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波乱の萌芽

34話目です。これにて第二章完結です。と言ってもこの後掲示板回と運営の幕間、あと登場人物紹介を挟みます。読み終わったら感想お待ちしていますね。首を長~~くして待ってます。

 うーん…どうかしたのかな、ロイカさん。やっぱり寝間着のまま人前に出すべきじゃなかったかなぁ…なんか挙動不審だったし。冷静に考えるとそりゃ恥ずかしいよねぇ…あとで謝っとこう…


 ―そういうんじゃない。


 「?どういうこと?」


 ーだからぁ…ハァ、いや、もういい。これ以上は自分で考えろ。


 …へんなの。さっきからアキが「お前という奴は…」とか、「この唐変木…コイツがこうなったのは俺たちのせいなのか…?」とかなんとか言ってるけど、どうかしたのかな。





 ボスを倒した次の日の夜(ゲーム内時間)。この日は平日だったけど、うまいこと授業と重ならなかったので、超速で帰ってログインすると、町は祭り一色になっていた。なんでもボス討伐&町の防衛を祝してのものだそう。ちなみにお代は領主サマが出してくれたんだそうな。


 「おっ、らっしゃい兄ちゃん。今ならスパークボアのモモ焼きが80G…って所だが今日は領主様の奢りだ。ピリッとしてうんまいぞ~」「買った!じゃない三本ちょうだい!」


 もっきゅもっきゅ…うん、おいしい!舌が痺れるような感覚とモモ肉の弾力で舌が楽しい!肉の味もいい!


 「太刀ネギの塩焼き、出来立てだよ!」「生でも旨いライトマト、お一つどうだい?」「フライドチーズ、いかがですか~」


 町中には安堵と歓声、笑顔が溢れていた。これもボスが放たれていたら全て失われていた物だ。装備品からプレイヤーと推測できる人たちが浮かれているのも、彼らを守り抜いたという実感があるからだろう。


 (…んん?)だが、そこでベディは見てしまった…今まさに屋台のおっちゃんが接客している隙に後ろから焼きとうもろこしを失敬する老賢者の姿を。


 (何やって…ハァ、いい年こいて全くもう…)






 「なんじゃい。どうせタダなんじゃから別に構わんだろうに…」「そういう事言ってんじゃないんですよ。モラルの問題」とりあえず即捕縛&謝罪。そんでもって今は物陰でコソコソお説教中である。


 「全く…まあ辛うじて実害が無かったからまだいいんですけどね…それはともかく」彼とは一度話をしておきたかった。ボス討伐後、忽然と姿を消してしまったからね。あの時聞けなかったことがいっぱいある。


 「ほほ…お主の聞きたいことなんぞ解っておる…もしかしなくても『アレ』の事じゃろ…じゃが今の時点では言えることは少ないぞ?」「…構いません」それでもいい。あれは結局何だったのか、考えてもまるで予測がつかない。情報は少なくても正直ありがたかった。


 「そうか…ならば話すが…これから話すことは信のおけるもの以外には他言すべきではないということを先に伝えておく…まずはあれが何だったかについてじゃが…前にこの世界の成り立ちについて話したな?」ええ。確か創造神がやってきて、自分の身体を4つに分けて、そこから3人の神を創り出して…って話でしたね。


 「左様。じゃがその話は…方便じゃ。全てがそうではないが、半分近くが作り話なんじゃよ」…どういう事ですかソレ。


 「うむ。まず『3人の神』についてじゃが…気付かなかったか?最初の神は『4つ』に体を引き裂いたんじゃぞ?なのにどうしてそこから産まれた神は『3人』なのかの?」「それは…残りが創造主に…あれ、もしかしてそういうこと?」


 「そう…原初の世界、最初の神は己が身体を余さず使い、『4人』の神を生み出したんじゃ…そして創造主は魂のみの存在となったんじゃよ」


 そうだったんですか…でもなぜそのことは皆知らないんです?「いつの時代からか、神話の『4人の神』の箇所が書き換えられているようでな…儂がこういった事実を知っておるのも、若い頃に今から数千年前に滅びた超古代文明の遺跡に入って、そこに記されておった壁画や記録を閲覧したからでな。独自に探ってみたが、どうもそのことについて知っている者は神殿の上層部にもおらぬ」フーム…誰かが何らかの意図をもって改ざんした、ってことなんですかね…


 「それについてはいくつか予想がつくが今は何とも言えん。で、最初の話に戻るんじゃが、遺跡にその『失われた神』について書かれた壁画があってな。こう書かれておった。

 …その者はこの世に溢れるマナ、『魔力』を生み出した。これすなわち『魔神』であると」…魔神。


 「うむ。そして遺跡の別の記録にはこう書かれておった…」


 『第4の者 祈り失いし時 5つの呪い振り撒きて世を原初の闇へと沈めん』


 …黙示録みたいだな、なんか。「この『5つの呪い』という文言…これは彼奴らを指している。つまりこの世界にあと4体あのようなモノがいるのだ」あんなのがあと4体…なにか、対策とかないんですか。


 「…実はな、その時そう思って調べてみたんじゃよ、その遺跡を徹底的にな。そうしたら、最深部に厳重に保存されていた壁画にこう書かれておったんじゃ」


 『光に(いだ)かれる者 祈りを心に湛えし者 汝22の輝きを以て原初の呪縛を打ち払わん』


 だめだぁ~!抽象的過ぎてまるで参考になら…んん?「『22の輝き』22…22⁈」あれれー?おかしいぞー?タロットカードの大アルカナの数って確か『22』個じゃなかったっけー?


