21.適当な担任
「…………。」
「…………。」
……………ッ……。お、お願い。そんな目で見ないで…。
校舎入り口に集まったC組のクラスメートであろう人から視線を一気に浴びる。その中で私を抱えているテスターがキョトンと小首を傾げた。
「どうしたんだ、ルーナ?」
「…ッ……………!」
なんで、なんで貴方がそんなに気楽なのーー?!
女子棟から私の足では集合時間に間に合わないからと何故か抱えられた私だけれども。途中からルイスからテスターへと渡り集合場所までやって来た。やって来たのはいいけども…!!
いたたまれない。ものすごくいたたまれない!
公爵令嬢を抱えてやって来た公爵家令息。周囲はどういう目で私達を見るだろうか。2つに絞るとするならば、
1.2人は恋人
2.公爵令嬢ルーナが公爵令息テスターを下僕として扱っている
……………。どちらとも良くない。うん、良くない。噂というのはあっという間に広がる。特に前世からだが学校というのは特にだ。更にここでは貴族も噂が大好物だと聞く。実際に社交界に参加したことはあまり無いので聞いた話しになるが、お父様がそう言った事に頭を悩ませていたのを覚えている。
テスターにも迷惑が掛かりまくるし、私の評判も地に落ちる。どうしよう、負の連鎖だ…!!
そもそも時間にギリギリになった私が生んだたねなのだけれども!と、とにかく下ろしてもらって皆と集合しよう…。
降ろして!と目でテスターに訴えるけど首を傾げてこちらを見るだけで降ろす気配がない。なぜ、伝わらないのか。うん。テスターがものすんごく鈍感だから。たまに鋭いのに基本、鈍感過ぎてどうしようもなくなることがある。それは長年の付き合いで心得ている。ちゃんと心の内を伝えなくちゃいけない。
「…あ、あのさテスター…?降ろして欲しいんだけど」
先生が来る前にこの状況を打破し無くてはならない。こんな所をクラスメートだけじゃなく、教師にも見られたなら今後うまくやって行けそうにない。て言うか、私の心が折れる。
「あぁ、分かった」
「運んでくれてありがとね?ルイスも」
そっと降ろしてもらい、数億年ぶりにでも地に足を降ろしたような感覚になりながらお礼をいう。もちろんルイスにも。羞恥心はあったものの初日から遅刻というのも公爵令嬢としてアウトだ。だから、助かった。恥ずかしいけど!!!
「揃ったかー?点呼するぞー」
程なくして校舎から歩いてきた男性より声がかかった。あの人がC組の教師らしい。中々に若い。魔法は年を重ねるごとに技術が高まると本で読んだことがある。生徒に教える程なのだから凡人では無いはず。何たって教師は常に生徒の少し先を行くものじゃない?
それにしても教師だが、何とも格好いい。グレーの長髪を1つにまとめ、肩から流している。瞳は紫で少し鋭く、けど優しさを残すような。顔も整っているし、体格も良い。スラリと長身なのに引き締まっているのが服越しにもわかる。教師は鍛える必要無いだろうし、不思議だ。
「よーし、そろってんなー。校舎に入るぞー。めちゃくちゃ広いからはぐれんなよー」
『はーい』
先生は語尾が伸びる口調が癖らしい。そして、先生に返事する人の元気よさよ。てか、先生が私達の担任なのか、名前すらも教えてくれていない……!!!??
「失礼ですが先生、貴方はC組の担任なのですか?」
テスターが手を上げて先生に問う。
そうだよね!?そこ気になるよね!テスターの質問でようやく「確かに」にとなり始めるクラスメート達よ!大丈夫か?それに、テスターって敬語使えたんだね。結構心配してたけど大丈夫だったみたい。
「あー俺ね。俺、担任になったらしい。なんかなぁ、元々このクラス担当のじじ…老人がいたんだけどよー」
今、じじいって言いかけたよね!?周りのクラスメート達も言葉に衝撃を受け固まっている。先生はボリボリと頭をかいて言葉を続ける。
「それが、突然ぽっくり逝っちまってよ」
!!!!?!?!!!?!!?!?!!!!?!
な、何ですってー!?ぽっぽっくり逝ってしまった!?逝ってしまったってつまり、そういうことだよね。な、何でぇ!!?
