け加えられたらしい文章は、そんな前置きから始まった。
《どうか私達の過ちを知って欲しい。私達が一体何をしたのか、その結果がいかに無意味だったのか。君達が再び私達と同じ過ちを繰り返さない為にも…》
「…なるほど、ね…」
数分後、ナオミさんが翻訳したメッセージを読み終え、僕たちはそのメッセージに込められた重みを味わっていた。
「それじゃ、この島の人達は……」「恐らくそういうことでしょうね。ああもう、何が『恵みの島』なんだか。どうもこのイベント名を考えた人は余程のヘソ曲がりと見える」
いずれにせよ、これで全ての情報が揃ったと言えるだろう。あの少女の警告、この村跡地の状態、そして未来へのメッセージ。なるほど、確かにこのままだと皆死ぬ。でも。
「まだ、時間はある…!」
現在二日目の夜。イベント期間の半分も過ぎていない。今から準備すれば、かなり上手く立ち回れるはずだ。
「とにかく動きましょう。内容が内容なので今はまだ信頼できるプレイヤー以外に話すのは適切ではないでしょうが、ある程度は話を通しておいた方が良いかもしれません。その後…伏せてッ!」
ナオミさんの頭の上に『?』が浮かぶ。だが、事態は最早彼女に状況を理解する時間を与えようとはしなかった。
「くッ…!」
咄嗟に彼女の頭を押さえつけて地面に這いつくばるのと、先程まで彼女の頭があった場所を『何か』が超高速で通過したのはほぼ同時だった。
ズドガガガガガガガガッ!こちらの認識範囲外から飛来した『それ』…一面黒に覆われた長さ15㎝程の針は、僕たちの後方の木の幹に深々と突き刺さった。毒でも塗られていたのか、針が刺さった箇所からはシュウシュウと音を立てて煙が出ている。
(一体何処から?!)殺気が乗ってなかったあたり、少なくとも意図的に撃った訳ではないのだろう。恐らく戦闘中に使用された流れ弾がここまで飛んできたか。
「あ、あの一体」「しっ。恐らく誰かが近くで戦ってます。あれはそこから飛んできた流れ弾でしょうね」「ええ…じゃ、じゃあ気付かれる前に逃げましょう。うん、そうしましょう」
そうしたいのは山々なんですけど…
「多分、もう手遅れ」「ふぇ?」
うん、普通の人はそういうリアクションするよね。でも、僕には分かるんですよ、少なくともかなり体の大きな何かが、闘いながらもこっちに近づいて来てるって。
「後10秒位でエンカウントするので、大人しく迎撃なり何なりするとしましょうか」「はぁ…了解です。一応、多少は上手く立ち回れると思いますが…念のためフォローしていただけると」
もちろんです。さてさて、何が来るかな?
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