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花の想ひ出  作者: 栖旅アヲ


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居場所

翌朝。


花組が朝食を終え、広間へ集まっていると、キヌヤが一人で入ってきた。


「おキヌ、おはよ!」


丹奈が真っ先に手を振る。


「おはようございます。」


「昨日、夜に外出てた?」


「……見ていたんですか?」


「ちょっとだけ。」


丹奈が得意げに笑う。


キヌヤは少し困った顔をした。


「夜更かしは駄目ですよ。」


「おキヌに言われたくない!」


「それはそうですね。」


花組から笑いが起こる。


その様子を見ながら、サクヤヒメが口を開いた。


「キヌヤ。」


「はい。」


「昨夜の件について、玄灯にも伝えてください。」


キヌヤの表情が少し変わる。


「分かりました。」


花組の空気が静かになる。


「何かあったの?」


桜子が尋ねる。


「第七区画で、もう一人の者と会いました。」


「もう一人?」


「昨日まで話していた白い衣の者です。」


丹奈が首を傾げる。


「名前は?」


「本人は、自分を『在り色』と呼んでいます。」


「在り色?」


椿希が聞き返す。


キヌヤが頷く。


「元は亡き色だったそうです。」


その瞬間、花組の表情が変わった。


「亡き色……?」


梅依が小さく呟く。


「でも。」


キヌヤは続ける。


「人を襲うことはありません。」


「むしろ、亡き色を止めたいと言っていました。」


朝佳が腕を組む。


「それって、こっちの味方なの?」


「分かりません。」


キヌヤは正直に答えた。


「本人はそうしたいと思っているようです。」


「でも、サクヤヒメ様から見れば亡き色なんだよね。」


紫陽が静かに言った。


サクヤヒメは紫陽を見る。


「そうです。」


「なら。」


紫陽は少し考える。


「どうするんですか?」


「今は何もしません。」


即答だった。


「彼が何者であろうと、こちらへ害を与えていない以上、こちらから手を出す理由はありません。」


花組が顔を見合わせる。


玄灯がそこで口を挟んだ。


「ただし、信用するのも早い。」


「それは分かっています。」


キヌヤが答える。


「だからこそ、ボクが見ておきます。」


「一人で抱えるなよ。」


玄灯が言う。


キヌヤは少し驚いた顔をした。


「……はい。」


その横で丹奈が手を挙げる。


「じゃあ質問!」


「なんですか?」


「在り色って、モフモフ?」


「……。」


キヌヤが固まる。


紫陽も固まる。


「そこ!?」


桜子が思わず突っ込んだ。


丹奈は真剣だった。


「大事でしょ。」


「大事なのかな……。」


キヌヤが苦笑する。


紫陽が小さく呟いた。


「……僕も気になる。」


「紫陽まで!」


広間に笑い声が戻る。


けれど。


その日から花組の中には、一つの新しい言葉が残った。


在り色。


亡き色から生まれた、亡き色ではない存在。


それが敵なのか、味方なのか。


まだ誰にも分からなかった。

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