「まあ、それで急に俺が受け持つことになったって訳さー」
淡々と話すが驚きで状況がうまく飲み込めない。もちろん、面には出さないが。そこは公爵令嬢として鍛えられてるので。
ちらりと横を盗み見るとテスターは口を大きく開けてポカンと。ルイスは真顔で先生を見ていた。
テスターも私と同じく公爵令息の授業を受けたはずなのに全くもって隠せていない。驚きと動揺が面に出過ぎだ。予想してたけど。
ルイスはテスターと真逆でなんか怖い。真顔な上に目が死んでる。考える事もやめたような。気持ちは充分に分かるけども。
「というわけで、もういいな?あとは教室に入ってからなー。ついてこーい」
そう言うがいなやスタスタと校舎へ入っていく先生。それに続いて慌ててついて行く。てか、足長い!先生は普通に歩いているのに皆小走りだ。私は皆より更に一歩が小さいのでほぼ走るような形。その横でテスターとルイスは普通に歩いていた。2人とも足が長いとういことね……!!
「どうしましたお嬢?抱っこしましょうか?」
恨めしくて見ているとルイスがそう言って手を伸ばしてきた。ギョッとする私に対して周りからは「キャーッ!」と誰が言ったのか黄色い声が聞こえてきた。ルイス、モテるのね。でも、その手は引っ込めてくれないかしら?
「ルイスっ…気持ちは……嬉しいけど…っ……いいわ」
昔は結構走り回っていたって言うのに今じゃ直ぐに息が切れる。半ば息を切らしながらも伝えればルイスはにっこりと笑った。
何故だか笑顔が眩しい。
「分かりました。じゃあ、頑張りましょうね」
再び前を向けば前との差に驚いて急いで歩を進めた。
「ここがお前らの教室だ。すっげー遠いから転移魔法を覚えるこったなー」
そう言って先生の指さす方向に目をむけると、前世でいう大学のような教室が広がっていた。
そしてなんと言っても先生の言うとおり遠い……。やっと着いたもの。歩き始めてから30分程。結構速めで歩いて30分なのだからこんなの毎日通ってられない。だからこその転移魔法なのだけれど。
けど、転移魔法っていつごろに教えてくれるのかしら?もしかして今日とか……………ハハハ………はぁ…。
「席はどこでもいいやー。まぁ適当に座ってくれ。んでーテストが終わったら席替えなー」
適当なぁ。まあ、気楽そうでいいか。そういうのも悪くないし。
「ルーナ、一緒に座ろ?」
「良いわよ。ルイスは?」
「俺も一緒に座りまーす」
ぞろぞろと席に座り出すクラスメート達に続き私達も空いている席に座った。テスターとルイスは私を挟むようにして。
全員が座り終わるのを確認すると先生が気怠げに口を開いた。
「んじゃあ、自己紹介するかー。そういえば俺も何も言ってなかったな。俺はカルメン ドールトリアだ」
カルメン ドールトリア!!?あのカルメン!?クラスメート達は気が付いていないようだがカルメン ドールトリアと言えば国を代表する魔法士だ。影の実力者で国の表舞台には出てこないと有名の。だから、皆知らないんだろうし私達ですら情報が少ない。そんな大物が担任だなんて驚きだし、これからの授業が楽しみすぎる!
ちらりと両サイドを盗み見るとルイスは驚いたようにカルメン先生を凝視。テスターは……あれ?テスター、もしかしてカルメン ドールトリア魔法士を知らない……!?ふ~んと言うように眠そうにあくびしている。
嘘でしょ。なんで公爵令息である貴方が知らないのよ……!!?
「はい、じゃあこっちから自己紹介」
「はい!」
教室の左前から指名され自己紹介をしていく。顔見知りもいるが殆どが初対面だ。友だちを作るためにはまず名前を覚えることだよね!残念なことにさん達はいないみたいだし、友だち作らないと!
前の人が自己紹介し終わって私の横に座るテスターの番が回ってきた。テスターは勢いよく立ち上がるとクラスを見回した。
「俺はテスター フォルトリアだ。勉強はあまり好きじゃないが遊ぶ事は大好きだ。宜しくな!」
テスターが座ると次は私の番。まずは第一印象よね!………いや、もう集合したときに決まってるわね…。
半ば諦めながら姿勢良く立つと周りの視線が突き刺さるのを感じた。そんなに睨まなくたって良いじゃない?女子の皆さんよ。
「初めまして、ルーナ マルチウスです。気軽に声をかけて貰えると嬉しいです。宜しくお願い致します。」
頭を下げて一礼する。少しは印象良くなったかな……。
恐る恐る顔を上げると、クラスの雰囲気がシン…となっていて皆ポカンと口を開けていた。テスターとルイス以外は。何で2人は笑ってんのよー!私が何したって言うのー!?!?この雰囲気なにー!?!?
だいぶ間空いちゃってすみません!
次も頑張ります!




