2-13 変態という名の紳士
よし、何とか更新。これで5日連続更新です。
「ボロ靴はアタシが責任を持って預かるとして、その間はどうするんだい? 裸足じゃ可哀想だし、仕上がるまで代わりの靴を貸そうか?」
「いやいや、せっかくですし、買わせていただきますよ」
「男物の靴はそこの二箱だけだから、荷台から降ろして勝手に探しておくれ」
ククルリさんは接客どころではないって感じで、婦人靴の展示を再開する。商品を荷台に置いたままでは商売にならないのだ。私とハナナちゃんは商売の邪魔にならないよう奥に入り、荷台から紳士靴の入った木箱を一つ降ろす。
「なんだよ、ろくなのが無いじゃん。おばちゃんよう、商売する気あんの?」
「女だらけの朝市じゃ男物なんて大して売れないんだよ。あんた達みたいな例外も希にあるから、最小限持っては来てるがね」
「ごめんハナナちゃん、もう一つの箱も降ろしてくれる?」
こっちの箱には、サイズの小さい靴しか入ってなかった。大きい靴は、多分もう一つの箱に入っているのだろう。
「あいよっと」
ハナナちゃんがドスンと降ろしてくれた木箱を開けてみると、もっと小さな靴が出てきた。あ、あれ?
「おばちゃん、これ子供靴だよ!」
「ああそうそう、朝市は主婦も多いからね。子供靴も一箱持ってきてたんだった。男物はもう一箱どっかにあるはずなんだけどね。女物の箱に混ざっちまったかな?」
「女物って、残りの箱全部じゃんかよ。しょうがねぇなぁ…。オトっつぁん探そうぜ」
「すまんハナナちゃん、ちょっと待ってくれるか」
私は必死に思い出そうとしていた。確か…確か…これくらいのサイズのはずだ。くそっ! 今朝も堪能したばかりだというのに、なんということだ! どうしても確証が持てない。しょうがない。一回り大きい方にしよう。
「ククルリさん、これを売ってくれ」
「子供靴? そんなもの、どうすんだい」
「下宿先の管理人さんにかわいい娘さんがいるんだけど、冷たい床を裸足で歩き回るから、今朝はとうとう風邪を引いちゃってさ。だから上履き用にと思って」
「ふーん。下宿先の娘さん……ねぇ」
「そう。リナリアちゃんって言うんだ。年齢は8歳だったかな」
「へ〜〜〜。名前も付けてるんだぁ〜〜」
「は?」
どういうわけか、ククルリさんがニヤニヤと微笑んでいる。私、何か変なこと言ったか?
「おハナや、いいこと教えてあげる♪」
「え? おばちゃん、なに? なに?」
「男はね…、男って生き物はね……、誰もが『変態という名の紳士』なんだよっ!」
「ヘ、ヘンタイという名の……シンシっ!?」
ククルリさん……。
貴方は一体何をおっしゃってらっしゃるのですか? 否定はしないけど。否定はしないけどっ!
「おハナ、ちょいと昔話をしよう。アタシが冒険者してた頃、パーティにムキムキマッチョマンな戦士がいた。
そいつには妹がいてね、一仕事して稼いだお金で、かわいい服やアクセサリーを買ってプレゼントしてたんだ」
「へ〜〜。良い話じゃん」
「ところがこのマッチョマン、実は一人っ子でね。妹なんかいなかったんだよ」
「それってどゆこと? 義理の妹とかなの?」
「女装癖があったのさ♪」
「ええええええええええええっ!!!!!!! そ、それはつまり、どういうことだってばさっ!!」
「つまりこういうこと。
仕事を頑張った自分のご褒美に、女物の服やアクセサリーが欲しい。
でも本当のことは誰にも話せないし、女性店員から買うのもかなり恥ずかしい。
だから『自分にはかわいい妹がいる』というカバーストーリーを作り、みんなの前でずっと『妹のために仕方なく買っているお兄ちゃん』を演じ続けてきたのさ♪」
「へぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪ そうなんだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
「だからおハナや。知り合った男がヘンな趣味を持っていても、寛容の心を持って接してあげないといけないよ♪」
「分かったよおばちゃんっ! すげぇ勉強になったよっ!」
へぇ〜。ムキムキマッチョマンのヘンタイさんも可哀想に。他人に理解されない趣味や性癖を持つと苦労するよなぁ。同情するよ。女装癖は一切理解できないけど。
………あれ? おかしいな。二人がジト目でニヤニヤしながら私を見てるぞ?
「何よ二人とも…」
「いやぁ♪ オトっつぁんからリナリアちゃんのことよく聞くけど、そういえばアタシ、リナリアちゃんに一度も会ったこと無いなぁって思ってさ♪」ニヤニヤ♪
「当たり前だろ。リナリアちゃんは病弱で、屋敷から外に出たこと無いんだぞ」
「へぇ〜〜。オトジっち、こりゃまた上手い設定を考えたね〜」ニヤニヤ♪
「設定って……。いや、リナリアちゃんはいるぞ?」
ニヤニヤ♪ ニヤニヤ♪
「だから、リナリアちゃんは本当にいるってば」
ニヤニヤ♪ ニヤニヤ♪
「リナリアちゃんは実在します〜〜〜っ!!!!」




