9.神殿に到着
「姉さん、見えてきたよ。」
「本当ね!綺麗だわ」
馬車が公爵邸を出て30分ほどがたった。
やっと、神殿が見えてきた。白い建物に、てっぺんには大きなベルがついている。前世の結婚式場を思わせるデザインだ。神殿という感じだなぁと、眺めているとアンナが手をそっと握ってきた。
「お嬢様、そろそろ瞳を…。」
そっか、お父様は神殿に着いたら外すようにおっしゃっていたわ。
「自分じゃはずせないから外して貰える、アンナ?」
「はい」
アンナは私の向かい側に座り、手を伸ばしてきた。ルイスはカーテンをしめて、外からの視界を遮る。
そういえばずっとこの瞳を付けていた。もちろん新しいものに変えたり目が痛い時には外していたがもう、体の一部のようになってしまっている。
「お嬢様、取り終えました。」
そう言ったアンナの手には緑の瞳が2つあった。
視界がクリアになったように感じる。
「ありがとう!」
アンナにお礼を言ったとき、レイトが驚くのが見えた。そういえば、レイトは今までルーナのこの瞳を見たことがない。お父様からは聞いていたんだろうけど。
「どう、レイト?」
「とっても綺麗だよ…」
「本当?ありがとう!」
アンナやルイスは時々見たことがあるだろうにじっとこちらを見つめて来る。レイトは何やらぶつぶつとひとりごとを言い出してしまった。
みんな大丈夫?
ゴトン、と馬車が止まった。サッとルイスが私にに帽子を被せる。視界がだいぶ狭くなってしまって、足元しか見えない。
「ルイス、これじゃ前があまり見えないのだけれど…。」
「お嬢はアンナがリードします。」
「…分かったわ。」
馬車のドアがあく音がして、ルイス、アンナ、そしてレイトが馬車を降りる。私も席を立って馬車の入り口まで出た。
「姉さん、気をつけて」
「ありがとう」
先に降りたレイトの手を取り馬車から降りる。よく分からないが人が沢山いるらしい。ざわざわ声や歩く音が聞こえる。
それもそうよね。なんたって国の12歳の子供全員が集まると言っても過言じゃないもの。
レイトから手がアンナへと変わった。離しぎわに、「絶対に一人にならないのでね」と言われた。でも、アンナが手を離さない限りそんな事は起きない。「大丈夫よ」と答え私たちは神殿の中へと歩き出した。
(レイト)
僕は初めてルーナの黄金瞳を見た。
僕がルーナの瞳について聞いたのもつい先日だった。公爵から呼ばれた時、その話しをされたのだ。まさかあの黄金瞳とは…聞いた時には信じられない部分もあった。
黄金瞳
それは、何十年かに一人生まれるか否やという能力者。黄金瞳を持つ者は必ず何かの才に秀でている。ある者は、魔力に。またある者は、身体能力に。
そんな凄い能力を持っているというのだから公爵が隠すのも仕方がない。昔、黄金瞳を持った女の子が賊に目を取られたというのを耳にしたことがある。そんな事が起きては後悔しても仕切れないだろう。更に彼女は公爵令嬢だ。外見も美しい。貴族たちが何をするのか分からない故に隠すしかなかったのだろう。彼女は知らないだろうが。
本物は、彼女の目に収まっている黄金瞳は、何とも美しかった。今までの緑の瞳も綺麗だったが、黄金瞳は綺麗過ぎる。
神殿に着いたとき、帽子を被っていても佇む気品さ、美しいスタイルで周りがざわざわとした。顔が見えなくて可愛いのがわかるのだ。周りの視線がイライラする。アンナとルイスも同じようだ。
さっさと終わらせて帰ろう。そう思い、アンナにルーナを預け僕たちは神殿に入っていく。