5
◇◇◇
その後、食事を終えた御幸は、神奈を自宅まで送るため桐生院邸へと向かっていた。先ほど御幸が提案した通り、今は神奈と手を繋いで街中を歩いている。
(かわいい……)
遠慮がちに握りしめられた手。頬を赤く染める初々しい婚約者の姿に、御幸は口元を緩めずにはいられなかった。
互いの想いを打ち明け、御幸は神奈と名実ともに両想いとなった。
あまりにそっけないので、ずっと彼女に嫌われているのではと悩んでいたからこそ、神奈の口から「好き」という言葉を聞けたことに、御幸は心底喜びと安堵の気持ちを噛みしめた。
何せ、彼女は御幸にとって初恋の女の子。嬉しくなわけがない。
ところが自分は相当欲深い人間のようで、神奈の気持ちを知ってしまった今は、「もっと自分を好きになってほしい」「彼女ともっと触れ合いたい」などと、どんどんその想いがエスカレートしている。
今も「特訓」などと言って神奈のことを丸め込み、自分の奥底に眠るドロドロとした気持ちを満たしていることに、御幸は苦笑を漏らした。
思い出すのは、彼女を「東雲」の隊舎まで迎えに行った時のこと。
ちょうど正門から出てくる神奈を見つけ、離れたところにいる婚約者に手を振ろうとした。けれど、その隣には同僚の朝霞夏樹が並んでいた。
誰とでも仲良くなれる親近感と、爽やかな風貌をもつ好青年。御幸もプライベートで食事を共にしたことがある、東雲の退魔師の一人である。
距離があったので二人の会話の内容までは判明しなかったのだが、仲が良さそうな様子に、御幸はいつも感情を表に出さず、涼しげな表情で自分の隣に並ぶ婚約者の姿を思い出した。
(楽しそうだな、神奈さん……)
そう思うと、自然と拳に力がこもる自分に気づく。
大人げない、とは思っている。こんな些細なことで嫉妬するなんて。
けれど御幸にとって、自分の心を動かすのはいつだって彼女ただ一人だけだった。
他の男といるのを見て妬いてしまうのも、涙を流す姿を見て胸が締め付けられるのも、彼女が望むものは全て叶えてやりたいと甘やかしたいと思うのも。「彼女だから」だと、そう思うのだ。




