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nine.


残された子供たちは、泣くこともなくただ無表情に男の死体を見続けていた。


「さあ、埋葬しましょう」

エデンが号令をかける。


頷くと、家の横に穴を掘り男を入れて土をかぶせる。


墓標には「夢を叶えし者、ここに眠る」そう刻まれた。


エデンは知っていた。

男の全てをシンクロさせていたエデンだけは知っていた。

男の心を、気持ちを、口には出さない苦悩も。


何故、これほどまでに無情なものを作り上げられたのか。


男の悪人としての心は40歳を過ぎてからすさまじい勢いで増幅していった。


男の足で取りに行ける鉱物や材料の場所などはたかが知れている

少し不純物を含んだ鉱石や材料などもあったが、その中でもなんとかして綺麗なものを使用していた。


山の空気、水、大地、木、動物、食べ物、男の周りにあるもの全てが男の邪な空気で汚れていった。


そして、その山の全ては男を憎んでいた。

神をも凌駕した男……それは男の全てを憎む世界であった。


神は自分すらも超えた男に嫉妬した。

その男を生み出した世界、人類にも、嫉妬し絶望した。

その神の気持ちと男の気持ちが重なり合い、力が増幅した。


作成に集中するために頼んだ鉱石採取。

持ってくる物は不純物を多く含んだもの。

行けば行くほど汚れたものを持ってくる。


そして、汚れれば汚れているほどに強く、残虐な子供が出来上がった。


それは醜く膨れ上がった神の化身たちと言っても過言ではなかった。

もちろん男はそのことを知らない。

世界の誰も知らない。


男の一生が幸せだったのか、夢を叶えてそれで良かったのか

この物語を読んでいる私たちにはそれこそ、ただの噂話にしか過ぎないのだ。


ただ一つ噂に真実を重ねるのならば、男の生涯は全てに憎まれていたと、

誰ひとり彼を擁護するものも、本当の意味で信頼するものもいなかったと言える。

彼の苦悩はそこに気付いていたからこそ、ということは確かである。

だからこそ……彼は死を選んだのかもしれない。






男が死んだあと、残された8人はどうなったのだろうか。

新しい命を生み出すこともない、殺すことしか出来ない8人。


8人は男の言いつけを守り続けた。


新しい命が芽生えれば刈り取っていき、潰す。

それを繰り返し、世界は命の生まれない世界となった。


自分たちが壊れればお互いでメンテナンスをし、直す。

男の残した資料や本を読み知識を付ける。


ただただ、命を刈る為だけに動き続ける。


男の最後の命令だから。

好きにしてもいいと言われても、所詮彼女らは命令されて動くロボットなのだから。

そこに明瞭とした意思はない。


ただただ動き続ける人形なのだ。








こうして男の望む世界は永遠に守られ続けた。


神に憎まれながらも、民衆に憎まれながらも、全ての生き物に恨まれながら。

憎悪が渦巻く世界に囚われ、死んでからも抜け出せない重い罪を背負い、永遠に苦しみながら男の夢の物語はここで終わる。




終了です。

ご愛読ありがとうございます。

最後は結構無理やりな気もしましたが……すみません。

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