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「まさか、桐生院神奈嬢の霊力が白雪有栖嬢に劣るだなんて……!」
タキシードや華やかなドレスを身に纏った紳士淑女が集まる会場内、年に一度開かれる退魔師としてのレベル測定が行われる霊力測定会で、事件は起こった。
最上位級だと言われていた神奈の霊力測定値が、格下の白雪家よりも低いという結果を出してしまったのだ。
「桐生院さん、顔色が悪いですけれど、大丈夫ですか」
そう声をかけてきたのは薄桃色のドレスを身に纏った可憐な娘、白雪有栖。緩くウェーブがかった長い髪には、煌びやかな宝石が埋められた髪飾りが輝いている。
神奈とは対称的に守ってあげたくなるような愛らしさがある有栖に、周囲の男性陣からは熱い視線が向けられていた。神奈が凛と咲く白百合だとしたら、有栖は愛らしい撫子のよう。美人よりはかわいいに分類される彼女もまた、社交界では注目を浴びる令嬢の一人だった。
「体調が悪いようでしたら、医務室へご案内しましょうか──」
「お気遣いいただかなくて結構よ」
思った以上に動揺していた神奈は、ふいと視線を逸らし、声を掛けてきてくれた有栖に不愛想な態度を取ってしまった。「あ」と思ったが、それも後の祭り。その瞬間、周囲から神奈に怪訝な表情が向けられた。
「白雪様に随分と冷たいのね」
「桐生院様があのような振る舞いをなさるのは、いつものことでしょう」
「もう少し愛嬌があってもいいものを」
「婚約者の芦屋様のお相手は、やはり白雪様の方がよかったのではないかしら」
心ない言葉を浴びせられ居心地が悪くなり、神奈は気づけば両手をギュッと握りしめた。すると、有栖が側に寄り、神奈の耳元に口を近づけた。
「……芦屋様もがっかりされたのではないかしら。退魔師としての力を見込んで、桐生院家の貴女と婚約したというのに」
御幸の名前を出された瞬間、目を見張った神奈。ふと視線をずらせば、「そう思いませんこと?」と笑う有栖と目が合い、俯くことしか出来ない自分に、惨めな気持ちが増すようだった。
(そうね、きっと御幸様も失望されたはず……)
そう思うと、会場のどこかにいるだろう御幸を探す気にもなれず……。神奈はついに堪えることができなくなり、周囲の注目から逃れるように会場のホールから飛び出した。




