10.神殿の内部と魔力測定
神殿の中はとにかく広い。そりゃあ、国中の子どもを一斉に集めることが出来るだけはある。外見はスリムなのに凄い。
ただ、この帽子のせいで内部をしっかり見ることが出来ないのが残念で極まりない。足元はただただ白くて何の面白みもない。
床に面白みなんて求めちゃいけないのかもしれないけど…。
アンナに手を引かれてひたすら奥へと歩く。横にはルイスとレイトもいて、更に周りには同い年の子どもが私たちと同様に儀式が行われるという奥を目指して歩いている。中には貴族の子ども達もいる。使用人を従えて堂々と歩いている。
たまに感嘆のようなため息を漏らす子や友達と楽しそうに話す子がいた。
そういえば、テスターって来てるのかな。
あの日以来、テスターは私の怪我が治るまで公爵家の出禁を喰らっていた。私が治ったと手紙を出した途端遊びに来たけど…。なんだかんだルイスやレイトとも仲が良いし一緒にいて楽しい。
それにテスターもこの1年で大きく成長した。身長がね。ルイスにも勝る程高くなった。けど、性格はいつでも変わらない。それは、何だかほっこりするわ。
「ねぇ、アンナ。テスターって今日来てるの?」
「えっと、テスター様は来てますよ…たぶん…。」
何で言い淀んでるの?何かやらかしたのかなテスター。よくお父上に怒られてたからなぁ。
テスターは公爵家の次男だ。昔から仲の良い親の関係で8歳のお茶会の時に知り合った。まぁあんなに仲良くなるとは思って無かったけど。
公爵家ってやっぱり貴族の中で王家を除いた最高権力をもっているから品格とか重圧とかはある。ましてはこの国には公爵家は全部で5つだけ。テスターも次男といえども色々言われてきたんだろうなぁ。でも、あれは羽目を外しすぎだけど。
「お嬢様、もうすぐです。」
「分かったわ」
奥へと遂に着くらしい。周りから「凄い!」「大きいっ!」といった声が聞こえて来る。
私も少しだけ見たいっ!
そう思い頭を少し上げようとしたところで、「お嬢」と横から声がかかった。ルイスだ。
仕方なく上げようとした頭を下げた。悲しい………
きっと大きいのであろう大門を通ると、そこには椅子が大量に並べられていた。
うわっ準備と片付けが大変そう…。一体何脚あるんだろう。でも、この空間に大きな違和感を感じる。どうしても来るときに見た外観と釣り合わない程の広さ。帽子で隠れていて全体は見えないけど広すぎる。
これって魔法じゃない?
「アンナ、この部屋広すぎない?魔法が使われてるの?」
私の問いにアンナが手を握る力を強くして答えた。
「はい、どうやらこの神殿全体に空間系の魔法が使われているようです。」
やっぱりそうなんだ。じゃあこの神殿で迷子になる=(イコール)ヤバイって事か!そういえばアンナはこの神殿に来るのが初めてだって言ってたわ。12歳になったら受けるはずだけど何故なのかな?でも今はそのことについて聞けない。
とにかく!絶対にアンナの手を離す訳にはいかないわ…!!だって迷ったらきっとひとたまりもないもの!
4人で後ろの方の椅子に座った。子ども達はまだまだ来ていて、儀式挨拶が開始されるのは15分後だそうだ。
15分程たつと子ども達も殆ど集まって席に座っていた。途端、会場が暗くなり、前方のステージに光が集まる。
だーいぶ、いや、けっーーーこう遠くに小さくお爺様が立っているのが見えた。真っ白な服をきた神父様のようで今から話すみたい。
この距離で届くのかしら?
