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4-31 学校を知らない子供達

「これからみんなでやるのは、ゴッコ遊びだコラァ!」

「ゴッコ遊びぃ~?」


 おおっ! 三人がハモったぞ。仲良いな。流石は元チームメイトだな。


「う~ん、ナリザあまりやったこと無いですけど、子供がよくやるオママゴトとか海賊ゴッコみたいなのですか?」

「おうよ! それの大人版だな。与えられた役割を自分の知識や経験を活かして、全力でやるわけよ。ガングワルドじゃ、ロールプレイングなんて呼ばれてる。ま、ゲームなんだし気軽に楽しめばいいのよ♪」


 すると黙っていたエンジャ氏が、重い口を開く。

 え?……重い口? 何かゲームに苦い経験でもあるのかな。


「なるほど…そうッスか。ゲームっスか。なんか懐かしいッスね。ゲームならオレもやった事あるッスよ」

「エンジャさんもやったことあるんですか。どんなゲームです?」

「お金に困った参加者が莫大な賞金目当てに、参加者同士で殺し合うってヤツっす」

「それってデスゲームじゃないですかヤダ~~~~~~~!!」

「………あー、いやいやっ、あれは王宮戦士になって初めてやった潜入任務なんスよ。オトギワルドじゃ『オーガ』って邪悪な組織が、社会の裏で色々とアコギな事やってまして、組織ごとぶっ潰すために参加者のふりして潜り込んだんッス。やだな~、そんなドン引きしないでくださいッスよ、お父上~♪ オレは誰も殺してませんって♪」


 笑顔に戻るエンジャ氏だが、先ほどのリアクションからして、人に話せないような経験をしているだろう事は想像が付く。誰も殺してないのが本当なら、逆に救えなかった命があったってことかもしれないな。

 はっ!!! まさかハジマリサマ、デスゲームもちょっと面白そうとか思ってるんじゃないだろうな! と、思わず気まぐれ女神様の分身を睨み付ける。


「思ってません!! そんな酷いことやらないってば! ワタシは楽しいことが大好きだけど、殺し合いを楽しいだなんて、一度も思ったことありませんっ! ワタシがやるのは、緊張感ゼロでも楽しめる、お気楽エンターテイメントです!」

「そ、そうか。疑ってごめん、天美ちゃん」

「もう、失礼しちゃうわっ!」


 くっ、あざといヤツめ。ふくれっ面もカワイイじゃないか。

 でも、多少の緊張感はあっていいんじゃないかな。一応、地球が地球が大ピンチってシナリオなんだし。

 ゲームバランスは臨機応変に調整しながらやっていけばいいかもな。


「ゴッコ遊びってのは分かったよ」とハナナちゃん。

「そこはいいんだ、そこは。だけどさ、あたしらは何ゴッコをするのさ。オトっつぁんは故郷だから知ってて当然だけど、あたしらはガングワルドの事なんて知らないんだぜ?」

「それもそうだな。じゃあ質問コーナーにしようか。何が知りたい?」


 最初に口火を開いたのはハナナちゃん。


「もう濁声は止めたのかゴラァ♪」

「ごめんなさい許してください喉が死んでしまいます!」

「うん、許す」

「オトっつぁんカンゲキ〜〜〜〜♪」


「えっとね、じゃあ最初はこの服の事教えて。何なのこの服。材質ペラペラで装甲なんてあったもんじゃないし、魔獣なんかと戦ったら、簡単に破れちゃうよ?」

「むしろ破れるのもお約束の一つだが、あくまでお色気路線を狙う場合の話だからなぁ…」

「オトっつぁんが何の話をしてるんだか、サッパリわかんねぇよ!」

「君らが着てるのは戦闘服じゃない。これは学生服って言うんだ。男物は学ラン、女物はセーラー服って名前だよ。……いや、そりゃあ確かに、戦う超能力者が学ラン着てたり、美少女戦士がセーラー服だったりするけど、あれはフィクションだからねっ!」


「これって軍服じゃないんスか?」と、エンジャ氏。

「当たらずも遠からずってとこですかね。学ランは陸軍士官の制服を、セーラー服は海軍の水兵の服が元になったらしいですから。一応、冠婚葬祭に出られる礼服でもあるんですよ」


「ええっと、お父さん~。『ガク』が何なのか分からないです~」とナリザさん。

「へ? ガク?」

「だって、ガクの制服なのでしょう~?」

「あ~、いやいや、確かに間違いやすいですけど、これは学生服。ガクの制服ではなく、学生の服なんです」

「学生の服……あー、あー、なるほど~。学生の服だから学生服なんですね~~。失礼しました~♪」


「じゃあまた質問! ガクセーって何?」一周回って再びハナナちゃんだが、そこからか~い!

「ハナ坊はバカだからしょうがないけど、オレは知ってるッスよ♪」

「ハナナちゃんはお馬鹿だからしょうがないですけど~、ナリザも知ってます~♪」

「あ~~~~!!! この裏切り者~~~~!!!!」


 まるで漫才トリオだな。ホント見ていて飽きない。


「ハナナちゃん、学生ってのは、学校で勉強する人達の事、なんだけど…………ちょうどいいから私も3人に質問するね。前から気になってたんだけど、野薔薇ノ王国に勉学を教える学校って無いの? 塾でも良いんだけど。王国に来て1ヶ月経つけど、見たことも聞いたことも無いんだよね」


 3人は顔を見合わせ、代表してエンジャ氏が答える。


「オレの知る限り無いッスね」

「じゃあ勉強は? 知識や技術を身に付けるのはどうやってるの?」

「剣術の修行なら道場やら修練場がありますがねえ、勉学に関しては、良いとこの坊ちゃん嬢ちゃん相手なら家庭教師ですかね。魔法使いは良い師匠に巡り会えば色々教えてくれるでしょうが、大半は独学っすね。まあ、魔道士なんかになるような輩は、三度の飯よりも本が好きッスからね。わざわざ他人から学ぶ必要もないわけで」

「そうか……なるほどねぇ……」


 野薔薇ノ民の識字率の低さを鑑みると、義務教育がいかに大切かが分かるなぁ。

 すると突然、ナリザさんが手を挙げる。


「あ、はーい♪ ナリザ学校行きましたよ~♪ 修道女になるために、帝国の神学校に行きました~♪」

「ああ、なるほど、唯一神教の神学校ですか。帝国にはあるんですね」

「しかもナリザ、一ヶ月で卒業しちゃいました~♪」

「へ~、それはスゴイ!」

「でもヘンなんですよ。ナリザまだ見習い修道女なのに卒業しちゃったんです~。校長の修練長様から『ナリザが学べる事は、この学校にはもう無い』って言われて」

「へ……へぇぇぇ……それは……スゴイ……ですね」

「でも紹介された先には、愛しのミュリエルラ司祭様がいらっしゃったんです~♪ もうナリザ、運命感じちゃいました~♪」

「そ、そうか。うん。強く生きて……くださいね」


「ねえオトジ君、まぁだぁ?」

「もうちょっと待って!」


 まずい。女神様が退屈し始めたか。

 相変わらずふくれっ面はあざとカワイイが、退屈凌ぎにトンデモナイことをやり始めるかもしれない。急ごう。

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