 「そういう事じゃ。かの者たち…ええい分かりにくい、『魔神の眷属』とするか、とにかく彼奴らはアルカナの力を持つものに対しどういう訳か極端に弱い。天敵なのやもしれぬな…」そういう事か…僕の《雷霆棍フールミネ》は《愚者のアルカナ》を持っている。だから(アキ)の筋力にしては高いダメージを出していたのか。道理で鎖で腕を引き千切れるわけだよ。他の人あんなこと出来てなかったもん…


 「それからもう一つの嘘じゃが…実はあの話には『削られた』箇所のほかに『書かれていなかった』箇所…つまり続きがあるんじゃよ」ほう…というと?


 「その箇所には概ねこういう内容の事が書いてあった。『神々は各々の創り出したものを管理する役目も持っていたが、段々被造物が多くなるにつれて管理しきれなくなったため、その力でもって数多くの従属神を生み出した』という感じじゃったか…」あー、流石の神様でもほぼワンオペで世界を回すのはきつかったんだろうな…ワンオペで思い出したけどバイトどうしよ…流石に就職する前に一回はやっといた方が良いよね…


 「このことが今知られていないことについては大体予測がつく。大方神殿の権力争いじゃろうな」ん?何でそこで権力争いの話が?


 「お主ら異邦人は知らんじゃろうが、この大陸では生まれた時に創造神の他に信仰する神を3人のうち一人選ぶ。その上で神殿は『自分と違う信仰、神も全てが敬うべきもの。尊重し敬意を払うべし』と言っとるんじゃが…そうは言っても所詮は人の子。各々の信ずる神こそ至高と思っとる者たちもいる。そこで神殿において自分たちの陣営の信ずる神の威光を世に広めたいと、神殿の運営者であり神の代弁者たる『教団』の上層部は今日も化かし合いをしとるという訳じゃ」んん~…その話をこのタイミングでしたってことは…


 「もしかして権力闘争の邪魔だった?」「であろうな。少なくとも無数の神の話は儂の爺様の若い頃には語られなくなったらしい。もっとも話とは受け継がれるもの。場所によっては未だに彼らに対する信仰がカタチを変えて残っとるらしいな」ふむ、多分ポラリスさんたちはその無数の神にカテゴライズされているんだろうな…大体分かった。


 「…あの怪物のこと、それに付随する神々の事実については分かりました。ですが、『あれ』はなぜこの町に?」「…済まぬ。それについては今は言えん。じゃがそれに関する道標を君に授けよう…古の文明に伝わるアルカナ(希望)に選ばれた君に…」


 そう言ってお爺さんは僕に何か、小さいスマホサイズの金属板を手渡した。


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  何の変哲もない金属板 レア度:コモン


  特に変わったところもない金属の板。結構軽い。

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 「…もういっそ清々しいほどに怪しい」「ま、そう言うな。それを持って《バディーラ渓谷》に向かいなさい。そして、それをある人物に渡してほしいのだ」「誰ですか、そのある人物って…」


 そう僕が聞くと、彼は重々しく口を開き、こう言った。


 「霧の谷の(あるじ)、亡者たちの長、レイスの王…生と死の境界に立つ者じゃ。全てを知りたくば、死者たちの王に謁見し、教えを請うがよい。そして全てを知ったのち、儂に会いに来るがよい」会いに来いって…あなた何処にいるんですか。この町にいる訳じゃないんでしょ、どうせ。


 「案ずるな。儂の居場所については王が教えてくれる。 …どうじゃ?全てを知りたくはないか?」


 そう彼が言い終えた瞬間、目の前に音もなくウィンドウが現れた。


 ======================

  シークレットクエスト:「此岸(しがん)彼岸(ひがん)の境界に立つ者」が発生しました。


   クエストを受託しますか? yes/no (noを選んだ場合このクエストは消滅します)

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 当然、イエスっと…「うむ、その意気や良し!では話が済んだところで屋台に行くとするかのー」ええ~⁈このシリアス空気のまま~⁈


 「ほっほっほ。人生切り替えが大事じゃよ、いつまでも一つの事にこだわってる様ではなんにも出来んぞ~い」ぐッ…言わせておけば…って、あの爺さん早速屋台にカチコミかけてるよ!お~い戻ってこ~い!アンタには《無属性魔法》の事とか使える魔法の事とか聞きたいことがー!!




 その後、彼らは大いに飲み、大いに食べ、大いに語り合った。そしてそれは、ベディも例外では無かった。その時の彼の顔は、嵐の間にさす一筋の光が如く、和らいだ表情だったと言う。

いかがでしたでしょうか。皆様の応援がこの作品の養分となります。作者の励みになりますので、良かったら感想や評価、ブックマーク等していっていただけると非常に幸いです。

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