PLAY152 封印された『八神』⑦
何かが折れる音。
それを聞けばいったい何が折れたのだろうと思ってしまうだろう。
しかし、折れた音を聞いた瞬間、声を上げたのは蒼刃だった。
蒼刃はその音を聞いた瞬間、いったい何があったんだと思ってしまった。思い出されるのは目の前に迫ってきたディドルイレス大臣。その大臣が自分の攻撃を無視して特攻してきて、何かを掴んだかと思えば折れる音が聞こえ、額に走るそれを感じる。という流れ。
この流れでいれば淡々としているが、問題は音が聞こえた後。
額に感じるそれは喪失感と――激痛。
激痛は額の奥からくるもので、何かが頭蓋骨に入ったかのような、言いようのない激痛がどんどん広がっていき………。
「があああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!」
蒼刃は、叫んだ。
叫び、思わず尻餅をついて額を押さえる。
血は流れていない。流れていないが激痛のせいで押さえて痛みをなんとかしようとしてしまう。人としての本能なのか、押さえて痛みを和らげるのと同じ要領なのだろう。蒼刃は額を押さえながら荒い息を零し、奥歯をかみしめながら激痛を流そうと必死に堪える。
堪えて、目の前にいる忌々しい竜人の大臣のことを見る。
悪徳の竜人大臣は驚いた顔をしているが、自分の手に収まっているとがったそれを見て、すぐにシルフィードを見て、笑みをこぼす。
「は、はは………ははは」
笑みをこぼし、手に持っているそれを見て、それを天に掲げるように上に向けて持ち上げる。
まるで英雄が伝説の剣を手に入れた時、空に向けて切っ先を向けるような光景だ。
その光景を体現し、ディドルイレスはいびつな笑みをこぼしながら何かをつぶやく。
「やった………! やったぞ………! これで、これさえあれば………」
そう言った瞬間、ディドルイレスは視線をシルフィードに向け、そのままシルフィードが封印されている雪の球に向かって駆け出す。
「――! 待………! 痛っ!」
ディドルイレスの行動を見て、蒼刃はまさかと内心思うと同時に駆け出そうとしたが、いまだに額の激痛が収まらない。逆に悪化している痛みに耐えながら顔をしかめる。
しかめている間にもディドルイレスはシルフィードに向かって、ゆっくりとした走りを行い、確実に、着実に近づいている。
そして、手にしているとがったもの――蒼刃の角を握りしめた状態で駆け出していく。
「は、は、ははははははははははははははははは!」
笑い、笑い、笑いながら駆け出し、血走った眼にはシルフィードしか映っていない。そんなディドルイレスを止めようと蒼刃も手を伸ばすが、それも激痛のせいで遮られてしまう。
遮られながらも蒼刃はディドルイレスを止めようとする。
しかし、止めたところで、もう遅い。
「シルフィィィィィィドォォォオオオオオオオオ! 今こそぉおおおおおおおお! 私にぃぃいぃぃぃぃぃ! 力をぉぉぉぉおおおおおおおお!!」
「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
哄笑するディドルイレスは、叫びながらシルフィードが閉じ込められている氷のそれに蒼刃の角を突き刺そうとし、それを声で止めようとする蒼刃。
それと同時に空間内に入ってきた白銀の鬼士と天族の少女たち。
ディドルイレスたちのことを見て、すぐに止めに入ったのはマーメイドソルジャーと人魚族の魔人族の少女。特攻し、二本の剣を引き抜いて攻撃を繰り出そうとする。
切っ先からどんどん離れて、しなる鞭のように変わっていく剣を使って薙ぐように振るうが、それよりも先にディドルイレスは蒼刃の角をシルフィードが閉じ込められているそれに――
ざくっ!
と、勢いよく突き刺した。
ディドルイレスは狂ったように笑い、これでようやくと思った瞬間、意識は途切れ、ディドルイレスの上半身はそのまま下半身を見下ろす形となって地面に転がり、雪まみれになる。
同時に起きる――巻きあがる風。
雪を溶かし、突風となって蒼刃を、ハンナたちを襲い………。




