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オトギ生活 〜オッサンだけど異世界《トンデモナイトコロ》に来てしまった。どうしよう〜  作者: 風炉の丘
雄斗次郎の長い一日 第3章 王国内地下迷宮にて全滅した探索者の定例回収業務
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3-5 注意事項

昨夜は頭が働かなくて上手くいかなかったんですが、今日は何とか上手くいった感じです。

 賑やかな冒険者家族が去ると、教会は本来の静寂を取り戻す。


「大変お待たせいたしました。こちらへ来てください」


 ミュリエルラ司祭に招かれ、私とハナナちゃんは聖法陣の中央に立たされる。どうやら『復活の儀』専門の聖法陣というわけではないらしい。

 近づいて初めて気付いたが、床に描かれた聖法陣は、唯一神教のシンボルであるマルバツをベースに、より複雑なデザインにしたものだった。……いや、逆か?

 きっと、床に描かれた聖法陣こそが本来のデザインで、それをシンプルにアレンジしたものを唯一神教のシンボルにしているのだ。なるほど。どんなに外見が酷似していても、キリスト教とは根っこから別物なんだな。


 ミュリエルラ司祭は説教台に置いてあった便せんに何か急いでしたためると、封筒に入れ、赤い棒状のものをロウソクの火であぶり出した。赤い液体が数滴封筒に落ちるとそこにスタンプのようなものをを押しつける。

 おおっ! 何かと思えば封蝋じゃないか! 赤い棒がロウで出来ていて、それを火で炙って溶かし、封にたらして、シーリングスタンプを押しつける。実際にやっている所を見るのは初めてだ。なんか格式高そうでカッコイイ。

 

「この手紙をナリザに渡していただけますか。ここまでやるほどの伝言ではないのですが、規則でして」

「はあ。それはかまわないのですが、ナリザさんという方を私は知りませんよ」

「大丈夫です。修道服を着ておりますから、一目でわかりますよ」

「わかりました。お預かりいたします」


 ハナナちゃんはかかわりたくなさそうに黙っているので、封書は私が代表して受け取った。せっかくのイケメン30代と親しくできるチャンスだったというのに。まあ、神父じゃ結婚できないから、意味ないと言えば意味ないが。

 封書の便箋は、唯一神教団のオリジナルデザインで、マルバツシンボルが印刷されている。ロウに押されたシーリングスタンプは薔薇を模したデザインだった。

 これはミュリエルラ司祭個人の紋章だろうか。それとも野薔薇ノ王国支部教会のもの? まあ、どっちでもいいや。私は預かった手紙を胸ポケットにしまった。

 ミュリエルラ司祭は説教台に戻ると、資料を見ながら現地の説明を始めた。出動前のブリーフィングだな。


「これからお二人に行っていただきますのは、王都ノイバラから見て南南西、歩いて2日ほどの距離にある、地下迷宮『ナノミノノ妖魔窟』です。地下五階まである中型の地下迷宮で、定期的に妖魔が湧き出す事で知られており、冒険者達にとっては定番の狩り場となっています。

 妖魔は生物ではありません。例えるなら、実体を持った幽霊です。倒すと肉体は消滅し、『コアメタル』と呼ばれる球形の鉱物が残されます。

 『コアメタル』は極めて純度の高い鉱物で、種類も貴金属から希少金属まで多種多様。高額で取引されるため、冒険者達はこぞって妖魔退治にせいを出しますが、深追いしすぎて全滅するパーティーが後を絶ちません。実に嘆かわしいことですが、放置するわけにもまいりません。

 すでに見習い修道女ナリザが現地に飛んでおりますが、彼女一人では心許なく、私は教会を離れられません。お二人のサポートがどうしても必要なのです。どうかよろしくお願いいたします」


 そう言うと、ミュリエルラ司祭は頭を下げた。釣られて私も頭を下げ返す。ハナナちゃんは……まあ、相変わらずだ。


「最後に注意事項です。転移した先には、数メータほど先に迷宮への入り口と避難小屋がありますが、くれぐれも寄り道をせず、真っ直ぐ避難小屋に向かってください。迷宮内での身の安全は保証はいたしますが、それ以外では出来かねますので。特に、西に広がる『虚無の砂漠』にだけは決して向かわないよう、重ねてお願いいたします」

「あの、もしもですが、転移した先に魔獣が徘徊してたとしたら、どうすれば良いでしょう?」

「そのような事故は滅多にありませんが、確かに可能性はゼロではありませんね。その場合は、運が無かったと諦めて、とにかく全力で走ってください。避難小屋にさえたどり着けば、生き残るチャンスもありますよ」

「そう言えば保証外でしたっけ? あははは……」

「転移先にはすでにナリザが向かっております。露払いが必要でしたらすでに済ましているでしょう。心配には及びませんよ」


 王都ノイバラが巨大な城壁に囲まれているのは、つまりそう言う訳なのだ。

 昼間は比較的安全だが、それでも腹を空かした獣が徘徊していることに変わりなく、夜になると活動が活発化するのでかなり危険らしい。

 だから一般人には、夜の壁外への外出が禁じられているし、昼までも単身での外出は注意が促されている。ハナナちゃんクラスの冒険者なら大丈夫なのだろうが、私は無理だ。喰い殺されてデッドエンドだな。


「それではお二方、準備はよろしいでしょうか」

「はい。覚悟完了です」と私。

「いつでもドーゾ」とハナナちゃん。

「それでは、まいります」


 ミュリエルラ司祭が、聞いたことのない言語で祈祷を始めると、聖法陣が輝き始めた。思えば今朝からこれで三度目の転移だな。今回はどのような風に飛ばされるのやら。


「迷わずお行きなさい! ナノミノノ妖魔窟!」


 その瞬間。私とハナナちゃんはまばゆい光に包まれた。

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