99 リッチィさん、洗剤を提供する
連投いきます!
「リッカさん、起きてますか?」
コンコンとドアをノックする音が聞こえる。
どうやら朝になったようで、ミラさんが起こしに来てくれたようだ。
「……ふぁい……起きて……ます……よ」
眠い目を擦りベッドから起き上がる。
すると、ガチャッとドアが開きミラさんが入ってきた。
「大丈夫ですか? 朝ご飯が出来てますけど、食べられます?」
「大、丈夫……です……」
元から朝は弱いのだが、昨夜は色々とミラさん達と夜遅くまで話していて寝不足気味だ。普通通りに起きているミラさん達が凄い。
それにミラさん達親子は宿屋を営んでいるので、朝の起床時間も早いはず。どうしてそんなにすんなりと起きれるのだろうか。
ふらふらとしながらもミラさんに支えられ、一階へと降りていく。
「リッカちゃん、おはよう!」
テーブルに朝ごはんを並べている途中のアリアさんに挨拶された。
「おう、随分と眠そうだな」
テーブルについていたおじさんも挨拶してきた。
「おはよう、ござい……ます……」
まだ少し眠いけれど、何とか挨拶を返して席につく。アリアさんが気を利かせて濡れたタオルを渡してくれたので、ありがとうございますと顔を拭く。
朝ご飯は昨夜の残りのとん汁だ。
それとウインナーとベーコンを挟んだパン。
うん、パンに挟まれた厚みのあるベーコンが凄いはみ出している。何人前だろうか。え、一人分? ……半分しか食べれませんでした。
気合いでなんとかご飯を食べ終えていると、
「リッカさんは今日はどうするんですか?」
ミラさんが今日の予定を尋ねてきた。
「そうですね。今日は魔王城からお願いされた仕事があって、ちょっと人間族の奴隷を探しにいかないといけなくて……」
試験的な試みではあるが、ミラさんに人間族の奴隷が必要な事情を話していく。
「それで人間族の奴隷が必要なんですね」
「はい、一応は私が発案者なので……」
気は進まないが、自分で提案して通ってしまったのでやらないといけない。
「お前なぁ、凄い嫌そうな顔をしてるけど、魔王城で働けるって凄いことなんだぞ……」
私の憂鬱な顔を察し、おじさんが苦笑いをしながら話してくる。
確かに魔王城で働くの凄いことだ。
日本での職業でいえば、国家公務員扱いだろう。
だが、魔王城の内情を知るとお断りである。ブラック過ぎて笑えない。だから奴隷を冗談で話したら上に通ってしまったのだ。
「働きたくない……」
そう呟くと三人から変な目で見られた。
「あ、そうだわ。リッカちゃんにもう一つ聞きたかった事があったのよね」
変な空気を吹き飛ばすかのように、アリアさんが聞いてきた。
「洗濯ですか?」
「そう、リッカちゃんが初日に泊まった時に手伝ってくれたでしょう。あの時の洗濯物が凄かったのよ」
少し考え思い出す。
そう言えば、初めてアリアさんのお手伝いをした時に、洗濯物を頼まれて洗った覚えがある。
確かあの時は、異世界の洗濯の仕方が分からなくて、チラシから購入した洗濯洗剤で洗ったような。
アリアさんから詳しく聞くと、どうも私が洗濯した物は全て新品同様に綺麗になってたそうだ。
最初は私が『家事』や『洗濯』スキルを持っているのかと疑ったようだけど、ミラさんに聞いた私のステータスにはそんなスキルがなかったので不思議に思ったとか。
「もしかして、これですか?」
前回の使い残り、初めてチラシのスキルで購入した時の洗濯用の洗濯を取り出す。赤と白の箱で、一回しかまだ使用してないのでたっぷり残っている。
「はい、どうぞ。アリアさんにあげます」
「全部もらっちゃっていいの?」
「別にいいですよ。私は使わないですし」
実際に本当に不要なのだ。
ダンジョンに帰れば、エルダーゾンビのお母さんが全てやってくれるからね。食事の用意から、家事・洗濯・お掃除まで。本当に助かってます。食事だけは希に私が作るけど。
