3-14 闇のゲーム?
ハナナちゃんとナリザさんが緊張しながら見守る中、私は自分のリュックから油紙の包みを取り出し、机に並べた。
中身は管理人さんの手作りサンドイッチだ。
早朝のうちに三つはハナナちゃんの胃袋に収まったため、残りはあと七つ。七つか……。
ゴクリ
これは…まずい。三人で分けると一つ余ってしまうじゃないか! 大人げない二人のことだ。公平に分けないと戦争に発展しかねないぞ! どうする!? どうする雄斗次郎!
このお弁当は管理人さんが私のために作ってくれたものだ。権利は私にある。ならば私が三つで、二人は二つずつが妥当ではないか? しかし食べ物の恨みは怖い。不必要な恨みを買ってはこれからの仕事に支障をきたすぞ!
ならば私が我慢すれば全て解決するのではないか? 私が一つで、二人が三つなら、確実に丸く収まるだろう。…いや、ダメだ! それでは私の身が保たない! 働き盛りのオッサンがサンドイッチ一つでやっていけるかよ!
くそぉ! どうすればいいんだぁ! 何か…何か方法は……。
はっ!
そうだ! これだ! もうこの方法で行くしかない!
「クックックッ。みなさん、闇のゲームにようこそ!」
「なんですかお父さん〜♪ いきなりキャラなんか作っちゃっても〜♪ なんだかワクワクして来るじゃないデスかぁ♪」
「ありがとうナリザさん。ノリの良い人、私は大好きですよ〜。それではルーレットサンドイッチのルールを説明いたしましょう。
テーブルに置かれた七つのサンドイッチ。管理人さんが腕によりをかけて作ってくれた逸品ですが、実はその中のいくつかに恐怖のデストラップが仕掛けられているのです!」
「なっ! なんですって〜〜〜!! その恐怖のデストラップとは! い、いっ、一体何なのですか〜! お父さん!」
「なんと! たっぷりワサビが入っているのです!」
「ひぃぃぃぃい〜〜〜〜〜〜!!! そんなもの食べたらお嫁に行けなくなっちゃいますよ〜〜〜〜!!
………ところでお父さん、そのワビサビとは何ですか?」
「いやワビサビじゃなくてワサビだけど…。あれ? ナリザさんワサビ知らない?」
「はい。初耳ですよ。帝国でも聞いたことありません。毒物ですか?」
「いや、毒ではないけど……」
あれ? ワサビが一般的じゃない? オトギワルドに普及していないのだとしたら、管理人さんはどこでワサビを手に入れたんだ?
それはともかくとして、私はやばいことに気付いてしまった。ナリザさんがワサビを知らないという事は、管理人さんも知らない可能性があるということだ。つまり、リナリアちゃんの昼食にワサビを使用する可能性が、いよいよ現実味を帯びてきたという……。
いや、きっと大丈夫だ。ああ見えてリナリアちゃんは結構賢い。最小限の被害で危機を回避するに違いない。…今はそう信じよう。
「……毒ではありませんが、香辛料の一種でして、鼻がツーンとしますよ〜♪」
「鼻がツーン…ですか〜? ツーン……。ツーン……?」
「これがスッゲーんだよ! 口の中で化け物が大暴れしてるみたいでさ!」
「ほうほう、良くは分かりませんが、ハナナさんがそこまで言うのでしたら、スッゲー体験ができそうですね〜♪ ますます楽しみです〜♪」
「ええっと、ハナナちゃんもナリザさんもよろしいですか? それではルールの説明に戻ります。
ここにある七つの包みから、それぞれ二つずつ選びます。
食べます。
鼻がツーンとすれば当たりです!
一番当たりの多い人に最後の一つをさし上げます。
ちなみに当たりが出ても、全部食べなければ失格とします。
以上です。何か質問ありますか?」
「はーい♪ ナリザ質問です〜。当たりはいくつあるのですか〜?」
「分かりません! 全部当たりかもしれませんし、全部外れかもしれません。ただ、統計的に見て事故率は3割ですから、二つか三つではないかと推測しています。
他に質問はありますか? ……無いようでしたら、早速いただきますしちゃいましょう♪」
三者三様の宗教観に合わせて、それぞれの『いただきます』を済ますと、いよいよゲームが始まった。
「アバーーーーーー!!」
「グワーーーーーー!!」
「アイエーーーーー!!」
三者三様の悲鳴が避難小屋に響く。まさかの全員大当たりだった。




