98 リッチィさん、はよ寝かしてくれ
連投です。
アリアさんに断る理由を説明し、初めてお世話になった時の状態と今の状況を詳しく話した。すると、アリアさんの険しい視線がおじさんに向いた。
「だからこうなる前に、もっと早くリッカちゃんを誘っておいてって言ったでしょう! もう色んなところに取り込まれちゃってるじゃない!」
「あ、いや、俺も何度も誘おうと思ってたんだが、リッカのやつが全く捕まらなかったんだって……てか魔王様の直属の秘書官になるとか誰も思わねえだろ」
おじさんがアリアさんに凄く責められている。
よくは分からないが、どうやらアリアさんはかなり前から私を誘おうとしていたようだ。
「え、リッカさん? 魔王様の秘書官になったんですか!? それも魔王様からの直接の指名!?」
ミラさんも凄い勢いで話に食いついてきた。
私の肩をがっつりと掴み、ゆさゆさと揺らし尋ねてくるが……少し落ち着いてほしい。
「ミラさん、落ち着いてください。魔王様の秘書官と言っても、一応は臨時ですからね。正式にではありませんよ」
「それでもです!! 魔王様直属の秘書官はこれまで誰もいませんでしたからこれは大事件なんですよ!! 凄い羨ま――光栄なことなんです!!」
忘れてた。
ミラは狂信的なまでの魔王信奉者だった。
長々とそれがどれ程の偉業かと話すミラさんの口からは『私があらゆるどんな手を使ってもなれな――』…………恐ろしくてもう続きを聞きたくない。全部忘れさせてくれ。
「凄いですねー、魔王軍幹部ですかー、じゃあもしかしてー、キース様に会いましたかー」
隣で聞いていたクロエも問い掛けてくる。
そう言えば、クロエも悪魔種の淫魔族であるのだから、イケメンさんのことも知っているのか。キース様って呼んでるし、上司なのかな。
「あぁ、会いましたね。側近にしたいとか言って決闘になりました。一応は勝ちましたが………酷い戦いでした」
ソラの乱入による不意討ちだったけど、勝ちは勝ちである。イケメンさん丸裸にされてたけど。
「そうですかー、勝ちましたかー、それならいいですー」
そう言うとクロエは安心したと喜んでいる。
いいのだろうか、一応は同族のはずなんだろうけど……
「いいんですか? 上司か何かなのでは?」
「いいんですよー、むしろざまぁですねー、私のご飯に手を出すからですー」
「そうですか。てか誰がクロエのご飯なんですか」
「それにー、今は私の方が上ですしー、下克上ですよー」
そうだった。
クロエはサキュバスの最上位種、ハイサキュバスに進化したんだった。イケメンさんよりも格上の存在、魔王クラスの化け物に……ミラさんに瞬殺されてたけど。
「…………ミラ様はー、インポッシブルー、はいー、下克上不可能ですよー……」
クロエはもう思い出したくないのか、遠い目で天井を見詰めては黙り込んでしまった。
そして段々と夜が更ける中、おじさんはアリアさんにお説教をされており、私は延々とスイッチの入ったミラさんに魔王様の誇らしさを語られていた。クロエは暫くボーっと天井を見詰めていたが、ふらふらとお外に出ていった。
「お願いですから、もういい加減に眠りませんか?」
◇◇◇
「じゃあ、リッカちゃんはここを使ってね」
「はい、ありがとうございます」
アリアさんに案内され、二階の部屋の寝室に案内される。元々、泊まることは既に確定していたようなものなので、素直に今日はお世話になることにした。
「あれ、ここって……」
部屋に入って気付いた。
確かここは初日にお世話になった時の部屋だ。
「リッカちゃんの為にずっと空けてあるのよ。これからはいつでも泊まりに来てね!」
「え、でも……いいんですか?」
とても嬉しいのだが、なんだかとても申し訳なくなる。
「いいのよ。リッカちゃんはもう私達の家族みたいなもんなんだから。困ったことがあればいつでも帰ってきなさい」
「あ、アリアさん……」
ヤバい、泣きそうになる。
あまり優しくしないでほしい。この体は凄く涙脆いのだ。嬉し涙が零れそう……
「それとも一緒に寝る?」
「それはちょっと……」
本当に勘弁してください。
アリアさんみたいな美人さんと一緒に寝るとか、色々と眠れなくなりそうだ。途中までミラさんも一緒に寝たいとか言ってたけど……こっちは本当に眠れなくなる。魔王様のお話はもうお腹いっぱいです。
「じゃあ、お休みなさい」
「はい、アリアさんもお休みなさい」
そう言ってアリアさんはドアを閉めて出ていった。
「家族か……」
一人になり、アリアさんから言われた言葉に少ししんみりする。日本にいる家族は今どうしているだろうか。両親は放任主義者だったが、それでも愛情を持って育ててくれていたのは分かる。というか、やんちゃな兄弟が多過ぎて諦めていた覚えがある。家業の農家も忙しそうだったし。私は全く手伝った覚えはないが。
「今度聞いてみよう……」
地獄に行った時にでも閻魔大王様に相談してみるのもいいかもしれない。あっちで私がどうなってるのかは知らないが、無事だと手紙くらいなら出せるかもしれない。流石に今の姿を見せると笑われそうなので、決して会いたいなどとは思わないけど……まぁいいか。
「ふぁ……」
ふかふかのベッドに腰掛け考えていると、一気に眠気が押し寄せてきた。
「寝よう……」
明日も予定があるのだ。
気は乗らないけれど、一応は人間族の奴隷を手配しなければならない。
凄い罪悪感はあるが、悪いようにはしないようにするので許してほしい。
そう考えながら、私のゆっくりと眠りについたのだった。
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