アリアさんに洗剤の使い方を説明し、洗い流した水だけは井戸や川に流さないように注意する。汚染されるかもしれないので、洗濯場に大きな溜池を後で造り、そこに貯めてもらうことにした。処理はダンジョンに待っていけば、勝手に吸収されて消えるだろうし。
洗剤の在庫に関しては一つしかないので、後日チラシで手に入ったら追加すると約束した。昨夜渡した醤油の調味料と一緒に。どうやら醤油を気にいってくれたようだ。
「リッカ、俺も聞いていいか?」
おじさんが何やら興味深そうに尋ねてきた。手には昨夜造ったミニチュアサイズのお家を持って弄っている。
「なぁ、これってどこまで出来るんだ?」
「どこまでとは、どういう意味ですか?」
「お前の土魔法スキルの効果範囲だよ。これってどこまで可能なんだ?」
おじさんが急に聞いてきた。
土魔法のスキル効果範囲か………あまり意識したことはなかったけど、これって魔力さえあれば、
「基本的に何でも出来ますね」
土というか、地に関するものなら何でもイケると思う。使用者のイメージ力と熟練度が大切だけど、コネコネすればイケる。
おじさんにそう説明し、『良かったら宿屋の増築でも大丈夫ですよ』と言うと苦い顔をされた。
「お前、気付いてるのかは知らないが、これって城都を自由に造り変える事も、破壊する事も出来るんじゃないのか」
「……あ」
おじさんに言われて気付いた。
確かに、魔力次第ではこの魔王城都を自由自在に出来る。てか魔力はレベルが上がるごとに馬鹿みたい増えていってるので、可能かもしれない。
あれ、よくよく考えてみれば、私って単独で都市を落とせるんじゃないか? 無限のゾンビを生み出し、町や都市を守る城壁等を自由自在に破壊する。うん、ぶっちゃけ出来るね。
「頼むから自重してくれよな」
スキルの危険性に気付いたおじさんが苦笑いで忠告してくる。ミラさんやアリアさんも心配そうに私を見てた。
うん、大丈夫。私は別に国を滅ぼしたりするつもりはないし、目立つつもりもない。働かずにのんびりと暮らしていければ十分なのだ。
そう三人にはっきりと伝えると、変な目で見られた。
「おはようございますー」
変な空気の中、間延びした声が聞こえてきた。
どうやらクロエが出勤して来たようだ。
朝から元気に皆に挨拶をし、私に気付くと近くまでやって来ては腕を掴む。
「朝ごはんいいですかねー」
「よくねぇよ」
どうやらクロエは懲りてなかったようだ。
昨日ミラさんにあれだけ絞られたのをもう忘れたのか。
「酷いですー、私はー、もうリッカちゃんなしでは満足出来ない体になっちゃったんですよー、責任取ってくださいー」
「あの、その言い方は止めてくれませんか?」
他の人が聞いたらどうするんだ。誤解するかもしれないから止めてくれ。
……おじさんがお前が言うなとした目で此方を見てる。ごめんなさい。
「それにー、ミラ様からはー、許可をもらってますよー」
「……え、ミラさん?」
クロエの言葉に驚いて振り向くと、ミラさんが苦い顔をしながらも頷いていた。
「リッカちゃんを守る為ですよー、他の淫魔からはー、私が守りますー」
どうやらクロエの話しから、ハイサキュバスに手軽に進化出来る私の魔力は、他のサキュバス達からしたら喉から手が出る程に魅力的だということ。
元々、私の気配や魔力はいい匂いがするらしく、もしもそれで他の淫魔に襲われ進化の事が発覚しようものなら、他の淫魔やサキュバス達が総勢で拐いに来るそうだ。
そしてそれを防ぐ為に、ハイサキュバスであるクロエが私の魔力を対価に他の淫魔を牽制するそうだ。
「それにー、私以外のハイサキュバスが増え過ぎても困りますからねー、下克上不可避ですー」
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