チュートリアル その3
10話目です。お納めください。
「はあああ…」やばかった。もう少しで海老せんか何かになるところだった。プレスをしてくるところまでは予想していたけど、余波だけで9割HPを持っていかれるとは。地面に突き立てた槍がしっかり心臓を貫いたから良かったけど、もし失敗したらどうなっていたやら…
「おおー、すごいな!まさか倒しきるとは思わなかったぞ!」
少女がこちらに近づいてきた。いつの間に。
「ええ、お陰様で…」「いやー、実は奴さん、チュートリアルに来たプレイヤーを吹っ飛ばしてデスペナルティについて教えるために配置してたんだがな。いや、本当に予想外だった!」
がっはっは、と笑う彼女。なんちゅう物を出しとるんですか。
「まあ、何とかなったとはいえ、説明はしとかなきゃな。仮に死んでしまった場合、所持金の三分の一とが消える。あと、ステータスも4割減だ。HPもMPもな」
そう言いつつ、手に持った瓶の中身を僕に振りかけた。うわあ。
「そういやな顔すな。HPを回復してやるからちょっと待ってろ」
回復…?あ、本当だ。左上の緑色のゲージがぐんぐん満タンになっていく。
「HPはやばくなる前に回復ポーションを飲んで回復すること。MPは自然回復するが、お前のステータスだとこまめに回復した方が良いだろうな。通常の戦闘はいのちだいじに、チャンスが来たらガンガン攻める。アドバイスとしてはこんなもんだろ。他のスキルは実戦で使って体で理解しな」
あれ、この言い方は…
「ああ、これにて基礎チュートリアルは終了だ。困ったら最悪《鑑定》使えば大体の事は分かる。それでも分からなきゃ人に聞け。自分の目と耳で情報に触れろ。例え仮想世界とは言え、この世界は生きているのだから」
彼女はそう締めくくって、僕に袋を渡してきた。
「餞別だ。と、言いたいところだが…まだこれをやる訳にはいかんなァ」
え、引っ込めるの。
「最終試験だ。試験の内容は…私と戦って倒してみろ」
何それ。というか…無理では?いやだって、
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ーーー Lv.???
鑑定に失敗しました
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鑑定してもレベルが全く分からない。HPも分かんないとか。というか、失敗するとこうなるのね。
「あー、すまん。流石にいきなりデスマッチは無茶過ぎた。じゃあ…」
そう言って自分の体をあちこちまさぐると、彼女は懐からスカーフのような布を取り出した。
「こいつを首に巻くから、これ取ってみろ。そうすれば勝ちだ」
まあ、それくらいなら…
「よしOKだ。すぐ始めるか?」
そう彼女は問いかけてくる。僕は…
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ベディは、少し時間をくれるよう『彼女』に頼んだ。彼は、自分の持つ可能性を完全には把握していない。故に、ステータスを確認する時間を要求したのだ。
「準備はいいか?」「ええ、勿論」
そうして、二人は武器を構える。ベディは槍を。少女は太刀を。
二人の間に、張り詰めた空気が流れる。
だが、その空気は唐突に破れる。
「シイッ!」
少女がいきなり突進した。ベディの胴を横薙ぎに両断するつもりだ。
「フッ!」
ベディはこれを柄でガード。返す刀で石突で彼女の顎をかち上げる。もんどりうって転がる彼女を追撃しようとするも、起き上がりざまに放たれた薙ぎ払いを躱すためにベディは後ろに飛ばざるを得ない!
「ハアーッ…ハアーッ…」「へへ、新人の割には大したもんだ。これはちょいと本気出してもいいかもな…」
そう言って太刀を構えなおす。対してベディは息を整えながらも、じっと相手を観察しているようだ。そして、両者は再び激突する。
ガキイインッ!少女の袈裟懸けに振られた太刀とベディの突きが火花を散らしてぶつかり合う。が、少女はそのまま後ろに吹き飛ばされた。この技はもしや!
「ちいっ、《パワースタブ》か!」
少女が毒づくも、ベディは突きの勢いのまま突進し、遠心力を乗せて振り回す!狙いは、少女の持つ太刀!
ガギャアアアァンンッ!
火花を散らして刃が更にぶれ、そして怯んだところを、槍の穂先で絡めとって巻き上げる!
「クソ!」
地面に突き刺さった太刀を横目に、ベディは突撃してくる少女を迎撃せんと、穂先を低く構え、突きの体勢を取った。それを見て彼女は内心笑った。
(腕はいいが、まだまだだな)
そんなことを考えながら、彼女は裏拳で槍を払うと見せかけて、槍を奪い取ろうと柄に手を伸ばす。そして、彼女の手が柄に届いた…その瞬間!
…槍はベディの手を離れ、少女の手へと渡った。…彼女が体勢を崩す程の勢いと共に!
だが、彼はこれで武器を失ってしまった。これでは打つ手なしだ。しかし、忘れてはいけない。彼が取得した近接攻撃系スキルは一つではないという事を。
ズドオオオン!
彼が少女の水月に強烈な掌底打を打ち込んだ音だ。そして、
「おおおおああああ!」
彼女の右腕と襟首を引っ掴み、背負い投げの要領で地面に叩き付けた!
「かっ、は…」
叩きつけられ息が詰まった彼女の右腕を背中でねじり上げ、息も絶え絶えに彼はこう言った。
「ハア…ハア…確保、完了」
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