宇宙忍者その名はカグヤ
「では、お覚悟!」
「ま、ママーーッ!!」
死を覚悟した提督の股間から、じょろじょろじょろ……と情けない音が響き、ブリッジに独特の臭気が漂った。
その時だった。
破壊されたハッチの向こうから、やたらとのんきで、聞き覚えのある老人の声が響き渡った。
「おーい! カグヤ! こんなとこで何してるんじゃ?」
「へ? 師匠!?」
カグヤが素っ頓狂な声を上げる。そこには、大量の大根を抱えた師匠が、怪訝な顔で立っていた。
「し、師匠……爆発四散したんじゃ? それに、このおでんの汁で滲んだ手紙は!?」
胸元から取り出した焦げたメモ帳を差し出すカグヤに、師匠は呆れたようにため息をついた。
「それは『大根が無くなったから買いだしに行くから、後は(店番を)任せた!』という置き手紙じゃ! まったくカグヤはそそっかしいのう!」
「「はっはっはー」」
二人は顔を見合わせて楽しそうに笑った。
だが、次の瞬間。
師匠とカグヤの首が、完全にシンクロして「ギチギチギチ……」と音を立てながら、床で漏らしている提督の方へと向いた。その瞳には、一寸の慈悲もない商売人の光が宿っている。
「ひ、ひぃーっ! 助けてください何でもします! 首が千切れて爆発は嫌です! 何でもします!!」
「うむ。まあ、ワシらの大事な屋台が、お前さんの艦砲射撃で壊されたのは事実じゃからな」
師匠の言葉に、カグヤがポンと手を叩いて名案を思いつく。
「はい師匠! 損害賠償としてこの戦艦を屋台として貰い受けて、またおでん屋を続けましょう! 無料で働いてくれる(捕虜の)スタッフも沢山居るでござる!」
「待て、カグヤよ。おでん屋はもう古いのじゃ。これからはコンカフェの時代じゃ!」
「ええっ!? でも師匠、もう銀河中にコンカフェは蔓延っていてレッドオーシャンでござるよ?」
師匠はフッと不敵な笑みを浮かべ、抱えた大根を天高く掲げた。
「いいや、まだまだくノ一! それも『多重影分身による、全員が同一人物の美少女宇宙忍者コンセプト』は、銀河広しといえど絶対に無いはずじゃ!」
カグヤの脳内に、雷が落ちたような衝撃が走る。
(全員が拙者……! 右を見ても拙者、左を見ても拙者! どこを向いてもパステルピンクのミニスカ編みタイツくノ一が物理的におもてなしをする空間……!)
「師匠! まさに慧眼! 流石は師匠です!」
「さぁ、そうと決まれば忙しくなるぞ! 皆、心してかかるのじゃ! 目指すは銀河一のコンカフェチェーンじゃ!」
「「「お、おー!!!」」」
机の下から這い出てきた帝国クルーたちの悲痛な大合唱が、ブリッジに響き渡る。
こうして、銀河大帝国が誇る最新鋭旗艦デストロイスターは、翌日から宇宙最強のステルス系ニンジャコンカフェ『宇宙忍法・モモイロカグヤ』へと改装された。
泡を吹いていた提督は、ピンクの三角頭巾を被らされて厨房で大根を剥く毎日を送り、死にかけたヤギュウ一刀斎は「幻覚作用のあるお茶」を運ぶ看板ボーイとして第二の人生を歩むことになる。
銀河の平和は、カグヤの多重影分身による「萌え萌えキュン(物理)」によって、力任せに守られたのであった。
【あとがき】
この後、幼馴染の女剣豪と再開したり、帝国軍の艦隊による必死の営業妨害や、銀河一の賞金稼ぎである「ヘルメットを決して脱がない奴ら」の容赦ない襲撃に遭いつつも、多重影分身が乱舞する宇宙最強コンカフェと、宇宙忍者カグヤの物理的な伝説はどこまでも続くのであった!
劇終




