忍び寄るモノ
17話目です。試行錯誤しながらやってます…
2018/11/1孤児院の存在を仄めかす発言を追加。
「ベディさーん、これも倉庫にお願いしまーす」「はーい」
どうも、ベディです。現在清掃作業中です。どうしてこうなったのか。話は少々巻き戻ります…
「ふ~~む」
僕はクエストボード-依頼受付中のクエストが張られた掲示板-の前でうなっていた。理由は《鍛冶》スキル。町の公共の鍛冶場があったので、以前討伐した猪の牙やモンスターの骨等で何か作ってみようとしたのだが、いかんせん鉱石系の素材が不足していて、満足のいくものが作れなかったのである。そのため、ポラリスさんから賜ったアイテム分布図をここで使用。
鉄鉱石や銅鉱石といったものが山にあることを確認したのだが、入山にはある程度の冒険者ランクが必要だったのだ。
そのため、クエストを受けてランクを上げようと意気込んでギルドにやってきた…のは良かったんだけども。
「……無い」
そう、無いのである。割のいい討伐系クエストが一つも。それ以外の言わば雑用や社会奉仕活動は残っているのだが。
…この時、首都である《リストア》の街にある冒険者ギルド総本部に『徒歩で』たどり着いたとある探索者が、ランクを上げることでギルド内に併設されたショップで希少なアイテムを、高額ではあるが購入することができるという情報を発見して以降、皆躍起になってクエストを攻略していたためクエストが無くなっていたのだが、それは掲示板を見たことが無い、存在も知らない彼のあずかり知らぬ事である。
「…でも何もしないのもね…」
勝手にランクが上がってくれればいいのだが、残念ながらそういう訳にもいかない。という訳で。
「すいませーん!」
はい、受諾しました、「清掃依頼」。場所は町はずれの教会。依頼主は此処の主であるシスター。何者かに悪戯されたりして花壇等が荒らされていたのでキレイにしてほしい、できれば誰がやったのか突きとめてほしい、という内容だった。
「はーい、今行きます!」
そう言いながら出てきたのは、身長150cmくらいのシスターの衣装を身にまとった女性だった。
「ギルドから来てくれたんですね。私はここを任されているロイカと言います」
そう名乗ったシスターと僕は軽く自己紹介した後、早速件の現場に向かった。
これは…荒らされているなんてレベルじゃあない。至る所にゴミがぶちまけられ、傷がつけられている。これ元に戻すのにどれくらいかかるんだろ…
「酷いものです。ここには親を亡くした子供たちがいて、その子たちが頑張って作ったものだったのに…いったい誰が…」
彼女がそうつぶやく。
「心当たりは?」「……」
…あるんだな。この反応は。
「前にここを預かっていた神父様が、どうも借金をしていたらしくて…その返済を迫られているんです」
…それじゃん。ベタ過ぎだけどこれしかないじゃん。ちなみに借金はいくら位?
「ざっと600000Gほど…」
うわぁ…プレイヤーが最初に渡されるのが1000Gだと考えると大金だな…そんな大金、何に使っていたんだろう。
「ともかく、まずはここをどうにかしましょう。下手人の事はそれからです」
で、今に至る、と。
とりあえず散らかった土やら何やらは片付けて隅に纏めておいたんだけど、壊れたレンガや折れた低木はどうしようもない。新しいのを調達すべきだな。特に花壇に使われてたレンガ。どこで買えるか聞いてみ「ロイカさん、いるかっ!?」
反射的に声の方向に目を向けると、そこには血だらけになった人を肩で支えたおっちゃん達がいた。
「おう兄ちゃん、ロイカの嬢ちゃんいるかい!?」「何があったんですか!?」
「わからん。路地裏で倒れとったんだが、右腕を斬り飛ばされて重傷だ。とにかく今すぐ嬢ちゃんを呼んできてくれ!」
言われるまでもない。その言葉を背に僕は教会内の掃除をしているロイカさんを呼びに走った。
「……とりあえず、命にかかわるようなケガではありませんでした。でも…」
彼女の表情が曇るのも無理はない。彼は鍛冶職人とのことだったが、職人にとって腕は商売道具と言っても過言ではない。今回はどうにかなったけど、もし彼女がいなかったら…彼は職を失うことになっていただろう。
「最近、このようなことが立て続けに起こっているんです」
若いシスターは沈痛な表情で呟いた。
「今月に入ってもう40人以上の人を治療しましたが、未だに犯人が捕まったという報せは入っていません」
なんだそれは。ギルドは動かなかったのだろうか。
「ギルドも調査依頼を出しているようですが…状況は芳しくありません。噂では、調査に向かった冒険者が逆に腕を斬られたとのことで…」
…一体犯人はどれだけ被害を出せば気が済むのだろうか。
結局、僕は数十分後に掃除と修繕を終えると教会を離れた。ロイカさんは掃除の報酬を渡そうとしてくれたが、彼女の教会に借金がある事を考えると、どうにも受け取る気になれなかった。
(何なんだろう、このいやーな雰囲気)町全体に、何というか、へばりつくような『何か』があるような気が無性にするのである。それが件の通り魔のせいなのかは分からないけど、(何とかしてあげたいな…)そんなことを考えながら、僕は一旦ログアウトするために簡易宿泊所へと歩を進めたのだった。
いかがでしたでしょうか。皆様の応援がこの作品の養分となります。良かったらブックマーク等していっていただけると幸いです。