「こんにちは。今年12歳になった少年、少女たち」
ふわ~と耳に声が届く。マイクを使う訳でもなく、この距離でも声がしっかり届くのはもしかしなくても魔法だろう。風の中級魔法の本にあった。声を遠くまでとばす魔法。使い方によっては凄く便利だ。前世の電話やマイク、メガホンの役割を果たしてくれる。
お爺様の話しはものの数分で終わった。今から指定された各部屋に分かれて魔力測定を行うとのこと。
帽子の隙間からちらりと見えたのだけれどこの部屋、たくさんの小部屋と繋がっている。壁にはたくさんのドアがありドアの上に数字が割り振られているのだ。
『ルーナ マルチウス様、1番扉の部屋へ』
「…!!」
頭の中にアナウンスの声が聞こえて来た。これは念話?でも少し違うような…とにかく面白い!日常にあまり魔法がない分、ここにきてから見る魔法はとにかく面白い。
「アンナ、1番の部屋へ来るよう指示があったわ。」
「僕は11番なんだ。離れてしまうね…。終わったら会おう」
「俺は23だ。遠いな」
みんな大分離れてしまうみたいだ。ルイスなんか遠すぎる。
「みんな迷子にならないよう気をつけて!また、後でね」
「姉さんが一番気をつけてね」
「お嬢、アンナと離れないで下さいね。すぐ、戻ってきますから」
なぜ私はこんなに心配されているのかな?そんなに迷子ならないと思うけれど…。
手を振って2人と別れる。まぁ、帽子のせいで全然姿は見えないけれど。
「行こう、アンナ?」
「はい。私についてきて下さいね!」
う~ん、ついてくるって言ってもあなた手を握っているじゃない?これじゃ、連れていって貰うだけよ。
少し歩くとすぐに1番の部屋に着いた。アンナがノックすると「どうぞ」と中から男の人の声がかかった。
アンナが扉を開け、中に入るとそこは白い壁に包まれた小さな部屋だった。真ん中に机と椅子が置いてあり、机の上には透明な球がある。あれは、本で読んだこともありわかる。あれが魔力測定機だ。
手を触れると対象者から自動的に魔力を吸い取る。そして、魔力の量に応じて水晶の中を満たす。平均の魔力の量だと水晶の三分の一ぐらい。さらに、その人の魔力の属性に応じて水晶の色が変化する。
白い衣装を身にまとった人に座るよう促されて椅子に座る。
「すみませんが、お付きの人は同席出来ない決まりとなっております。この先の扉の先の右手に待機部屋がありますゆえ、そこでお待ち下さい。」
アンナと離れる!?そんな事困る!!だって、帽子で視界が全然ないもの!
「どうしてもダメなのでしょうか!私はルーナお嬢様のメイドとして肩身離れずと公爵様から仰せつかっております!」
アンナが訴えると男の人は困ったようになった。そもそもこの男の人に瞳を見られてしまう可能性が高まるじゃないか!!
「あのう…公爵様から何もお聞きになっておりませんか?私は公爵様から直々にお願いされたのですが…。お嬢様の瞳の事も知っております。ご安心下さい。」
へ…?
アンナも驚いているのか言葉が出ない。お父様は一言もそんな事言って無かったし何が何でも瞳を見せないようにとあれほど言っていたのに…!!
「分かりました。アンナ、別室にて待機していてちょうだい。」
お父様が信頼している人のようなので私はアンナを別室にて待機させる事とした。測定だけだからきっとすぐに終わるだろうし…。
「………はい。承知いたしましたお嬢様。」
しぶしぶと言った風に頷くとアンナは用意されている待機部屋へと移動していった。
「さて、それでは始めたましょう。先ほども言った通り、私はお嬢様の瞳について知っています。なので帽子を取って頂いて大丈夫ですよ。」
「お気遣い感謝いなします。」
ずっと窮屈だった帽子をとった。
向かいの椅子に座る男の人はお父様に近い年ぐらいだ。優しい顔立ちでニコニコとしている。
「本当に聞いていたとおり美しい瞳ですね。」
「ありがとうございます」
一体誰から聞いたのか分からないけど、多分お父様だろう。
「それでは、この水晶に手を触れて下さい。」
指示に従い手をかざす。手のひらがじんわりと暖かくなり、魔力が吸い込まれていくのが分かった。
水晶の中で魔力が水のように溜まっていく。そして、半分を少し過ぎたところでピタリと止まった。平均よりは多い。だけれど、魔力が多い人は水晶の中が一杯になるそうなのでそこまでルーナの魔力は多くない。
属性は……!!
「これは…!!2属性持ち!!」
水晶の中で溜まった魔力は2種類の色をしていた。3:2程の比率で大地を表す茶色と雷を表す黄色になっている。2属性持ちは毎年、2人程現れる。そして貴重なのだ。
「お嬢様、報告書を作成するのでこの必要事項に記入をお願い出来ますか?」
そう言われ手渡された紙へ必要事項を記入していく。
それにしてもルーナが2属性持ちとは思っていなかった。最悪、魔力がない可能性もあったから、驚きだわ…。でも、お父様の魔力である雷を引き継げたのは素直に嬉しい。
紙を書き終え渡すと退出しても良いと言うことを言われた。帰り際に「お嬢様は大変優秀であられる。学園でも存分にその力を発揮して下さいね。」と、言ってから。
学園か……。前世では勉強ばっかりだった。何せ良い成績を取るために…。それが家族の願いでもあったし。今回は学校じゃなくて学園だけど変わらないよね!楽しみたいわ!!
そう思いアンナが待っている部屋を目指して歩き出した。




